髑髏天使
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第六十話 最終その十
「俺にはだ」
「俺自身であるからこそ」
「そういうことだ。だからこそだ」
「俺は勝てないというのだな」
「何が最強の敵か」
影はそのことも言うのだった。
「それは己自身だ」
「全てが同じだからこそ」
「己に勝つことはできない」
それは無理だとだ。述べる影だった。
「何しろ戦闘力は同じでだ」
「戦うスタイルもだな」
「頭脳も同じだ」
つまりだ。何もかも、全てが同じだというのだ。
「その俺に勝てるのか」
「確かに全て同じだ」
そのことは髑髏天使も確かに認めた。
「だが、だ」
「それでも貴様は勝つというのか」
「何度も言うが勝ち、そして生きる」
この考えは変わらなかった。変えないと言ってもいい。
「だからこそ。俺は貴様を、俺自身をだ」
「倒すか」
「そうする。行くぞ」
「来るか」
髑髏天使は再び剣を振るった。だがそれは全て受けられる。
そして影の攻撃も同じだった。髑髏天使は彼の攻撃を防ぐ。まさに互角の攻防だ。
それは死神も魔神達も行っていた。その中でだ。
目玉がだ。死神に言うのだった。
「本当に何もかも同じだね」
「そうだな。私には貴様がいるが」
「僕は向こうにもいるよ」
そのだ。彼等の目の前にいる影にもだというのだ。
「あちらにもね」
「そうだな。いるな」
「それで同じ様に話してるから」
「厄介だな」
「どうするの、それで」
「考えても無駄か」
死神はここでこんなことを言った。
「この場合はだ」
「考えても無駄?」
「そう、無駄だ」
まさにだ。そうだというのだ。
「ここはだ」
「考えても無駄って」
「これまでは考え、頭を使って勝ってきた」
これについてはだ。髑髏天使と同じだった。彼もまた戦いにおいてはその技よりもその技を何処でどう使うか、つまり頭脳で勝ってきたのだ。
それを考えてだ。彼は今目玉に話すのだった。
「それを変えるか」
「変えるって」
「考えて勝つだけではない」
「それだけじゃない?」
「考えを捨てる」
また目玉に言った。
「そうするべきだな。今は」
「考えを捨てて闘うの?」
「そうする」
鎌の構えを解いた。そうしたのだ。
そうしてただ右手にその鎌を持ったままだ。己の影を見る。
影は鎌を構えている。その彼に言うのだった。
「ではだ」
「死ぬつもりではないな」
「残念だがそれはない」
死神は己の影に返した。
「今こうしたのは生きる為だ」
「その為に構えを解いたか」
「生きる、即ち貴様を倒す」
また影に告げる。
「そうさせてもらおう」
「しかし貴様は構えを解いた」
「その通りだ」
「それでどうして闘うというのだ」
影はこう己に問うた。
「勝てないのではないのか。そもそも闘うことさえも」
「そう考えるのなら考えるといい」
影にはだ。そうしろというのだ。
「私は今は考えない。そうさせてもらう」
「それで私を倒すのか」
「来い」
死神は己自身に言っていく。構えを取らないまま。
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