髑髏天使
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第五十五話 魔水その八
「多いのじゃ」
「困ったことだね」
「何ていうかね」
「弁護士とかジャーナリストとかってね」
「変な人間多いね」
「知識人全体がそうじゃ」
博士が言うのはより範囲の広いものだった。
「戦後の我が国はな」
「教師もそうだな」
牧村はここで彼等の話を出した。
「厄介なことにな」
「教師の世界は最低じゃ」
博士は忌々しげに言った。
「ジャーナリストの世界もな」
「どちらもだな」
「悪事をしてもじゃ」
それをしてもだというのだ。
「全く平気な人間が多い」
「頭おかしなのが多くない?学校の先生ってさ」
「異常に暴力振るったりするしね」
「セクハラも多いし」
「そうした人間が人教えるんだね」
「怖いね」
確かに恐ろしいことだ。しかしそれが事実なのだ。
「そうした人間ばかりいるって」
「学校の先生がそんなのだと」
「子供達が可哀想だよ」
「そうだよね」
「戦争が終わって一番駄目になった世界じゃ」
博士は嘆息して言った。
「マルクスだのそんなのでじゃ。一気に腐ってしまってそこから元に戻っておらん」
「戦争が終わってすぐか」
「すぐにそうなってしまった」
その通りだというのだ。
「一気に腐ってそのままじゃ」
「六十年以上もそのままか」
「だから吉本隆明が戦後最大の思想家と持て囃された」
この男の名前が再び出た。
「オウムが。麻原が偉大な思想家か」
「それは絶対に違うな」
牧村はそれは断言だった。
「何があろうともな」
「そうじゃ。あれは紛いものじゃ」
麻原という男はそれだと。博士は忌々しげに言い切った。
「最も浄土に近いとかも言っておったが」
「地獄だよ」
「あの男絶対に地獄に落ちるよ」
「それは言えるな」
ここで言ったのは鬼達だった。地獄と縁のある彼等だ。
「ああした人間が地獄に落ちなかったことはないから」
「それで浄土って」
「頭おかしいから」
「最初から何を書いておるかわからん文章じゃった」
博士の吉本隆明への評価である。
「そして行き着いた先がオウムじゃ」
「それではだな」
「そうじゃ。最初からたかが知れておる」
また話す博士だった。
「そうした男が戦後最大の思想家だったのじゃ」
「そんなのじゃね」
「知識人が駄目なのも当然だね」
「何か。おかしいね」
「それはわかるね」
「性犯罪者や暴力常習者が大手を振って歩ける」
異常な社会だ。少なくとも一般社会ではない。
「それが教師やジャーナリストの世界なのじゃ」
「腐敗を極めているな」
「その通りじゃ。わしはあの連中は大嫌いじゃ」
その知識人達がだというのだ。
「学会とも距離を置いておる」
「そこからもか」
「嫌いだからじゃ」
理由はそこに他ならなかった。
「全く以てな」
「そういえばある週刊誌の人間は」
牧村はとあるタレントのスキャンダルをスクープする写真週刊誌のことを思い出した。過去に何十回も問題を起こしている雑誌だ。他人のプライベートを暴くことを報道の自由と勘違いしているのである。
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