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髑髏天使

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第二十話 人怪その二十五


「抜かったか」
「貴様は確かに厄介な相手だった」
 氷から元の身体に戻っていく魔物に告げた言葉だった。
「だが。決して倒せない相手なぞいない」
「決してか」
「そう。決してだ」
 彼は言うのだった。
「そのような存在はいない。絶対にな」
「言うだけはあるな」
 魔物は青白い炎に全身を包まれようとしながら彼に言葉を返した。
「それだけのことはな」
「少なくとも俺は今回も勝利を収めた」
 その炎に包まれる魔物を見据えての言葉だ。
「貴様に対してもな」
「それは認める」
 魔物もまた言うのであった。
「私に勝ったことをな」
「安心して死ね」
 魔物にかける最後の言葉だった。
「そのまま苦しまずな」
「ではこのまま旅立たせてもらおう」
 まだらミイラもまた青白い炎に全身を覆われ。最後の言葉を出してきた。
「さらばだ」
「ああ」
 髑髏天使が応えるとその瞬間に青白い炎に包まれ消えた。髑髏天使は今回もまた勝利を収め生き残ることができたのであった。
 生き残った彼のところに来たのはまずは死神だった。彼はこう声をかけてきた。
「どうやら生きているようだな」
「見ての通りだ」
 その死神の言葉にこう返す髑髏天使だった。
「今度も生き残ることができた」
「そうだな。貴様はまた生き残った」
「次はわからないが俺は今は生き残った」
 また言う髑髏天使だった。
「この闘いもな」
「私もだ」
 そして死神は今度はそれは自分も同じだというのだった。
「魔物の魂を一つ冥府に送り届けることができた」
「また一つか」
「一つ。一つずつ送り届けていく」
 死神はその外観はそのままだった。鎌も手にしたままである。
 だが髑髏天使は闘いが終わると次第に牧村の姿に戻ろうとした。しかしその戻ろうとしたところですぐに髑髏天使の姿を維持することにしたのである。
 それは何故か。彼は今正面を見据えていた。そしてそこにいる男もだ。
「安心しろ」
 紳士は二人に対して言ってきた。
「私は戦わない」
「戦わないというのだな」
「残念だが今の髑髏天使では私の相手にならない」
 そしてこう言うのであった。
「だからだ。安心しろ」
「そうか。では安心させてもらう」
 髑髏天使の方もそれを受けて頷くのだった。そうして頷いてからその姿を牧村のものに戻し紳士の顔を見やるのだった。構えも取ってはいない。
「魔物のその修正は忘れていた」
「魔物にも規律はある」
 紳士は言う。
「我々魔神が決めていることだがな」
「それが実力が釣り合う相手としか戦わない」
 具体的にはこのことだった。
「そういうことだな」
「そういうことだ。だからこそ今私は君とは闘わないのだ」
「私ともか」
 死神はここで話に入って来た。
「神である私ともか」
「神と神が戦うのもだ」
 何故かそのことに妙な嫌悪感を感じさせる言葉で返す紳士だった。
「好きではない」
「だから私とは闘わないのか」
「少なくとも今はそうだ」
 こう死神に対して答えるのだった。
「今はな」
「闘う気がないのならいい」
 死神も積極的に自分から動くことはしなかった。 
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