髑髏天使
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十一話 人狼その七
「後はそういう豆乳を使ったお菓子ね」
「大豆からもお菓子が作られるのか」
「それができるのよ」
若奈はさらに言う。
「アイスクリームだってあるしケーキだって」
「ケーキもあるのか」
これは牧村にとっては予想外の話だった。話を聞いていてその意外だという表情を実際に若奈に対して見せてもいるのであった。
「豆乳のケーキか」
「お豆腐のケーキね」
同じものであった。豆乳も豆腐も同じ大豆から作られるものだからである。
「それがあるから」
「どういったものだ、それで」
牧村は話を聞いているうちに興味を覚えたのであった。
「そのケーキは」
「アイスクリームもあるけれど」
「そちらも面白そうだな」
両方に興味を抱いた牧村であった。
「今度作ってみるか」
「何言ってるのよ」
牧村の自分で作るという言葉はすぐに否定した若奈だった。
「自分で作るって。私が作るのよ」
「君がか」
「そうよ。私よ」
また答える若奈だった。
「私に作らせてよ」
「その豆腐のケーキをか」
「それにアイスクリームも」
やはりどちらもなのだった。
「作らせて。いいわね」
「わかった」
その申し出を素直に受ける牧村であった。その間も走り続けている。
「では楽しみにさせてもらう」
「お豆腐って凄く淡白だから」
若奈はこのことを強調して言ってきた。
「だから何にでも使えるのよ」
「あらゆることにか」
「それがお菓子にもってわけ」
「わからないな」
牧村はその話を聞いてもまだ実感が沸かないようだった。実際に首を傾げさせてそれが元に戻らなかった。どうしてもといった感じだった。
「それが」
「わかってもわからなくても食べてみたらわかるわ」
若奈の言葉はやや強気なものだった。
「食べてみればね」
「食べてみればか」
「人参のケーキだって美味しいじゃない」
その例えに出してきたのはこれだった。
「人参自体もお菓子にかなり使えるし」
「それはその通りだな」
牧村も人参については否定しなかった。傾げさせていた首も元に戻っていてそのうえでの言葉になっていた。それは確かであった。
「人参はな」
「大豆はその人参より癖がないのよ」
「癖がか」
「だからいいのよ」
これが若奈の主張だった。それは変わらないのだった。
「その大豆のお菓子もね」
「では食べてみるとするか」
ここでやっと牧村も言うのだった。
「その豆腐のケーキやアイスクリームをな」
「他にも作るかも知れないわよ」
若奈の言葉はさらににこにことしたものになっていた。
「期待していてね」
「期待させてもらう」
牧村は今度はこう返した。
「食べる機会にな」
「楽しみにね。さて、それでね」
ここまで話して話題を変えてきた若奈であった。
「牧村君、ランニングの後だけれど」
「筋力トレーニングだったな」
「そうよ。あと考えがあるんだけれど」
こうも述べてきた若奈だった。
ページ上へ戻る