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髑髏天使

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第二十一話 人狼その四


「あいつもここに来ているのか」
「そうなんだ。どうかな」
「面白いな」
 ロッカーはそれを聞いて今度は楽しそうな顔になった。
「あいつも一緒だとな」
「死神とも戦いたい?」
「いや、今は髑髏天使だ」
 だが彼はこれは変えないのだった。
「髑髏天使の相手をしたい。今はな」
「ならそうすればいい」
 青年も彼のその主張には何も言わなかった。
「では行くぞ」
「ああ、そうするか」
「日本に来て早々とは思わなかったな。いや」
 男はすぐに自分の言葉を変えるのだった。
「それも貴様らしいな」
「俺は何事も思い立ったらすぐに行動に移る」
 ロッカーも実際にこう返した。
「それはわかっていると思っていたがな」
「今思い出した」
 これが男の返事だった。
「今だ。何しろ長い間眠っていたからな」
「そうだな。ならば無理もないことだ」
 ロッカーもそう言われて納得するのだった。
「俺も色々と忘れてしまっているようだからな」
「少しずつ思い出していけばいいわ」
 女はこう言って彼に笑みを見せて述べた。
「少しずつね」
「そうさせてもらう。では手はじめにだ」
 足を進めだしたロッカーであった。青年もそれに続く。
「髑髏天使のことを思い出すとしよう」
「ではな」
 青年も共に行く。二人並んで空港を後にしていく。それを見送るのは他の魔神達であった。また一柱異形の神が日本に降り立ったのであった。
 牧村は今は川辺の道をランニングしていた。青い上下のジャージを着てそのうえで走っている。その横には自転車で走る若奈がいた。
「いいタイムよ」
 若奈は左手に持つタイムウォッチを見ながら牧村に述べた。
「前よりタイムが短いわ」
「速くなっているか」
「その通りよ」
 こう答える若奈であった。
「少しだけれどね」
「少しか」
「その少しよ」
 彼女はそれこそがというのであった。
「少しずつタイムが速くなっているから」
「全体として見ればか」
「一月前と比べたらね」
 彼女はさらに言う。
「相当短くなってるから」
「そうか。それならいい」
「ええ。やっぱりいつも走ってるせいかしら」
 若奈は尚も自転車に乗り彼の横を進みながら述べた。
「だからこんなに」
「走っているだけじゃない」
 牧村は走りながら述べてきた。その額には汗をかいている。その汗が彼の顔を輝かせてさえいた。
「他にも」
「筋力トレーニングもしているしね」
「だからだ。走るのも速くなる」
「そうなのよね。走るのも全身使うから」
 だから筋力トレーニングもタイムをあげるのに効果があるのである。とりわけ腹筋を鍛えると効果があるのだ。
「そうなるのよね」
「走れば走るだけ体力もつく」
 持久力ということである。
「いいことだ」
「後は瞬発力だけれど」
 持久力だけでは戦うことができない。その瞬発力も重要だ。若奈は牧村が戦っていることは知らないが瞬発力の重要性はわかっているのである。
 それで今言うのだった。
「それもあがってるわ」
「一月の間でもか」
「かなりね。もうテニス部とフェシング部に入る前と今じゃ」
「どうなっている?」
「もう別人みたいよ」
 そこまで変わっているというのである。 
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