髑髏天使
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第五十四話 邪炎その二十一
「九つの階級のな」
「階級まで。そこにあったのか」
「わし等は古の髑髏天使に封印された」
「それは知っていたが」
「そして今封印は解放されたのじゃ」
また話すのだった。
「この時代にじゃ」
「そして俺達と戦った」
「そうじゃ」
「それと共にか」
「混沌がここで復活するとは思わなかったがのう」
「予想外でしたね」
それも話したのは老人だった。
「この事態は」
「私もだ」
それはだ。死神も同じだったのだ。
彼等は鋭い目になって話すのだった。
「名前を何処かで聞いた程度の認識でしかなかったしな」
「そうですね。我々もです」
小男もそうだと話す。
「この時代でも動けるかどうか。疑っていた位です」
「しかしな。もう四元素の三つまで倒したからな」
ロッカーは今の戦況を話す。彼等のそれをだ。
「後は。とことんかもな」
「最後の最後までか」
牧村の目が鋭くなった。
「ここまで来ればか」
「それは覚悟しておくんだな」
「戦いは覚悟なくしてできはしない」
牧村は話した。
「そうだな」
「それが答えか」
「そう取ってもらう為の言葉だ」
静かにこう述べるのであった。
「今のはな」
「そうか。その辺りは相変わらずだな」
「相変わらずか」
「いつもの貴様だ」
そのだ。牧村だというのだ。
「貴様らしくて何よりだ」
「自覚はないがな」
「人も魔物もだ。妖怪も同じだ」
「同じだというのか」
「案外。自分のことは自覚できないのだ」
こう話すのだった。牧村に対して。そして自分に対してもだ。
「そういうものだ」
「それは同意する。ではだ」
「帰るのだな」
「いえ、今日は違います」
また老人が話す。ここでだ。
「この場でアイスを食べることにします」
「そうか。そうするのか」
「貴方達もですね」
老人はその手のアイスを食べながら牧村と死神に問うた。
「そうされますね」
「そうだな。今はな」
「ここで食べよう」
牧村と死神が話す。そうしてであった。
二人もそのアイスを注文してだ。そのうえで食べる。そうするのだった。
そして食べるその場にはだ。魔神達もいた。彼等を見てだった。
そのうえでだ。こう話すのであった。
「貴様等と同じか」
「同席していいかしら」
「それでどうだ」
女と男が牧村の言葉に応える。
「私達は構わないけれど」
「戦いは終わったのだしな」
「そうだな。一緒に食べるか」
牧村もだ。こう言うのだった。
「共にな。食べるか」
「アイスをだな」
死神もだ。彼も去ろうとしない。右手にアイスを持ってだ。そうしてそのうえでだ。魔神達にを見ながら彼等に対して話すのだった。
「同席か」
「あんたはどうなのじゃ?」
老婆がその死神に問うた。
「やがてまた敵となる相手とじゃ。共に食べるか」
「構わない」
彼もだ。迷いなくこう答えたのだった。
「それではだ」
「いいのじゃな」
「そうだ、それでいい」
また語るのだった。
「少なくとも今は敵ではない」
「敵ではじゃな」
「だからだ。それはいい」
こう話す。そしてだった。
全員でだ。一つになった。そのうえでだ。
それぞれ食べる。そうしたのである。
そしてそのうえでだ。牧村はその場でだ。魔神達に言うのだった。
「こうして食べるのもだ」
「美味しくないとか?」
「いや、美味い」
こうだ。子供に対して述べたのだった。
「実にだ。美味い」
「そう、美味しいんだね」
「美味い。敵同士だが。共に食べてもな」
その顔はいつもと同じ無表情だ。しかし緊張の色はなかった。
緊張のないままにだ。彼は静かに話したのだった。
「美味いものだな」
「美味いか」
「そうだ、美味い」
また言うのであった。
「実にな」
「そうか。それではだな」
今度言ったのは大男だった。彼もまたアイスを食べている。大柄でいかつい外見にはアイスは一見不似合いだ。しかしそれでいてだった。
妙に絵になっていた。その彼が話すのだった。
「今は共にな」
「食べるか、こうして」
「それもまた、だ」
こう話してだった。彼等は共にアイスを楽しむのだった。
今はそうしてだ。戦いを離れてだ。共にいるのだった。
第五十四話 完
2011・3・2
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