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髑髏天使

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第二十三話 異形その十九


「だが」
「だが?」
「それだけではない」
 右手とそこに持つ剣だけを構えたうえでの言葉であった。
「それだけではな」
「その右手だけで俺を倒せるというのか」
「貴様の弱点はわかった」
 ここで髑髏天使は言った。
「最早貴様に敗れることはない」
「そうか。では見せてもらおう」
 魔物は前に出ながら彼のその言葉を受けて述べた。
「貴様がどの様にして俺を倒すのかをな」
「いいだろう。見せてやる」
 髑髏天使は構えたままだった。そのうえで言うのであった。
「俺の貴様の倒し方をな」
「行くぞ」
 魔物の動きが本格のものになった。今突き進んできた。
 その速さはこれまで以上だった。髑髏天使はそれを冷静に見ながら今。己の身体を緑に変えたのであった。
「主天使か」
「如何にも」
 その通りだと答えてみせるのだった。
「この姿になりだ」
「主天使のことはもうわかっている」
 魔物は相変わらず回転しつつ突進しながら述べてきた。
「土の力だな」
「その通りだ。ただ土だけではない」
 髑髏天使は右のその剣を構えながら魔物に告げていく。
「それにまつわるもの全てを使えるのだ」
「そしてその力を使い、か」
「貴様を倒す」
 一言であった。
「ここでな」
「面白い。それならば倒してみることだ」
 魔物の突進はそのまま続いていた。
「この俺をな」
「今からそうしてやろう」
 この言葉を出しながらであった。右手のその剣が変わった。刀身が今ダイアのそれに変わったのである。そうしてそのうえで。
 突き進んで来るその魔物を見極めていた。その魔物に対して今。
「そこだな」
 見極めた様な声と共に剣を突き出した。すると。
 回転する魔物の動きが止まった。まるで何かに押し止められたかの如くに。
 見れば額に髑髏天使の剣が刺さっていた。それにより動きが止められてしまったのである。ダイアの剣は見事なまでに深々と魔物に突き刺さっていた。
「うぐっ・・・・・・」
「チェックメイトと言うべきだな」
 髑髏天使はその動きを止めた魔物に対して告げてみせた。額からは血が出ていた。
「これで終わりだ」
「まさか。俺の動きを見切って」
「確かに回転していることにより見づらくはあった」
「それでもか」
「そうだ。俺は見切った」
 声がこれまで以上に鋭いものになっていた。
「その結果だ。これはな」
「やるとは思っていたがな。これ程までとはな」
「俺の勝利だな」
 髑髏天使は剣を抜いた。ダイアの剣はゆっくりと魔物から抜けていく。すると魔物の額からその赤黒い血が流れるのだった。
「貴様の急所が何処であれ脳をやられてはどうしようもあるまい」
「その通りだ」
 魔物もそれを認めた。顔には既に死相が浮かんでいる。
「貴様の勝ちだ。俺はこのまま消える」
 その言葉を言っているそばからだった。巨体が青白い炎に包まれていっていた。 
 そうしてその中で。魔物は髑髏天使を見据えながらさらに言うのであった。
「貴様はより強くなるだろう」
「より、だな」
「今は主天使だがさらに強くなる」
 こう彼に告げるのであった。
「より、な」
「褒め言葉と考えていいのか?それは」
「褒め言葉ではない。事実だ」
 それだというのである。
「今の俺の言葉はな」
「事実か」
「そしてどうなるかは貴様次第だ」
 そのうえでこんなことも言うのであった。 
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