| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十話 人怪その十七


「しかしだ」
「しかし?」
「それをそのまま聞くとは限らない」
 だがこうも言うのだった。
「これだけは言っておく」
「面白いことを言うわね」
 シャールカはそれを聞いて動揺を見せることなく平然と返すだけだった。
「それはまた」
「面白いことを言ったつもりもない」
 死神はここでも態度を変えはしなかった。その手に持っている大鎌を構えただけだった。
「そしてこれ以上何かを話すつもりもない」
「そう。それじゃあ」
「行くぞ」
 その鎌を構えたまま流れるように前に出た。そうしてそのうえで魔物を斬りつけてきた。
 鎌を右斜め上から左斜め下に一閃させる。白銀の光が見えた。
 だがその白銀の光は何も斬らなかった。あえて言えば空を斬っただけであった。
「かわしたか」
「流石ね」
 シャールカの声がその鎌の後ろから聞こえてきた。今二人は礼拝堂の前で対峙していた。
「死神だけはあるわ。見事な鎌の動きね」
「だがかわしたな」
 死神はそれを言うのだった。
「私の鎌を」
「いい動きだけれどそれで私を斬ることはできないわ」
 自信に満ちた声だった。
「残念だけれどね」
「少なくとも今の鎌はかわしたか」
「そしてこれからの鎌もね」
 それもだというのだった。その自信に満ちた声で。
「私を斬ることはできないわよ」
「確かに今のではそうだ」
 死神は己の言葉をあえて限定してみせているようだった。
「だが。これならばどうだ」
「んっ!?」
 死神の身体が分かれた。一人が二人、二人が三人、三人が四人へと。右から左にそのまま影の様に増えていったのであった。
 気付けば五人になっていた。その五人それぞれの死神が。鎌を手に魔物を見据えていた。
「一人で無理ならば五人だ」
「そう、分身ね」
「知っていると思うがただの分身ではない」
 こうも言う死神だった。言いながらそのそれぞれから強い殺気を出していた。それはまるで氷の様な、冷たくそれでいて澄んだ殺気であった。
 その殺気を放ちながら五人の死神は。間合いをゆっくりと狭めてきた。そして。
 五人一度に斬りつける。しかし魔物はそれもかわしてしまった。今度は上に跳んだのであった。
「惜しかったわね」
「これもかわしたのか」
「分身での攻撃もまた」
「そうよ」
 白い天井に手をやりそれで止まっていた。そうしてそのうえで言うのだった。
「その通りよ。私の動きを甘く見ないことね」
「そのようだな」
 死神は魔物の言葉を聞きそれをそのまま受け入れた。
「分身も効かないか」
「少なくとも斬られはしないわ」
 シャールカは言いながら降り立ってきた。降りるその時に前方に数回転する。そうしてそのうえで着地して立ち上がってみせた。
「貴方の鎌がどれだけ凄かろうがね」
「私の鎌が通じない」
「そして」
 声がさらに笑ってきていた。
「今度は私の番よ」
「むうっ!?」
「さあ見なさい」
 その言葉と共にであった。魔物の周りから何かが出て来た。それは。 
 針葉樹の葉だった。その葉が無数に出て来たのだ。 
 それは瞬く間に魔物の周りを包んでしまった。その舞うものはすぐに死神の元にも届いた。そして。
「くっ」
「そういうものか」
「そうよ。この葉は私の剣」
 舞うその緑の刃の中で妖しく笑うのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧