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髑髏天使

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第十三話 衝突その十一


「髑髏天使としてな」
「では今からまた絶ち切って来る」
 その髑髏天使としての言葉だった。
「それじゃあな」
「やれやれ、いつも忙しいことじゃ」
 博士は壁から背を放した彼に笑いながら述べた。
「まあそれも仕方ないのう。髑髏天使じゃからな」
「先約はもう入っている」
 そのうわんとのことであった。
「死神から強引に奪え返したそれがな」
「ではそれを果たしてくるのじゃな」
「そうだ。それではまたな」
「うむ」
 牧村の言葉に温厚な顔で頷いて返した。
「吉報を待っておるぞ」
「その時にまたあいつと会うかも知れない」
 牧村は扉に向かいながらふと呟いた。
「若しかしたらな」
「死神とか」
「俺は魔物を呼び寄せる」
 まずは髑髏天使としての己を語った。
「そしてあいつは魔物のいる場所に現われる」
「死神はその命を送る相手の場所に現われるものじゃ」
 博士は牧村の言葉に応えて死神の行動の法則について述べた。
「だからじゃよ。それもな」
「俺とは逆だな」
「完全にな。しかし魔物と縁があるのは同じじゃよ」
「それは、か」
「そうじゃ。まあそれは特に気にせずにじゃ」
 今は考えるなと述べたのだった。
「行くのじゃな。行って本当に返って来るのじゃ」
「わかった」
「お菓子用意してるからね」
「果物もあるよ」
 ここでまた妖怪達が陽気に彼に声をかけてきた。
「お酒は飲めなくてもジュースがあるからね」
「今度は紅茶ですよね」
 ろく子もまた彼に言ってきた。
「それもありますので」
「楽しみにしておく」
 彼はその妖怪達に対してまた返した。ろく子にも。
「それをな。それではだ」
「うん、頑張ってね」
「またね」
 妖怪達の声は温かかった。牧村はその温もりに送られて研究室を出た。そうして建物の外に出てそのうえで今サイドカーに乗った。場所は何処でもよかった。ただ己の気の向くままに向かった。そうしてやって来たのは。街の外れにある寂れきった廃寺であった。
 本堂は朽ち果て今にも崩れ落ちそうだ。木は腐り白蟻の食べた後が見える。墓場も墓石があちこち倒れ卒塔婆も朽ちて折れているものすらある。鐘はなくそこも荒廃している。あちこちに雑草が生えており見るも無残と言える有様だった。彼は今そこに入りサイドカーを止めたのだった。
 廃寺はその無残な姿を夕暮れの中に映し出している。彼は墓地の中に進んでいく。すると向こう側に何時の間にか相手が姿を現わしていた。
「面白い場所を選んだのだな」
「気が向いたままだ」
 牧村はこう彼に言葉を返した。
「そのままここに来た」
「気の向くままか」
「そうだ。それでここにした」
 淡々と相手に告げるのだった。
「ただそれだけだ」
「随分単純に選んだだな」
「悪いか?」
「いや、構わん」
 うわんもまたそれをよしとしたのだった。
「むしろこちらとしては実に有り難い」
「有り難い?」
「俺はうわんだ」
 今度は己から名乗ってきた。
「うわんの本来の住処はこうした廃寺だ」
「ではここは貴様の家か」
「それは違うがな。気に入った場所ではあるがな」
 それでもそうではないというのだった。
「それはな。違う」
「そうか。だがここは気に入っているのだな」
「如何にも」
 そのまま牧村の言葉に答えた。 
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