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髑髏天使

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第二話 天使その四


「そういうことじゃ。逃げることはできん」
「じゃあ博士」
「ここはさ」
「何じゃ、今度は」
「彼に僕達のこと紹介したら?」
「そうそう」
 影達は今度は博士に提案してきた。牧村に自分達のことを紹介することを。
「彼がショックを受けているのは突然天使になったからだけれど」
「それでもね。それは少しずつ消えていくだろうし」
「その時だよ」
 彼等はタイミングも見ていた。
「僕達のことを紹介して」
「今わかっているだけでも天使のことを説明してね」
 こう博士に話す。
「こうしたら彼もショックから起き上がることができるよ」
「僕達の中にもいいのと悪いのがいるって」
「それに彼女のことも説明してね」
 何故か彼女という言葉が出て来た。
「それでどうかな」
「これでまあ大丈夫じゃない?」
「そうじゃな」
 博士は彼等の話を聞いてまずは深い思索に入っていた。それから身を起こしてゆっくりと口を開いたのであった。顔には思索がまだ残っている。
「確かにのう。一人であれこれ悩んでもかえってよくない」
「下手したら自殺とかあるしね」
「まあ自殺するような人間でもないがのう」
 牧村のこうしたところは把握していた。だからこのことに関しては安心はしていた。しかしそれでも思索に入らざるを得なかったのは事実である。
「じゃが安心させることは必要じゃ」
「じゃあそれでいいね」
「彼をここに招こう」
「そうじゃな。どのみちここに来るじゃろうがな」
 これは彼がこの大学に出入りしていることからわかることだった。彼は八条大学の教授であるということも考慮に入れていたのだ。
「まあ招いて悪くはないな」
「そういうこと」
「何だ、博士もわかってるじゃない」
「わかっていないことは言わぬ」
 博士は言う。
「それがわしじゃ。だからじゃ」
「慎重だね、相変わらず」
「じゃあこれについてはそういうことで」
「うむ」
 このことに関してはこれで終わった。だがそれでも話は続けられるのであった。
「博士、このことは終わったし」
「ねえ、お酒飲もうよ」
「酒か」
「日本酒でいいのが入ったんだ」
「おつまみに塩辛と枝豆もあるよ」
「お豆腐もね」
「ほう、いいのう」
 博士は酒と肴を聞いて顔を明るくさせた。どうやら酒好きらしい。
「では早速。やるとするか」
「ほらっ、これ」
「このお酒だよ」
「おお、これは男盛り」
 酒の名前を見て顔をさらに綻ばせる。
「これはよいな」
「そう思って持って来たんだよ」
「高かったんだよ」
「ちゃんと買ったんじゃな」
 博士は影達を見て意外そうに述べた。
「御主達がのう」
「当たり前だよ、ルールはちゃんと守らないとね」
「そうそう」
 答える影達の声が笑ったものになっている。
「人間に化けて行ったよ」
「だから安心していいから」
「ちゃんと化けられたんじゃろうな」
 問いながらもう塩辛の瓶を開けている。桃色の烏賊の塩辛である。
「そこが不安なんじゃが」
「まあ何も言われなかったよ」
「目は結構怪しそうなのを見る感じだったけれど」
 つまりは駄目だったのである。しかしそんなことは別に気にしてはいないようだ。
「それはどうでもいいし」
「買えたしね、ちゃんと」
「怪しまれては駄目であろうに」
 今度は豆腐に醤油をかけている博士であった。 
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