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髑髏天使

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第十四話 能天その十


「何度もな。そして」
「身体を鍛えるのね。じゃあ私は身体を鍛えて」
「そうするといい。それではな」
「ええ。じゃあ行くわ」
 丁度ここでその豆乳と野菜ジュースを飲み終え冷蔵庫に戻したのだった。
「お兄ちゃんも怪我しないようにね」
「ああ」
 丁度ここでステージをクリアした。牧村はセーブするとそのうえで席を立った、そうしてテニスに向かうのだった。妹との話を思い出しながら。
 次の日も彼はテニスをしていた。だが場所は違う。大学のテニスコートにおいて一人でマシーンから打ち出されるボールを相手に左右に身体を動かしていた。黒いジャージの姿でラケットを右手に持って練習を行っていた。
 額からは汗をかきそれが顔全体に広がってこようとしている。もう結構身体を動かしているのがわかる。それでもまだマシーンから打ち出されるそのボールを打ち返している。フットワークはかなりのものだ。そのうえ手の動きもいい。そこには確かな練習の後があった。
「いい動きだな」 
その彼に声をかける者が出て来た。
「闘いの時と同じだな」
「貴様か」
 牧村は最後のボールを打ち返したうえで動きを止め声に応えた。声はテニスコートの周りの木々から聞こえてくるかのようだった。
「また学校に来たのか」
「別に場所は選んではいない」
 この言葉と共にコートの入り口から彼が出て来た。彼は牧村の前にあるマシーンの横に来てそのうえでまた彼に対して言ってきたのだった。
「貴様の前に姿を現わしているだけだ」
「俺のか」
「テニスのことは知っている」
 死神は牧村とコートのネットを挟んで向かい合った。
「人間のやるスポーツの一つだな」
「そうだ」
「人間は面白いことをする生き物だ」
 彼はコートを見回しながらまた牧村に言ってきた。
「こうしたことを楽しむのだからな」
「必然でしていることだが好きだ」
 牧村はこう死神に言葉を返した。
「テニスもフェシングもな」
「そうか」
「身体は鍛えるものだ」
 こうも言うのだった。
「身体をな」
「人間の不思議な部分の一つだ」
 人間ではない存在の言葉に他ならなかった。
「身体を動かし、鍛えて楽しむことはな」
「貴様はしないのか」
「私は神だ」
 この言葉こそが返答だった。
「神は。鍛える必要はない」
「そういうものか」
「そうだ。鍛えずとも進化し強くなるものだ」
「進化!?」
 牧村は今の死神の言葉に眉を動かした。
「神が進化するのか」
「何かおかしいか?」
「そんなことは聞いたことがないが」
「それは貴様が知らないだけだ」
 しかし死神はその眉を動かした彼に対してこう告げるのだった。
「それはな」
「神も進化するというのか」
「神は不変の存在ではない」
 彼は言うのだった。
「神話を見るのだ。時代によってその地位や役割も変わる」
「神話か」
「貴様も知らぬわけではあるまい」
 嘲りの言葉ではなかった。彼の中のものを起き上がらせるような。そうした言葉だった。
「このことは」
「我が国の神話か」
「日本の神話はわかりにくい」
 牧村は日本人らしく日本神話を話に出そうとしたが死神はそれには乗らなかった。 
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