髑髏天使
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第九話 氷神その十四
「それはわかっていた」
「何っ!?」
「翼は何の為にあるか」
マニトーはその空に上がった髑髏天使に対して告げる。
「それは飛ぶ為だ」
「ではどうするつもりだ?」
空を舞いそこからマニトーに急降下を仕掛けながら問う。
「この俺の攻撃を。どのようにして」
「こうする」
その言葉と共にまた姿を消してしまった。一瞬で。
「また消えただと!?」
「そうだ。しかしだ」
何処からかマニトーの声がした。しかし姿は見えない。髑髏天使は急降下を止め一旦空に再び舞い上がったのだった。この辺りの判断の速さは見事だった。
「ただ消えたわけではないぞ」
「何っ!?」
「こういうことだ」
その言葉と共に上からマニトーが現われた。何と彼の方が急降下を仕掛けて来たのだった。
「上からだと!?この俺の」
「俺は空は飛べない」
マニトーもそれは認める。
「しかしだ。こういうことはできる」
「上に現われそこから攻撃を浴びせることがか」
「そうだ」
こういうことであった。
「この様にしてな。これで終わりだ」
「くっ、させるものか」
髑髏天使は咄嗟のこの奇襲に驚いたがすぐに冷静さを取り戻した。
すぐに後ろに下がろうとする。それでまずは数本の足の攻撃はかわした。だが最後の一本は。そのまま上から下に彼の胸をえぐったのであった。
「がはっ!」
思わず声を出してしまった。まるで丸太で撃たれたかのような衝撃であった。
その衝撃に何とか耐えつつ態勢を立て直す。地に落ちかねかったところで必死で宙に留まり。そのうえで下に降りたマニトーを見下ろすのだった。
「急降下攻撃か」
「それができるのは空を飛べる者だけではないということだ」
降り立ったマニトーはその顔を見上げて彼に述べた。
「こうして。瞬間移動を使うことによってもできるのだ」
「確かにな」
忌々しげな声だがそれを認める髑髏天使だった。
「そうしたやり方もあるな」
「流石だな。すぐにわかったか」
「この胸の傷が教えている」
胸の鎧が激しくへこんでいた。その下では打たれた傷が痛む。そのことを言っているのだ。
「だからだ」
「そうか。ならばだ」
「また来るというのだな」
「さて、どうするか」
その問いには答えないマニトーだった。
「それは俺の思うままだ。あくまでな」
「手のうちは見せないというわけか」
「そういうことだ」
「わかった」
髑髏天使は彼のその言葉に頷くと行動に出た。着地したのである。翼はそのままだが折り畳みそのうえで二本の剣を構えるのだった。
「それではだ」
「もう空からは来ないというのか」
「考えが変わった」
また答える髑髏天使だった。
「少しな」
「そうか。貴様も手のうちを見せないというのだな」
「貴様に倣うことにした」
こう言葉を返したのだった。
「今はな」
「そうか。それならばだ」
また少しずつ動きだしたマニトーだった。八本の脚で素早く左右に動きだしたのだった。
「行くぞ」
「今度は大地からか」
「さてな」
やはり答えない。しかしそれと共に姿を消したのだった。
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