髑髏天使
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第五十六話 使長その四
「如何にも飲みそうじゃからな」
「しかし違うか」
「見た目は往々にして裏切られるものじゃ」
博士はこうした風にも述べた。
「それは君もあったじゃろう」
「そうだな。戦いでもな」
髑髏天使としてのだ。その戦いでもだというのだ。
「そうしたことが何度もあった」
「そうじゃろう。真の姿を出す敵も多いな」
「あの男もだな」
その黒い男だ。彼のことも話すのだった。
「あの黒い男もだな」
「ナイアーラトホテップじゃな」
「あの男は一見すると人だが」
「真の姿は全く違う」
それを言う博士だった。
「とはいってもどういった姿はというとじゃ」
「わからないか」
「わからん。だが腹心がおると言っておったな」
「そちらはわかるか」
「イホウンデーじゃな」
ここでこの名前が出た。
「おそらくそれじゃ」
「それがあの男の腹心か」
「腹心というよりは妻か」
「妻か」
「もう一人のその神かも知れん」
博士の話は少しばかりあやふやなものになってきた。
「しかしどちらにしてもじゃ」
「あの男と関係が深い神か」
「腹心というのもあながち嘘ではない」
そのことは否定されなかった。
「その辺りはどうにもよくわからん」
「それがその神か」
「イホウンデーじゃ」
「そうなのか」
「だが。その力はじゃ」
力はどうなのかと。博士はその目を真剣なものにさせて述べた。
「かなりのものじゃ」
「絶大な力があるか」
「ナイアーラトホテップは混沌の神々の中でも中心の一柱じゃ」
「そのもう一柱ともなると」
「相当な力がある」
それは間違いないというのである。
「だから用心してくれるようにな」
「そうだな。そしてその神との戦いで」
「君の力じゃな」
「天使長か」
その天使のことにだ。話は戻ったのだった。
牧村は考える目になってだ。博士に尋ねるのだった。
「その力はどれだけのものだ」
「これまでの九つの天使の階級のそれを全て合わせたよりもじゃ」
「強いか」
「比べものにならん」
そこまでだというのである。
「それこそ。力だけならじゃ」
「神にも等しいのだったな」
「そうじゃ。そうした力じゃよ」
「その力を使えば」
「君は残りの混沌の神々に勝てるやも知れん」
そうなる可能性についての言及が為された。
「そして生き残れるやもな」
「そうか。神を倒す神の力か」
「それを手に入れ」
さらにだと。博士は話す。
「使いこなすかじゃ」
「使いこなすか」
「手に入れるだけでは駄目じゃ」
それで終わりではないというのである。
「手に入れた力はじゃ」
「そのうえで使いこなす」
「そうしなければ駄目じゃ」
「そうだな。これまでの力と同じだな」
「難しく考える必要はない」
博士はだ。それはいいというのだった。
「難しく考えるとかえって駄目じゃ」
「これまでと同じだな」
「そう考えばよい」
「天使長の力も」
「それも同じじゃ」
また言う博士だった。
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