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髑髏天使

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第十八話 力天その十六


「そして中南米に中近東、それに東欧じゃ」
「あらたに出て来た三柱か」
「左様、あの三柱」
 やはり彼等のことであった。
「あの者達のいずれかが来るのは間違いないがのう」
「果たしてどの魔神が来るか」
「それは断定はできん」
 博士はここでは即決はできなかった。
「しかしじゃ」
「しかし?」
「何となくクマゾッツが来ると思うのう」
 考える顔になってこう牧村に述べたのであった。
「わしはな」
「あの子供か」
「中南米の魔物もまた実に独特じゃ」
 博士は彼の配下にある魔物達に対しても述べる。
「用心してかかるようにな」
「あのチョンチョンという魔物は」
「あれにも結構てこずったようじゃな」
「数がな。尋常じゃなかった」
 彼が言うのはその数のことだった。
「一つ斬ってもまた一つがやって来る。その相手が大変だった」
「そういう戦いかも知れんぞ」
「そうかもな。どちらにしろ俺がやることはだ」
「うむ。闘いそして勝つことじゃな」
「そうだ。俺は闘う」
 言葉が鋭く強いものになっていた。
「何処までもな」
「髑髏天使の闘いにしてもじゃ」
 博士の言葉はここでもまた発される。
「終わりについては今一つわからんところがあるしのう」
「終わりか」
 牧村もまたふと考える顔になった。
「そういえば髑髏天使は五十年に一度この世に現われ魔物を倒す」
「しかしその結末はわからんのう」
「何処まで闘う?」
 彼はまた言った。
「俺は。何処まで闘うのだ?」
「その時代の魔物が全ていなくなるまでじゃないの?」
 呼ぶ子がふと言ってきた。
「それってやっぱり」
「この時代のか」
「そうじゃないの?やっぱり」
「それだと」
「いや、違ったと思うよ」
 しかしここで垢舐めがこう言う。
「前の髑髏天使いたじゃない」
「ああ、あの人ね」
「そうそう、あの人。確か一年位闘ってそれで自然に消えたじゃない」
 こう話すのだった。
「確かさ。それで魔物が消えて髑髏天使じゃなくなってさ」
「一年か」
「前の髑髏天使はそうだったんだ」
 垢舐めは牧村に対しても話す。話すその間もその赤く長い舌をべろべろと動かしている。それが如何にも垢舐めらしい動きであった。
「五十年前のね」
「そうだったのか」
「僕達が覚えてる限りではね」
「確かそうだったよね」
「百年前の人もそうだったかな?」
「百年前の人は中国だったんじゃないの?」
 話は日本以外にも及ぶのだった。牧村は話を聞いていて眉を動かすのだった。
「アメリカだったっけ」
「アメリカの人はその五十年前の人だったんじゃないの?」
「そうだったかな」
 どうやら彼等の記憶はかなり入り混じっているようである。だがそれでも髑髏天使という存在は日本以外にも出るということがわかる話である。
「あの百年前の人も一年だったっけ」
「あれ、三年じゃなかったかな」
「それも天使のまま終わってたよね」
「だよね、どちらの人も」
「確かね」
 この辺りはどうも話が混乱している。やはり彼等も昔の話は記憶が混ざっている。どうにもこうにも話がわからなくなっているのだった。 
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