とある星の力を使いし者
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第12話
麻生は橋の上から今までの戦いをずっと傍観していた。
正直、木山は美琴には勝てないと麻生は分かっていた。
なぜなら、木山はこの学園都市の全能力者の能力を手に入れた訳でもなく、そのネットワークにも超能力者は入っている訳でもない。
電撃使いにおいて最強の強さを持っている美琴相手に、幾ら能力を複数使って応戦しても勝てる筈がない。
麻生は結局無駄足だったな、と美琴を置いて帰ろうとした時だった。
「ああああああああああ!!!!!!!!!」
突然、木山の叫び声が聞こえてその足を止め再び橋の下を覗く。
そこには、木山の頭の中から頭に輪っかが浮いている胎児のような生物が現れる。
「はっ?」
突如、現れた未確認生物の出現に美琴は思わず声をあげた。
(胎児?
こんな能力・・・・聞いた事ないわよ。
肉体変化?・・・いやでも、これは・・・・)
胎児の出現に美琴は木山が何かしらの能力を使ったのかと、考えた。
しかし、胎児が出現する能力など聞いた事がなかった。
美琴が胎児について考えている間に、ゆっくりと胎児の眼が開かれる。
「キィィャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
目が開かれると同時に叫び声をあげる。
同時に周りの地面が抉られ、吹き飛んでいき美琴もその爆風に飲まれていくが、地面の砂鉄を使い盾を作り何とか防ぐ。
「何なのよ、アレ!!!」
その問いに誰も答えてくれる筈がなく、とりあえず電撃をその胎児に向けて放つとあっさりと電撃が直撃する。
(爆ぜた!?
血も出てないしやっぱり生物じゃない?)
すると、胎児の爆ぜた所が徐々に再生していき胎児の目が美琴を捉えると、美琴の足元の地面から土の柱が美琴に向かってくる。
美琴は後ろに向かって走り、何とか回避して応戦しようと振り返った時、胎児は美琴と逆の方向に向かって進んでいた。
「追ってこない?
闇雲に暴れているだけなの?」
その頃、木山の能力を受けた警備員の中でもまだ動ける人達が集まっていた。
何かしらの生物兵器なのか、それとも別の何かかを話し合っていた。
だが、悠長に事を構える余裕はない。
警備員はあの胎児に向けて発砲する事にした。
しかし、弾が貫通してもすぐに再生してさらにどんどん大きくなっていく。
男性の一人が背中に持っているグレネードランチャーような銃器で胎児に発砲する。
「よっしゃ、命中!!!」
「やったか?」
爆風で見えないが全弾命中したので倒したかのように思われたが。
「気をつけてください。
こういうパターンって大抵やられてない・・・・」
眼鏡をかけた女性の警備員言葉を続けようとしたが、その前の二人の警備員が突然吹き飛んだのだ。
警備員の発砲が癇に障ったのか、女性の警備員に近づいていく。
胎児はさらに大きくなり女性はそれに恐怖して発砲するが、全く効かず弾が切れてしまい胎児の身体から触手が一本、女の方に向かって伸びてくる。
「ア、アハハハハハ・・そっ・・・そっか立体映像よね・・・ぜんぶ幻・・・・」
胎児が女性に何かしようとした時、女性の後ろから誰かに引っ張られる。
女性のいた地面が数メートルくらいへこんでしまう。
女性が自分を助けてくれた人を見ると、そこには黒一色の服を着て髪が白髪の男性が立っていた。
もし、彼が引っ張ってくれなかったら女性は今頃ぺしゃんこになっていただろう。
「おい、あんたに聞きたい事がある。」
「えっ・・・何ですか?」
「今回の任務に黄泉川愛穂と言う女の警備員は居るか?」
「えっと、確か今回の任務に黄泉川さんは居ないはずです」
男性はそうかと心なしか安心したような表情を浮かべる。
「と言うよりあなた誰!?
民間人がこんな所で何しているの!?」
その言葉と同時に二人に向かって光の玉が飛んでくるが男性が掌をその光の玉に向ける。
何かにぶつかったのか爆発しても男性と女性を避けるように爆風が広がっていったので被害はなかった。
「今の内にどこかに逃げろ。
情報を教えてもらったから助けたが次はないぞ。」
「そうもいかないのよ。」
女性は近くにある建物を指さす。
「あの建物何かわかる?
原子力実験炉。」
その頃、美琴によって安全な所に寝かされていた木山は目を覚ますと遠くの方で暴れている胎児を見る。
「アハハハハハハ!!!
凄いな、まさかあんな化け物だったとは・・・・学会で発表すれば表彰ものだ。」
小さく息を吐くと後ろに差し込んでいた拳銃の銃口を自分の頭に向ける。
「もはや、ネットワークは私の手を離れあの子達を取り戻す事も恢復させる事もかなわなくなった・・・か。
おしまいだ。」
車の中で目を覚めた初春は状況を確かめようと、橋の上から降りるとそこに木山が銃口を自分の頭に向けている所を見る。
「ダメェェェェェェェ!!!!!!」
そのまま飛び込んで自殺を阻止するが、手錠の鎖が木山の首を絞めて死にそうになっていた。
木山に手錠を外してもらってあの胎児について聞く。
「虚数学区?
あれって都市伝説じゃなかったんですか?」
「巷に流れる噂と実体は全く違ったわけだがね。
虚数学区とはAIM拡散力場の集合体だったんだ、アレもおそらく原理は同じAIM拡散力場でできた「幻想猛獣」とでも呼んでおこうか。
「幻想御手」のネットワークによって束ねられた一万人のAIM拡散力場が触媒になって、産まれ学園都市のAIM拡散力場を取り込んで成長しようとしているのだろう。
そんなモノに自我があるとは考えにくいが、ネットワークの核であった私の感情に影響されて暴走しているのかもしれないな。」
「どうすればあれを止める事ができますか?」
初春がそれを聞くが木山はポケットから「幻想御手」のアンインストールする治療用プログラムを取り出す。
しかし、先ほどの美琴の電撃を受けて破損していた。
「やはり壊れているか。
こんな事になるのならあの時、君に渡した方が良かったな。」
「それは何のソフトですか?」
「これは「幻想御手」で昏睡状態を後遺症なく、元に戻すデータが入っているソフトだ。
だが、ご覧のとおり完全に壊れていて私のパソコンも警備員が手順を踏まずに、起動させたからデータは全て消えている。
あれを止めるには能力者を殺してAIM拡散力場そのものをなくすしか方法はないな。」
あの「幻想猛獣」は一万人の能力者で出来ている。
それらを殺す事など出来る訳がない。
学園都市も一万人の能力者を殺すなど、出来る訳がなく木山は「幻想猛獣」を止める方法はないと諦めた時だった。
「いいや、まだ手はある。」
木山が顔をあげると初春の後ろに麻生恭介が立っていた。
「話は全部聞かせてもらった。」
「何か考えがあるのか?
あれを止めるなど100%不可能だ。
それこそ一万人の能力者を殺すくらいのことしない限りは。」
麻生は木山の言葉を聞いて木山の視線までしゃがみ目をじっと見る。
「この世に0と100は存在しない。」
「なに?」
「あんたは100%止められないと言ったが、100%や0%ってことは絶対にできないということ。
この世に絶対はない。
もし絶対なんてことがあるとすればそれは人は必ず死ぬこれだけだ。」
そう言って麻生は立ち上がり「幻想猛獣」に向かって歩いていく。
「俺が証明してやる。
あんたが絶対にできないと言った事を俺が可能にしてやる。」
美琴は「幻想猛獣」の進行をどうにかして止めようとするが、何度電撃や砂鉄で攻撃してもすぐに再生してしまい全く意味がない。
さらに「幻想猛獣」は美琴の後ろにある、原子力実験炉に向かって進んでいる。
美琴は途中で出会った、眼鏡をかけた警備員にこの建物が原子力実験炉だという事は知っている。
(何でまた原子力施設に向かってくるのよ!!
怪獣映画かっつーの!!!)
すると、水の塊が空中に出現してそれが美琴に向かって放たれる。
それを後ろに飛んでかわすが着地した瞬間、足に「幻想猛獣」の触手に捕まってしまう。
「やばっ!!!」
視線の先には鋭い棘が生えている触手が美琴を襲おうとしている。
電撃で応戦しても再生するので全く意味がない。
(これってまずすぎる!!!!)
絶体絶命のピンチに「幻想猛獣」の後ろから何かが飛んでくるのが見える。
「死にたくなかったら動くな。」
その言葉と同時に雨の如く何かがいくつも飛んできて、美琴の足を掴んでいる触手に当たり何とか拘束が解かれる。
一旦下がり、飛んで来たものを見ると鉄で作られた矢が地面に何本も刺さっていた。
そして美琴を庇うかのように麻生が前に立つ。
その手には鉄で作られた弓が握られていた。
「あんたが助けてくれたの?」
「そうだ。
美琴、選手交代だ。
後は俺がやるから後ろで見ていろ。」
先ほど美琴を襲うとした棘のついている触手が麻生に向かってくるが麻生の手にはいつの間にか何本の矢が握られておりそれを連続で素早く放つ。
だがそれを受けてもすぐに再生して触手が麻生を襲うがそれを後ろに飛んでかわす。
「アレはAIM拡散力場の塊だ。
普通の生物の常識は通用しない。
体表にいくらダメージを与えても本質には影響しないんだ。
あれを倒すには自立させている核の様なものがあるはずだ、それを破壊すれば倒せるはずだ。」
木山も麻生についてきたのか「幻想猛獣」についてアドバイスする。
「ふ~ん、正攻法じゃあ駄目ってことか。
まぁあれは人間じゃないし少し本気でも出すか。
お前達もう少し下がってろ。」
「あんた一人に任せておけないわよ。」
「私も同じ意見だ。
あれを生み出した責任がある、私はどうなっても構わない。」
「そういう事じゃない。
俺が巻き込むかもしれないから下がってろって意味だ。」
麻生の後ろからまた触手が迫ってきて美琴は電撃で防ごうとしたが麻生が後ろに掌を向けると触手の動きが止まる。
「お前は人じゃないからな遠慮なく殺させてもらう。」
麻生の右手には刀が握られており、振り向くと同時に刀を抜刀し動きを止めている触手を一刀両断する。
美琴はすぐに再生するから無駄な攻撃だ、と思ったが何故かその触手は再生しなかった。
麻生を見ると先ほど持っていた刀ではなく、白い剣と黒い剣を両手で持っていてその両方を「幻想猛獣」に投げつける。
二本の剣は回転しながら飛んでいき「幻想猛獣」の身体を斬りながら飛んでいき、斬られた箇所も再生する事はなかった。
「どうなっている?
なぜ復元しないんだ?」
「私に聞いても何も分からないわよ。」
麻生は同じ白黒の剣を創り両手に握る。
すると飛んで行った白黒の剣が弧を描き再び麻生の方に戻ってくる。
麻生が持っている剣の名前は黒い方が陽剣・干将、白い方が陰剣・莫耶。
干将・莫耶。
古代中国・呉の刀匠干将と妻の莫耶、及び二人が作った互いに引き合う性質を持つ夫婦剣。
その特性を利用して飛んでいる干将・莫耶を自在に操っているだがこの剣に再生を封じる能力は備わっていない.
その正体は麻生の目だ。
麻生の目の色は黒色だがなぜかこの時だけ青い色に変わっていた。
この目の名前は直死の魔眼。
直死の魔眼。
意味や存在が、その始まりの時から内包している「いつか来る終わり」を視覚情報として捉えることが出来るという能力。
この「死」は生命活動の終焉ではなく「存在の寿命」であるため、殺せる対象は生命体に留まらない。
それにこの眼に見えるのは死の線と死の点であり線をなぞれば本体の生死関係なく行動、治療、再生不能になり点を突けば対象の死期を発現させ殺す事が出きる。
曰く、生きているのなら神様だって殺せる。
麻生は能力を利用して一時的に目を直死の魔眼に変換しているのだ。
直死の魔眼を使い「幻想猛獣」の身体を殺して再生を不可能にさせているのだ。
麻生は夫婦の剣を持ち「幻想猛獣」に向かって走り出す。
「幻想猛獣」は身体から何本の触手を出しそれを麻生に襲いかかせるがその触手の間を移動しながらかわしていきすれ違い様に死の線を確認してそれをなぞるように触手を斬る。
すると触手は麻生に襲いかかるのを止めてまわりを取り囲み触手の檻を作り逃げ場のない空間を作ると内側から一斉に棘が麻生を襲うが突然麻生を守るかのように風が吹き荒れその触手の檻ごとずたずたに切り裂いていく。
しかしいくら直死の魔眼を使って触手を殺してもその大きな身体から新しい触手が何本も出現してきりがない。
「面倒な身体だ。
ならこれならどうだ?」
麻生は「幻想猛獣」に向けて掌を向けると突然「幻想猛獣」が苦しいそうな声をあげる。
麻生は能力を使って「幻想猛獣」に干渉して触手の出現をキャンセルしているのだ。
麻生の干渉能力は人間相手なら触れなければ駄目だが、「幻想猛獣」は人間ではなくAIM拡散力場によって生み出された言わば現象や概念といった部類には入る。
干渉能力は人間以外なら触れる必要はない。
ただし神や天使といった存在には干渉することすら不可能。
すると麻生の頭の中で何か映像が入ってくる。
ある一人の男の野球選手がいた。
その男は野球のチームに入り日が昇る時から日が沈むまでひたむきに練習していた。
それが積み重なりやがて自身に繋がっていた。
だが学園都市ではスポーツに能力の使用が認められており、幾銭幾万の努力がたった一つの能力に打ち砕かれる現実。
だから、男は何が何でも強い能力が欲しかった。
ある女学生がいた。
ある日その女に突然話しかけてきた女がいて、どうやら後輩らしくさらに能力も同じだった。
その後輩は能力の扱い方を教えてもらいたくて話しかけたらしい。
女はその後輩に親身に扱い方を教えたのだが何日か経つとその後輩の姿を見かける事はなくなった。
気になったので後輩の教室まで行くと、すでに身体検査を抜かれてしまった。
学園都市は残酷だった、能力を数値化してどっちが優劣かハッキリさせてしまう。
だからもっと強い能力が欲しかった、後輩を見返すほどの能力が。
ある男がいた。
その男は落ちこぼれた無気力な学生を見るとよく話しかける。
男は超能力者になる為に授業こなし少しずつだが能力が上がっていったのだがある日、本物の超能力者の力を目の当たりにする。
そして自分の目の前にはそこに辿りつく事が出来ない、大きな壁がある事にようやく気付いた。
だから男は落ちこぼれの学生を見かけたら話しかける。
上を見上げず前を見据えず下を見て話す。
だが、憧れは捨てる事が出来ずどうしても超能力者のような能力が欲しかった。
他にも様々な映像が麻生の脳にリアルタイムで流れる。
これは「幻想御手」の使用者達の記憶だ。
普通の人がこの膨大な負の感情や記憶を見せられれば手を緩め、ひと時の夢だけでも見せてあげようと思うかもしれない。
だがこの男は違った。
「それがどうした。」
たった一言だけ言い放った。
「壊れた幻想」
麻生がそう告げると「幻想猛獣」のまわりを飛んでいた干将・莫耶が爆発する。
壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)。
魔力の詰まった宝具を爆弾として相手にぶつけ破裂させる技能。
土煙が晴れ、手に持っていた干将・莫耶の柄を合わせると二つの剣が繋がり弓に変形する。
「自身の能力を上げたいが為にこんなくだらない幻想に頼って、その幻想に飲まれ自身を苦しめてどうする。
自分の事だけを考えそれがどれだけ周りに迷惑がかかったか考えるんだな。」
麻生は左手を虚空に伸ばす。
「骨子、捻じれ狂う。」
その言葉と同時に螺旋を描く刀身を持つ剣が麻生の左手に握られる。
そして弓を構え直死の魔眼で「幻想猛獣」の死の点を探し狙いを定め魔力を込める。
「さて、良い夢は見れたか?
見れたのなら自分の脳に帰って少しでも能力が上がるよう努力するんだな。
前に進むのを止めてしまったらそこでお前達の物語は終わってしまうのだからな。」
その言葉を拒絶するかのように「幻想猛獣」が悲鳴を上げると空中に鋭い岩石が出現して麻生に向かって飛んでくるが風の刃がその岩石を切断する。
そして麻生はその剣の真名を開放する。
「偽・螺旋剣。」
偽・螺旋剣。
アルスター伝説に出てくる名剣カラドボルグ。
しかし、これはある男が独自に改良した物でありその威力は空間をも捻じ切る貫通力を誇る。
矢が放たれ「幻想猛獣」の死の点を貫き、その貫いた先には三角柱のような物体にぶつかりそれを捻じ切るように貫通してぼろぼろに砕けていった。
核を破壊されたのかそれとも死の点を貫かれたのか「幻想猛獣」は消滅していった。
一連の戦いを見て木山はつぶやく。
「あの少年は一体何者なんだ?」
その問いに美琴が答える。
「さぁね、自称通りすがりの一般人Aらしいわよ。」
その後、増援の警備員がぞくぞくやってきて、木山は抵抗することなく捕まる。
麻生は面倒な事を聞かれる前に立ち去ろうとするが、木山が麻生を呼び止める。
「君に聞きたい事が一つだけある。」
「何だ?」
「本来、あの核をアンイントールなしで破壊すれば、「幻想御手」の影響でネットワーク内に囚われた能力者達の意識を、恢復させる事はできない可能性が高かった筈だ。
しかし、周りの話を聞いた限り全員、無事に意識が戻ったと聞いている。」
「その事か。
あの「幻想猛獣」に干渉した時に、構成プログラムを読み取って治療用プログラムを作っていた。
核を撃ち抜いた矢にはそのプログラムを付加させていた。」
少し前の木山がこの説明を受けても信じる事ができなかった筈だろう。
だが、麻生恭介という底が知れない人物ならやれるだろうな、と納得してしまった。
「これで最後だ。
君に一つだけ、頼み事があるのだが聞いてくれるか?」
「内容によるな。」
「君の能力を使って私の生徒達を治療してくれないか?
もし出来るのなら報酬は何でも用意する。」
木山は麻生の凄まじい能力を目の当たりにしてもしかしたら生徒達を救う事が出来るのでは?と考えたのだ。
本来、自分が助けたいのだが此処までの事をしたのでいつ表舞台に戻れるか分からないからだ。
麻生はめんどくさそうな顔をしていつもの様にため息を吐く。
「病院は?」
「え・・・」
「その生徒達が入院している病院の事だ。
俺だとその患者のその後まで見てやれんから腕のいい医者に任せる事にする。」
「その医者は信頼できるのか?」
「一度俺も見て貰ったからな。
あの医者は患者を助ける為なら何でも用意する気前のいい医者だぜ。」
麻生がここまで言わせる人物なのなら信頼できると思った木山は病院の名前を教える。
それを聞いた麻生はさっさと立ち去ろうとする。
「君の言うとおりだ。」
麻生は振り返らず何がだ?と聞き返す。
「この世に絶対なんてない、まさにそれを思い知ったよ。」
木山の言葉を聞いて少しだけ笑みを浮かべるとそのまま立ち去ろうとするが今度は美琴が立ちはだかる。
「あんな力があるのなら前の戦いの時、あれくらいの力を使えば良かったじゃない。」
「あんな力を使えばお前を殺してしまうだろ。
俺はある女性と約束してな、どんな奴だろうと人は殺すなって言われているんだ。」
今回は人が相手じゃなかったからやり易かったよ、と言い麻生は携帯を取り出しある医者に連絡し木山に教えてもらった病院とその事情を説明する。
医者は二つ返事で了承した事を確認すると電話を切り美琴の横を通りすぎる。
「どこに行くつもり。」
「寮に帰って寝るんだよ。
白井とかには適当に言い訳でも考えて何とかしてくれ。」
私はあんたのパシリじゃないわよ!!と叫びながら電撃が飛んで来たが空間の壁を作りそれを防ぐと麻生は追いかけられると面倒なので珍しく走って寮に帰る。
しかし麻生の戦いはまだ終わっていなかった。
この夜、「幻想猛獣」よりも強い敵と戦う事になる。
後書き
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。
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