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髑髏天使

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第五十九話 精神その三


「何かがある世界なのです」
「あの連中も無は望んでいないか」
「彼等は混沌を望みます。混沌の存在です」
「無の存在ではないからこそか」
「だからそれは望みません」
「成程な」
 そこまで聞いてだった。髑髏天使は頷いた。
 そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「では。個々に戦えるか」
「そうなるのう」
 バーバヤーガも話す。
「敵は個々に倒せじゃ」
「戦い方としては正しいな」
「そうじゃな。しかしじゃ」
「しかしか」
「そうじゃ。しかしじゃ」
 バーバヤーガはさらにだった。髑髏天使に対して言うのだった。
「わかると思うがじゃ」
「同時に戦えば一つの世界が崩壊するだけの力がある」
「それはわかっておくことじゃ」
「それがこれからの相手か」
「先のナイアーラトホテップよりもまだ強大なのじゃ」
 バーバヤーガはこのことを話すのであう。
「よいな、そのことは」
「言われずともだ」
「頭の中には入れておるか」
「入れている」
 既にだという口調での返答だった。
「よくな」
「ならよい。ではじゃ」
「行くか」
「うむ、行こう」
 こう話しながらだ。彼等はさらに中に入りだ。
 遂にだ。無限の暗闇が渦となって蠢く中でだ。その気配を察したのだった。
「いるな」
「そうだな」
 髑髏天使と死神が同時に言った。だがだ。
 周囲には何もいない。そう、何もだった。
「だが姿はないか」
「ということはだ」
「我はここにいる」
 周囲そのものからの言葉だった。
「このヨグソトホートはだ」
「今度はこの空間そのものがか」
「神だというのか」
「それが我の実体だ」
 まさにだ。その空間こそがだというのだ。 
 神だとだ。その神の声が言うのである。
「それがわかったな」
「話はわかった」
 こう返したのは死神だった。
「それでは。我々は今度はこの空間を倒すか」
「そうなるね」
 目玉も言うのだった。
「ここはね。確かにね」
「そうなるな」
「空間ねえ」
 目玉が考える声で述べた。
「空間と戦うことはね」
「それはなかったか」
「それが実体の相手とはなかったよね」
「言われてみればそうか」
 死神は同じ口で告げる目玉に対して述べた。
「これまでなかったことだな」
「そうだね。一体どうして戦うのかな」
「興味深くはある」
 死神は言った。 
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