髑髏天使
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第十二話 大鎌その七
「ないものはのう」
「どういうこと?それって」
「意味わからないんだけれど」
「中南米の文献はないのじゃよ」
今度はこう言った。
「殆どのう」8
「ないんだ」
「何で?」
「全部壊されて燃やされてしまったからじゃよ」
博士は歴史の話に移った。その話に移りながら寂しい顔になっていく。
「スペインにのう。侵略して何もかもを壊して焼いたのじゃよ」
「それで残ってないんだね」
「あそこには」
「その通りじゃ。それでもあれこれやって集めてはおるがな」
それでもであった。この辺りは学者特有の貪欲さであった。
「しかし。集まりは悪いのう」
「ふうん、そうなんだ」
「じゃあそっちは期待できないかな」
「いやいや、これがまた違っておるのじゃよ」
それでもという感じでまた周りにいる妖怪達に話した。
「その僅かな文献からまた一つ面白いことがわかったぞ」
「面白いこと!?」
その言葉に反応したのは牧村だった。
「何だ、それは」
「魔神のことじゃ」
今度の話はこれであった。
「魔神のな。聞きたいか?」
「是非共な」
牧村の返答は決まっていた。魔神といえば彼の究極の敵である。敵のことを聞きたくない、知りたくない者なぞいはしない。それに命がかかっているのなら余計にであった。
「聞かせてくれ。それでどういった魔神だ?」
「いや、魔神は中南米にもおった」
博士の言葉は牧村が今求めているような確実なものではなかった。
「それだけじゃがな」
「それだけか」
「一人じゃな」
数はわかっているようである。
「おるようじゃな」
「中南米にも魔神がか」
「その名前もわかっておる」
これはわかっているようである。
「カマソッツという」
「カマソッツだと!?」
「とりあえず名前はわかった」
あらためてこのことを牧村に告げた。
「しかし。どういった魔神かはまだわからん」
「そうか」
「それはこれから調べさせてもらう」
「ではそちらも頼む」
「そのカマソッツも近いうちに現われるかも知れんのう」
博士は考える顔で述べた。
「今は魔神達の封印の効果が切れる時のようじゃから」
「そのせいでか」
「うむ。その時は用心することじゃ」
博士の言葉にも表情にも警告するものが宿った。その警告が誰に対してのものかは今ここにいる者は誰であれ瞬時に察した。
「くれぐれもな」
「魔神はこれで四人か」
「あと八人じゃな」
魔神の数についても話される。
「おるのは」
「その八人も必ず来るな」
「髑髏天使は魔物を呼ぶ」
これまで何度となく言われてきた言葉である。実際に彼はこれまで何人もの魔物を倒してきている。それと共に強くもなっているのであるが。
「それは魔物達の神であってもな」
「そうだな。それではだ」
牧村はここまで話すと席を立った。
「今日はこれでな」
「行くのか」
「これから講義に行かなくてはいけない」
だからだというのである。
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