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髑髏天使

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第五十六話 使長その六


「そういうものじゃよ」
「そうだな。遊ぶことはそのままな」
「生きることじゃ」
 これがだ。博士の哲学だった。
「では。遊ぶ為にじゃ」
「生きろというんだな」
「人間は遊ぶものじゃ」
「遊びは。大事か」
「大事じゃぞ。極論すればじゃ」
 博士はさらにだ。こうも話した。
「仕事やそうしたものもじゃ」
「遊びに入るのか」
「そうなる。だから全ては遊びじゃ」
「戦いはどうだ」
 牧村は彼が行うべきだ。その戦いはどうかとだ。問うたのだった。
「あれはどうなのか」
「戦いか」
「そうだ、あれはどうなのだ」
 博士に対して問う。強い言葉で。
「戦いもそうなるのか」
「そうじゃな。戦いもな」
「なるのか」
「やはり極論じゃがなる」
 その通りだというのだった。戦いもまただというのだ。
「しかし戦いに溺れるとじゃ」
「そうだな。魔物になる」
 智天使のことを思い出してだ。そのうえでの言葉だった。
「危ういところじゃったな」
「そうだったな。あの時はな」
「戦いに溺れず、捉われずか」
「これは遊び全体に言える」
 戦いだけではないというのである。
「溺れては駄目なのじゃ」
「そうそう、楽しむんだよ」
「溺れたらそれで終わりだからね」
「捉われてもね」
 妖怪達もだ。そのアイスクリームとブランデーを入れたメロンを食べながらだ。話すのだった。その二つを組み合わせたメロンの味は見事だった。
「どうしようもなくなるんだよね」
「魔物もそうだしね」
「そういうことを忘れずにじゃ」
 それでだと話す博士だった。
「よいな。天使長になってもじゃ」
「戦うか」
「そうするのじゃ」
 こう牧村に話をする博士と妖怪達だった。その話をしてメロンを食べてだ。牧村は研究室を後にした。そうして大学の講義に出た。
 教室に入り友人達がいる場所に座るとだ。彼等はすぐにこう言ってきた。
「博士のところにいたのかよ」
「あのデビル博士のところにか」
「わかるのか」
「口元にアイス付いてるぜ」
 友人の一人が笑いながらこのことを指摘した。
「そこでアイス貰ったよな」
「それでわかるのか」
「だったな。あの博士誰かが来たら絶対に甘いもの出すからな」
 それは牧村に対してだけではないのだ。博士は誰かにだけ好意を向ける人間ではない。博愛主義的な面も備えているのである。
「だからわかるんだよ」
「アイス食ってたのかよ」
「いいな、それってな」
「その通りだ」
 静かに述べる牧村だった。
「俺はアイスを食べていた」
「やっぱりな。そうだったんだな」
「アイス食ってたのか」
「美味かったか?それで」
「アイスクリームだけではなかった」
 正直にだ。牧村は何を食べたのかありのままに話した。 
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