髑髏天使
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第十六話 青年その七
「貴様はどうなる?」
「私か」
「そうだ。死神である貴様がだ」
こう彼に言うのだった。彼の目を見据えながら。
「貴様の方が強い筈だがな」
「確かに私の方が力は強い」
その彼、死神もそのことは認めた。力関係で言えばやはり神である彼と牧村とではかなりの差があった。これは両者共わかっていることだった。
「しかしだ」
「しかし。何だ?」
「それは今においてだ」
死神は今度はこう言うのだった。
「私の力は神のものだ。だが」
「だが?」
「貴様はその域に近付こうとしている」
死神はまた彼に告げた。
「貴様はな。神にな」
「近付こうとしているのか。俺が」
「その通りだ。少なくとも私はそう思う時がある」
「思うだけか」
「そうだ。思うだけだ」
ここでも言葉は鋭い。しかしそれは決して間違ったものではない。そうした響きを持つ言葉であった。今の死神の言葉は。
「私だけがな。そして魔物は髑髏天使の前に現われる」
「五十年に一度現われ魔物を倒す俺の前に」
「その力を手に入れる為にな」
これが両者の関係なのだった。髑髏天使は魔物を倒し魔物はその髑髏天使の力を得ようとしている。両者は互いに狙い合う関係なのだった。
「その中で貴様は急激に強くなってきている」
「らしいな」
「強さには際限がない」
死神が次に出した言葉はこれであった。
「次々に上にあがっていくものだ」
「上にか」
「そうだ。強くなっていく」
また言う死神だった。
「貴様はな」
「そうして天使の階級をあげていくか」
「だが。それで終わるか」
「天使は九つの階級で終わりではないのか?」
「さてな」
今の牧村の問いには彼も答えることができなかった。
「それはな。どうかな」
「知っているのではないのか?」
「私とて髑髏天使の全てを知っているわけではない」
死神はこう断ってきたのだった。
「全てをな。知っているわけではないのだ」
「九つの階級だけでか」
「それがわからないのだ」
また言う死神だった。
「神である私にもだ。それはわからない」
「あの博士も髑髏天使については文献が頼りだがな」
「髑髏天使はあまりにも謎が多い」
このこともまた話されるのだった。
「髑髏天使はだ。私ですら知らない程にな」
「そこまで謎の存在だったのか」
牧村は己自身のことをまた知ることになった。謎に満ちているということをだ。
「俺は」
「そういうことだ。その強さが魔物を呼ぶ」
彼はまた牧村に告げた。
「それはよく覚えておけ。いいな」
「わかった。それでだ」
死神の言葉を聞いてからまた話す牧村だった。
「貴様は今これからどうする?」
「私か」
「そうだ。貴様はだ」
「それはもう決まっている」
答えるまでもないといった調子の死神だった。
「既にな」
「そうか。魔物の魂を刈るか」
「その通りだ。私の獲物は譲らない」
鋭い目になって彼に告げてきた。
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