髑髏天使
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十七話 棺桶その十三
「そちらにしよう」
「フェシングにするの」
「テニスは激しい動きをする」
そのことを第一に考慮に入れていた。
「今はな。それよりもフェシングで身体を慣らしたい」
「だからなのね」
「そうだ。それからテニスをしたい」
まずフェシングで身体を動かして慣れると共に腹の中のものを消化させてからそのうえでテニスで激しく動くということなのだ。
「それでいいか」
「いいわ。けれど今日は慎重ね」
「身体を動かすのはいい」
まずはそれはよしとした。
「しかしその時にだ。怪我をしては何にもならない」
「怪我?」
「身体が重いと激しい動きをすればそれだけで怪我をする恐れがある」
彼はまた言った。
「そうなれば何もならない。だからまずはフェシングだ」
「わかったわ。じゃあそっちに行きましょう」
「実は食べたからな」
若奈にこのことを話すのだった。
「今はテニスを後回しにしたい」
「そうそう、食べた後で極端に激しい運動って駄目なのよね」
彼女も当然ながらそのことを知っているのだった。そしてそのうえで牧村が下した判断に対して賛成の言葉を述べるのである。
「昔野球選手で試合前にお弁当食べて」
「身体の動きが鈍ったな」
「そうなの。それで足を取られて怪我したのよ」
これは実際にあったことである。だからスポーツ選手は試合前には過度な食事は摂らないのだ。身体が鈍くなるだけで済まないからだ。
「そういうことがあるから」
「そうだ。だから今はだ」
「テニスよりは身体を動かさないで済むフェシングね」
「そのつもりだ。じゃあ行くか」
「ええ。それにしても最近の牧村君て」
若奈はここで彼をあらためて見て述べた。
「一段と身体が締まってきたわね」
「トレーニングの成果か」
「そうね。もう脂肪とか殆どないんじゃないの?」
「そうかも知れないな」
実際に今は極めて整った身体になっている。まさにスポーツ選手そのものの。
「少なくとも動きはさらによくなった」
「アクションクラブにも入れそうな位ね」
「悪くないな。それも」
実はそうしたことも嫌いではなかったりする。
「大学を卒業したらな。就職にな」
「考えてみてもいいと思うわ。かなり大変らしいけれどね」
「そうだな。さて、では」
「行きましょう」
話を途中で打ち切ってそのうえでフェシングに向かう。今は彼は真剣にトレーニングに励んでいた。そうしてその次の日。朝のランニングを終え学校に向かおうとサイドカーに乗る彼の前にまた死神が出て来たのであった。
「また貴様か」
「伝えておくことがある」
彼はハーレーの上から牧村に対して告げてきた。
「何かはわかるな」
「闘いか」
「その通りだ。また出て来た」
彼の言葉はこれであった。
「魔神がな」
「これで六人か」
「行くか?その魔神がいる場所に」
鋭い目でまた牧村に言ってくる。
「今から。どうするのだ?」
「魔神と聞いて行かないわけにはいかない」
そして牧村の返答も決まっていた。
「それならばな」
「そう言うと思っていたならば来い」
「貴様も闘うつもりか」
「今回はな。刈らせてもらう」
また声が鋭いものになる。
ページ上へ戻る