髑髏天使
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第九話 氷神その十六
「そしてだ。それだけの相手の力を備えることができる」
「俺を倒してだな」
「如何にも。これ以上の喜びはない」
マニトー達の表情はそのままだったが声は笑っていた。
「髑髏天使よ。これで死んでもらうぞ」
その無数のマニトーから同じく無数の脚が放たれてきた。その数は如何に髑髏天使といえどかわせないように思われた。だが彼は今いるその場から動くことなく。何と右手に持つ剣を足元に突き刺したのであった。
「むっ!?」
「確かに今の貴様の数は多い」
髑髏天使はその剣を刺しながら言った。
「しかしだ。それだけだ」
「何っ!?」
「それだけだと言った」
また答えるのであった。
「数が多くとも貴様自身は変わらん」
「何が言いたい」
「何が言いたい、か」
攻撃を繰り出しながらもいぶかしげに問うマニトーに対して言葉を返す。
「俺が何を言いたいかか」
「そうだ。貴様は最早」
「ならば見せよう」
彼はまた言った。
「俺が言う言葉は」
「むうっ!?」
「これだ!」
言葉と共に全身に力を込め何かを放った。それは紅蓮の炎であった。炎は剣を通してそのまま周囲に飛び辺りを燃やし尽くしたのであった。
炎は当然ながらマニトー達にもかかる。忽ちのうちに殆どのマニトーの姿が消え残る一体のマニトーもまた。その紅蓮の炎に包まれたのであった。
「グオオオオオオオ・・・・・・」
「貴様は炎に弱い」
炎を放ち終えた髑髏天使はコンクリートに突き刺した剣をそのままに立ち上がって言うのだった。
「それは変わりはしない。そうだな」
「まさか。この様にして使うとは」
「周りにいれば攻撃をその周りに向ける」
髑髏天使は周りで燃え盛る炎にその顔も身体も紅にさせながら述べた。マニトーは彼の正面にいてそこで炎にその全身を包ませていた。
「それだけだ」
「成程、そういうことか」
「これでわかったな」
「確かにな」
髑髏天使の言葉に対して納得したように呻いたマニトーであった。
「こう来るとは思わなかった」
「これもまた闘い方だ」
髑髏天使は立ち上がったままのその姿勢で述べた。
「相手の意表を衝くのがな。貴様と同じだ」
「見事だ」
また称賛の声を彼に送るマニトーだった。
「やはり貴様は髑髏天使だけはある」
「そうか」
「俺の負けだ」
今度は己の敗北を素直に認めてきた。
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