髑髏天使
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十七話 棺桶その五
「全てのう。それなりのものがなければ閃くことがないものじゃからな」
「だといいがな」
それを聞いてもそれでもにこりとしない牧村だった。
「それならな」
「そういうことじゃよ。まあ何にしろ勝ってよかった」
そのことは素直に喜ぶ博士だった。
「五人目の魔神の送り込んだ魔物にものう」
「しかし。バジリスクか」
牧村はその五人目の魔神のことをここでまた考えた。
「闘う時はかなり苦戦しそうだな」
「まあそれはかなり先じゃろうがな」
「俺がさらに強くなってからか」
「少なくとも今の能天使よりさらにじゃ」
今ではないというのは博士も語るのだった。
「どうやら封印された時は髑髏天使は熾天使じゃったようじゃな」
「熾天使か」
「そうじゃ。天使の最高位じゃ」
これはもうわかっていることだった。天使は九つの階級があり熾天使はその最上位にある。即ち最強の天使であるのだ。髑髏天使にとっても。
「その熾天使の髑髏天使がじゃ」
「文献にあったことか」
「うむ。この前手に入れたスミソニアンから取り寄せた文献にのう」
アメリカのスミソニアン博物館から特別に取り寄せたというのだ。どうやらこの博士は異様な人脈まで持っているようである。それも海外にまで。
「あったのじゃ。今のところわかっておるたった一人の熾天使までなった髑髏天使にじゃ」
「そうなってからか」
「魔神達と闘うのはな」
「そもそもなれるかどうかすらわからないな」
牧村は壁にもたれかかったまま腕を組んだ姿勢になっていた。
「そこまではな」
「まあ能天使なぞ熾天使と比べればちっぽけなものじゃ」
「ちっぽけか」
「現にどうじゃ?権天使と能天使」
三つ目の階級と四つ目の階級を出して話す博士だった。
「その力の差はかなりじゃろ」
「そうだな。強さが極端にあがった」
実感できることであるのだった。
「自分でも驚く程にな」
「三つ目と四つ目でそうじゃ。最早天使とは別物になっておる」
「では熾天使ともなると」
「神に匹敵する」
こうまで言うのだった。
「最早な」
「だからこそ魔神達を封印できたのか」
「そのようじゃな。じゃからまだまだ先じゃよ」
あらためて彼に対して告げた。
「バジリスクとの闘いものう」
「わかった。ではそれは置いておいてだ」
「うむ」
「まずは今後のことだな」
目の前にあることを考えるというのだった。
「これからだが」
「トレーニングは積んでおるようじゃな」
「それは欠かさない」
はっきりと言い切ってみせた牧村だった。
「それこそ毎日な」
「よいことじゃ。やはり鍛錬せねばならんからのう」
牧村の返事を聞いて目を綻ばさせていた。笑うと好々爺の顔にも見えなくはない。いささか髭が化け物めいたものではあるがだ。
「闘う為にはな」
「おかげで動きがまたよくなった」
「よいことじゃ。それで食べるものはどうじゃ?」
「そちらは特に変えてはいない」
こう言葉を返すのだった。
「特にな」
「ではやはり甘いものは好きか」
「ああ。別に食べてもいいな?」
博士に目を向けて問うてきた。甘いものが太るということを知っていて脂肪が身体の動きに影響するということも把握しての問いである。
「それは」
「そこまで動いているのなら問題はないじゃろうな」
博士は少し考えてから述べた。
ページ上へ戻る