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髑髏天使

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第二十話 人怪その二十四


 それならばであった。魔物はすぐにそれに対してきたのであった。
「ならば」
「むっ」
「こうするのみだ」
 言いながら触手を振り回した。それにより水球達を次々に壊すのだった。
 壊れる水球はその度にジュウ、という何かを吸い取る音を出した。だが魔物はそれに構わずその水球達を壊していくのであった。
「壊しても水分を吸い取っていくぞ」
「触れているからだな」
 魔物は動じることなく髑髏天使に言葉を返した。
「だからだな」
「その通りだ。それは恐れてはいないのだな」
「些細なことだ」
 魔物は今水分を吸い取られることを些細なことと言って捨てた。
「このまま吸い取られ続けるよりはだ。蚊にそのまま血を吸い取らせる人間はいないと思うが」
「蚊についてはその通りだ」
 髑髏天使もその通りだと返す。
「そういうことか」
「そうだ。だからこそ今ここで全て壊していく」
 言いながらさらに水球を壊していく。
「全てな。貴様の策も無駄に終わったな」
「それはどうか」
 だが髑髏天使は今の魔物の言葉には疑問符で返してみせた。
「それはどうかな」
「これが無駄ではないというのか」
「見るのだ」
 彼はここでも魔物に告げる。
「次に俺が何をするのかを」
「何をするというのだ?」
「こうする」
 言いながら右手の剣を左から右に一閃させる。すると氷が魔物を覆いそのまま包み込んでいく。魔物はそれを見てまずは声をあげた。
「このまま私を凍らせるつもりか」
「その通りだ」
「無駄だな」
 魔物は氷に覆われながらも平然としていた。
「それはわかっていると思うがな」
「さて。それはどうか」
 しかし髑髏天使もまたこう返すのだった。
「それはな。どうかな」
「?どういうことだ」
 魔物は髑髏天使が虚栄を言うような男ではないとわかっていた。だから今の彼の平然とした言葉に対してすぐに聞き返したのであった。
「その余裕は。どういうことだ」
「貴様の水分は確かに減った」
 彼はここでこのことを告げた。
「確かにな」
「大したことはない」
 魔物はこう彼に返す。
「全くな。現に私は今こうしてここにいる」
「確かに減らした水分は大した量ではない」
 髑髏天使もそれはわかっているのだった。
「だが」
「だが?」
「その大した量もまた影響するのだ」
 言いながらさらに氷に覆われていく魔物を見据えていた。
「それがな」
「何が言いたい」
「こういうことだ」
 その言葉と共に魔物の全身が氷に覆われた。そして。
「何っ!?」
 ここで驚きの声をあげる魔物だった。
「氷が私を蝕んでいく」
「こういうことだ」
 髑髏天使の声が勝利を前にしたものになった。
「貴様のその護りは水分故だ」
 これは先程言ったことそのままだった。
「それが減れば。その護りもまた弱まる」
「だからこそあの水球だったのか」
「僅かでも減らせばそれで変わる」
 彼はまた言う。
「俺はそこを衝く。そういうことだ」
「くっ、そこまで読んでいたのか」
「貴様を凍らせ。そして」
 言いながら右腕の剣を上に大きく掲げる。今まさに投げんとするかのように。
「これで終わらせる。氷になることを防げなくなった貴様を貫いてな」
 言い終えると同時に剣を投げた。剣は一直線に飛び完全に氷となった魔物を貫いた。貫かれるのと同時に青白い炎が彼の身体から起こった。 
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