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髑髏天使

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第五十話 帰郷その二十二


「恐ろしい話だな」
「それが戦後の日本の知性じゃ」
「知性か」
「そうじゃ。戦前とは全く違う」
 博士は明らかに憤っていた。言葉にそれが出ていた。
「恐ろしい話じゃろう」
「そう言うしかないな」
「それを書く学者やマスコミこそがじゃ」
「現地でそうした行為を行っていたな」
「日本国内でもしておった」
 まさにだ。やりたい放題だったというのである。
「それが報道されることはなかった」
「全くか」
「そうじゃ、試しにじゃ」
「試しに」
「学校の教師の不祥事なぞはじゃ」
 そちらに話を移してであった。話すのだった。
「報道で出て来るのはほんの氷山の一角じゃ」
「ほんのか」
「そうじゃ、ほんのじゃ」
 そうでしかないというのである。
「酷い話は幾らでもある」
「確かにな。俺の中学校でもな」
「そうじゃったな」
「現実世界では有り得ない暴力教師がいた」
 あの魔物に殺された暴力教師のことだ。
「受身を知らない生徒に床で背負い投げをした」
「それって普通捕まるよね」
「そうだよね」
 妖怪達もこう言う行為であった。
「っていうか床でって」
「下手したら死なない?」
「しかも受身知らない相手にって」
「その教師頭おかしいでしょ」
 彼等も唖然としながら話す。
「あの、柔道で畳あるのって」
「床でしたら危ないからだけれど」
「それで床で背負い投げって」
「普通の社会でそれやったら」
 どうなるか。それも話すのだった。
「確実に傷害罪で逮捕だよ」
「それが許されるのが先生の世界なんだ」
「そうなんだね」
「そうだ。捕まることなぞなかった」
 実際にそうだとだ。牧村も話す。
「全くな」
「それがおかしいから」
「そんなの警察とか自衛隊とか」
「そんな閉鎖的って言われてる世界でもね」
「クビだから」
「絶対に」
 これは警察や自衛隊が健全な世界だということに他ならない。少なくとも教師の世界に比べれば遥かにだ。健全であると言えた。
「それでお咎めなしじゃあね」
「酷い世界にもなるよ」
「ならない筈がないよ」
「有り得ないから」
「その有り得ない社会が戦後の日本ではじゃ」
 また話す博士であった。
「尊敬されておったのじゃ」
「ううん、とんでもないね」
「先生様なんてとても言えないね」
「っていうか教師って何?」
「悪いことしても捕まらない人達なんだね」
「そうした世界もあるのじゃ」
 博士は溜息と共に述べた。
「しかし君はじゃ」
「俺か」
「そうした人間には絶対にならん」
 こう牧村に話すのだった。
「絶対にな」
「ならないか」
「そうした人間ならとっくに魔物になっておった」
 そうだというのである。 
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