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髑髏天使

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第五十一話 解放その二


「そしてそのうえでだ」
「その跡は貴様とその伴侶だな」
「奴等と戦うな」
「四柱が倒されたなら私の番だ」
 だからだと話す男だった。
「だからその時はだ」
「では楽しむといい」
「その時が来ればな」
「戦うとすれば随分久し振りのことになるな」
 男は妙な笑みを浮かべた。酷薄な、それでいて楽しむ笑みであった。
「どれだけだっただろうか」
「さてな。我も前に戦ったのはだ」
「どれだけだったか忘れた」
「あれは。何時だったか」
 男は彼等の言葉を聞きながら思い出そうとしていた。それは人の頭脳では考えるだけで気が狂ってしまいそうな極彩色の世界の中での記憶であった。
「あの神々だったか」
「そうだったな」
「あの神々との戦い」
「古い昔だな」
「その時だった」
 こう話していくのだった。
「その時にだった」
「我等が最後に戦ったのは」
「そして」
 話がさらに続く。
「それから長い間眠っていたがな」
「気付いたらこの時代だったな」
「人間の時代か」
 ここで二つの混沌がこう言った。
「鉄の時代だったか」
「ふむ。あの頃は黄金の時代だったか」
「いや、ティターンという神々の時代だった」
「その時だったか」
 こうお互いに話をするのだった。
「ふむ。その頃だったか」
「そして今に至る」
「あの頃も懐かしいがな」
「今はこうしてだな」
「そうだ、その髑髏天使と死神だ」
 男がまた二つの混沌に告げた。
「若し私が戦うようになればだ」
「うむ、その時にこそ我等の封印もまた」
「解かれるな」
「その通りだ。そうなる」
 こう彼等に話してだった。男は遂に動こうとしていた。
 その頃牧村は。若奈と共にいた。大学のある広い教室にいた。そうしてそこで講義前の準備をしていた。
 何十段にもなった教室である。教室の一番下に講師が話す教壇がある。全体的にすり鉢型になっているそれはまさに大学の教室であった。
 その教室の真ん中辺りにいてだ。二人はこう話すのだった。
「何かね」
「久し振りだと言うか」
「うん、そうよ」
 その通りだと答える若奈だった。
「大学の夏休みって長いから」
「そうだな。かなりな」
「あとね。長いのはね」
 ここで若奈はこんなことを話した。
「あそこ。奈良県でいつも甲子園に出る高校」
「甲子園にか」
「ラグビーも柔道も強くて」
 こう言っていくのだった。
「それで吹奏楽や雅楽も有名なあの高校ね」
「随分独特な高校だな」
「うん。私の親戚の娘が行ってる高校なの」
 そこの高校だというのだ。
「そこね。夏休みが相当長くて」
「どれだけある」
「五十日位」
「長いな」
 牧村もそれを聞いてはっきりと言った。
「それが高校の夏休みか」
「冬休みも一月あって」
 話はまだあった。冬もなのだった。
「春休みもそれ位あるの」
「またどうしてそれだけあるのだ」
「あれなの。その高校日本全国から生徒が来るから」
 そうした高校もあるのだ。高校としては珍しい部類であるが確かに存在しているのである。それがその高校であるというのである。 
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