真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第72話 廃城の賊
広宗へ向け進軍中、斥候から報告があり、ここより東に100里先の場所にある廃城に黄巾賊5万が駐留していると報告がありました。
私は主要なメンバーを招集して軍議を開くことにしました。
参加者は私、冥琳、奈緒、星、真希、水蓮、泉の6人です
「廃城に篭る賊を討伐する」
私は熟慮した後、その黄巾賊を襲撃することにしました。
「正宗様、お待ちください。廃城とはいえ、5万の軍が篭る城を攻撃するのは無謀過ぎます。斥候の話によれば、その廃城は後背を断崖に囲まれ、自然の要害に守られているというではないですか。そのような城を襲撃したら我々が不利になりますぞ」
冥琳は大慌てで私に進言しました。
「それは真正面から攻撃すればの話であろう。私が廃城の後背にそびえる断崖から潜り込み火計を施し、内側から門を破り、お前達を招き入れるので安心してくれ。このまま5万もの大軍を野放しにしていては周囲の住民への被害が甚大になる」
私は自分が考えていた策を冥琳に披露にしましたが、彼女は私の策に渋い表情をしました。
「正宗様・・・・・・。そのような無謀な策は認められません」
「冥琳殿、主ならば問題なくこの作戦を達成できると思いますぞ」
「はい、正宗様なら何とかなると思います。冥琳様は正宗様のことを過小評価されています」
星と水蓮は冥琳の言葉を否定しました。
「あの―――、正宗様が凄くお強いとは揚羽から聞いていますけど・・・・・・。流石に、無理ではないでしょうか?」
奈緒は私の表情を伺いながら申し訳なさそうに言いました。
「正宗様、私も危険だと思います!」
泉は奈緒の言葉に同調しました。
「いいんじゃないかな。大将が出来るって言ってるんだからさ」
真希はあっけらかんと言いました。
「私の意見に賛成の者と反対な者は半々か・・・・・・」
「当然です!城の中に篭っている敵兵は5万なんです。正宗様の武勇は揚州にていた頃に聞き及んでおりますが、流石に今回の策は無謀としか言いようがございません」
冥琳は必至になって私の策を否定してきました。
冀州入りしてから私は兵士の練兵を優先させ、前線には一度も出ず後方で指揮だけしていました。
そのため、冥琳は伝え聞く私の風聞しか知らず、私の力を目の当たりにしていません。
私の体は連続6時間であれば、硬気功によりあらゆる攻撃を防ぐことができますし、虎の子である振雷・零式があるので城の中で破壊活動を行うことなど児戯に等しいです。
相変わらず、手から気を放つことは未だに出来ていませんが・・・・・・。
旅から洛陽に戻って以来、多忙な毎日を送っていた私は修行の時間が取れませんでした。
この遠征では暇な時間がある程度取れるようになったので、これを機会に手から気を放つための修行に励んでいます。
「冥琳、私は冗談抜きに矢で射られようと、剣で斬られようと死なない。星、お前の龍牙で私を刺せ」
「主を私の龍牙で刺すのですか?刃こぼれするので兵卒が持っている槍でよろしいですか?」
星は自分の獲物である龍牙を手で撫でつつ難色を示しました。
「それでいいからさっさとしてくれ」
「主、そう急かされますな。おい、衛兵、兵卒の槍を持ってきてくれぬか?」
星は陣幕の外にいる衛兵に声を掛け槍を持ってこさせました。
「な、正宗様、何をなされようというのです!」
冥琳は狼狽して私に聞いてきました。
「何って・・・・・・、主を槍で刺すのです」
私に代わり星が応えました。
「星、お前何を言っているのか分かっているのか!」
冥琳は星の言葉に激昂しました。
「冥琳、黙って見ていてくれ。それでお前も納得すると思う」
「何を言われるのです・・・・・・。そのようなことをすれば怪我をするに決まっております」
「私が怪我すると承知して、星に槍で刺させると思っているのか。私はそこまで愚かではないぞ。言うより見た方が早いから言っている」
私が真剣な表情で冥琳の目を真っ直ぐに捉えて告げると、冥琳は何も言わず頷きました。
「では、主、準備は宜しいですかな?」
星は衛兵から槍を受け取り、私に尋ねてきました。
「やってくれ」
「それでは主、行きますぞ!」
星は槍を構え呼吸を整えるために瞑想をし呼吸を整え始め、瞳を見開くとともに槍を力一杯に一突きしてきました。
冥琳は目を瞑らず刮目し、その光景を見ていましたが、槍が私の体を突いた時点で驚愕の表情になりました。
星の放った槍の穂先は潰れて使い物にならなくなっています。
「な、どうゆうこです・・・・・・」
冥琳は私の元に駆け寄って来ると私の体を弄ってきました。
私の服は槍で突かれた所為で胸の辺りが破れています。
その部分を何度も何度も冥琳に触られ、その後、星の持つ槍を奪い取り、穂先を確認しました。
「ま、正宗様、ご説明願えませんか?」
冥琳は意味不明だと言わんばかりの表情で私を見ていました。
「私は気を使って体を鋼鉄以上の堅さにすることができる。だから、崖から飛び降りようと死なないし、矢・槍・剣だろうと私の体を傷つけることはできない。ただし、三刻という時間の制限はあるがな。しかし、三刻の間、私は無敵に等しい」
「なんと・・・・・・、正宗様は人外の如きお力をお持ちでいらっしゃるのか・・・・・・。正宗様ほどの気の使い手はこの大陸広しといえば二人とておりませんでしょう」
冥琳は驚嘆して、私の前に両膝をつき感服しているようでした。
「冥琳、私の策は無謀ではないことは分かってくれたか?」
私は冥琳に優しく微笑むと冥琳は眼光を強くし頷きました。
「正宗様の策に概ね賛成でございます。されど、我らは城を襲撃せず、火計によって城よりあぶり出された敵兵達を襲撃いたします。正宗様にご負担をお掛けするのは恐縮ではございますが、廃城を丸焼きにするつもりで火計を施しください。さすれば、賊達を討伐するなど獣を狩るが如くでございます」
冥琳は私の策に肉付けをした策を進言してきました。
「冥琳、お前の言う通り、好き勝手に暴れさせてもらう。私は冀州に入って以来、前線に出ていなかったので兵士達に申し訳なく思っていた」
「何を言われるのです。大将が後方にて控えるのは当然のことです。この策における正宗様の役目は大将のやることではありません。正宗様だからこそ可能なことなのです。個人的には、このようなこと正宗様に遣らせたくはございません」
冥琳は哀しい表情で言いました。
「冥琳には迷惑を掛けて済まないと思っている。しかし、民に危害を加える可能性のある者を放置はできない」
「わかっております。ですが、決してご無理を為さらぬ様にお願いします。もし、現地にて無理と思われたら、構わずにお戻りください」
冥琳は私に真剣な表情で言いました。
「わかった。無理は絶対にしない」
私も冥琳に真剣な表情で言いました。
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