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髑髏天使

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第十七話 棺桶その十七


「貴様の相手は私でいいか」
「相手は選ばない」
 牧村はその彼に対して冷徹に述べた。
「貴様等が来るならばな」
「そうか。それならばだ」
 彼等はこうして睨み合うことになった。そうして次にはマンティコアだった。彼は死神と向かい合いその三重に並んだ牙を見せていた。
「死神か」
「そうだと言えばどうするのだ?」
「喰らう」
 マンティコアの鮮血の色の目が殺意に満ちた光を放っていた。
「それが俺のやり方だ」
「神である私を喰らうというのか」
「相手は誰であれ骨一本残さず喰らう」
 彼の言葉は続く。
「それがこの俺だ。マンティコアだ」
「そうだったな。確かにな」
 死神はそれを聞いて思い出したようにして応えたのだった。
「貴様は人を喰らい何一つ残さず喰らう魔物だ」
「如何にも」
 そのことにはっきりと答えるのだった。
「それが神であってもな」
「そうか。ではこちらも容赦する必要はないのだな」
「少なくとも俺はその気はない」
 死神もまた怯むことなく言葉を返す。
「目の前にある刈るべき命は刈る。それだけだ」
「ではこれ以上の話は必要ないな」
「そうだな。それではだ」
「喰らう」
 魔物は言った。
「神をな」
「その命、永遠に眠らさせてやる」
 彼等もまた今にも闘おうとしていた。そうしてまずは牧村が動いた。両手を拳にしてそのうえで胸の前で打ち合わせる。その打ち合わせたそこから白い光を放ち。その姿を変えたのだった。
「行くぞ」
 右手をその胸の前に肘を折り曲げて出し握り締める。そうして言うのだった。
 死神もまた己の右手を拳にして胸の前に置いた。そこから青白い光を放ち今その姿を変えるのだった。白い服に鎌を持つその姿に。
「その命、今ここで刈らせてもらう」
「喰らってやる」
 まずはマンティコアが跳んだ。その蝙蝠の翼ではなく逞しい四肢を使ってだ。跳ぶとその鋭い牙で死神を喰らわんとかかってきた。
「さあ。これはどうするのだ?」
 マンティコアはその剥き出しの牙を見せつけながら彼に問う。
「この牙は。貴様といえどだ」
「ならば喰らいつくがいい」
 しかし死神は平然とこう返すのだった。
「貴様の思うようにな」
「死ぬ気か?」
 マンティコアは死神の今の言葉を聞いてまずはこう返した。
「それならば一思いにしてやるが」
 その言葉と共に喰らいついた。筈だった。だがそうはならなかった。
「むっ!?」
 喰らいついたのは空だった。そして彼は空しく着地するだけだった。その死神の身体を通り抜けて。着地してそこでわかったのだった。
「幻術か」
「その通りだ」
 その死神の姿が消えていく。そうしてマンティコアの上にその姿を見せるのだった。
「私が何もなしに貴様と闘うと思ったか?」
「そうだな。幻術もあったな」
 マンティコアはその死神を見上げながら応えた。
「貴様には」
「それも知っているな」
「無論だ。もっと言えば今思い出した」
 見上げるその目は変わっていない。やはり殺意に満ちたものである。 
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