| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十七話 棺桶その二十三


 髑髏天使はすぐにその腹から剣を抜きそのまま上昇する。そのうえで空中で体勢を立て直し着地する。その後ろに魔物の巨体が落ち地響きを立てた。
「この通りだ」
「くっ、まさか私の腹を狙ったのか」
「確かに貴様の鎧は堅固だ」
 彼のその皮を鎧と表現していた。
「しかしだ。それでも弱点はある」
「それが腹だというのだな」
「どのような存在でも腹は弱いものだ」
 生あるものはどんなものでもということだった。
「それを突いただけだ」
「その通りだ。だが竜巻を使ってそれをやるとはな」
「風だ」
 また風のことを話に出す。
「風にはこうした使い方もある。もっとも今それで気付いたのだがな」
「だが。勝利を収めたのは事実だ」
「そうだ、俺は勝った」
 まだ立ち続けている魔物に目を向けていた。魔物は地面に叩き付けられたがそこからすぐに起き上がったのだ。それはまさに誇りから来るものであった。
「貴様に。竜巻を使ってな」
「見事だと言っておこう」
 魔物はその彼を認めるのだった。
「では。私はこれでな」
 次第にその巨体に青白い炎が生じてきていた。
「去らせてもらおう」
「では俺はそれを見届けよう」
 髑髏天使は彼から目を離さなかった。
「こうしてな」
「礼を言う」
 今度の魔物の言葉はこれだった。
「貴様のその心遣い。まさに戦士だ」
「俺は戦士ではない」 
 しかし髑髏天使は魔物の今の言葉は否定した。
「戦士ではな」
「では何だというのだ?」
「天使だ」
 魔物の問いに返した言葉はこれであった。
「俺は髑髏天使だ。他の何者でもない」
「そうか。そうだな」
 今の言葉を聞いた魔物の声が微笑んだ。
「髑髏天使だったな。確かに」
「その通りだ。俺は髑髏天使だ」
 彼はこのことをまた告げた。
「それ以外の何でもない」
「では髑髏天使よ」
 遂にその全身を青白い炎に包ませながら最後の言葉を述べてきた。
「さらばだ」
 最後にこう言い残し炎の中に消えた。こうして髑髏天使のここでの闘いは終わった。闘いが終わると彼は静かに死神に対して顔を向けた。
「貴様の方も終わったようだな」
「そうだ。私の方もな」
 彼もまた髑髏天使のその言葉に応えてきた。
「終わらせた」
「随分と手強そうな魔物だったが」
「何、大したことはなかった」 
 苦戦したという意識は確かに彼にはなかった。
「あの程度で私は倒せはしない」
「神だからか」
「そういうことだ。神の力ではな」
 その神の力も認めていた。
「どうということはない。それこそ魔神でもなければ私は倒せはしない」
「そうか。では気にしなくて正解だったな」
「私もまた貴様のことは気にしてはいなかった」 
 それは彼自身もというのだった。
「全くな」
「勝つと思っていたのか?」
「そんなことも考えていなかった」
「俺が敗れてもどうでもよかったのか」
「そうだ。どうでもいいことだった」
 実に素っ気無く返す死神だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧