インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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乱入の光
―――祐人side
「え? いつの間に!?」
楯無がどうやってこんなところに現れたのかわからず、戸惑っていた。
「ねぇ兄さん。どうして亡国企業に来ないの?」
「言っただろ。そっちに行くとまともな恋愛ができないって」
「……でも、今の兄さんの立場だとどう転んでもまともな人生を歩めないよ?」
確かにそうだ―――だが、それとこれとは話が別だ。いざとなれば逃げればいいんだし。
「……仕方ない。なら、力強くでも連れていく!!」
言うや否や、アイングラドの操縦者は《斬霊》を収納すると同時に再度展開して俺に斬り付ける―――が、
「楯無、下がれ!」
そう指示すると同時に俺は《斬魂》を構え直して《斬霊》と切り結んだ。
「やるねぇ、兄さん」
「生憎、こっちは久々に暴れられるんだ。本音を言えばウズウズしているんだよ」
「ふーん。やっぱりIS学園の生徒は弱虫しかいないの?」
「守りたくなるような美少女はいるんだがなぁ。生憎俺の動きに付いてこれる人間は二人位しかいない!」
アイツを蹴って一度距離を取る―――が、
「私が得意なのは射撃なんだよ!」
「どっちも大して差がねぇだろうが!」
レーザーライフルで連続射撃を行い、それらが装甲を掠めて徐々にシールドエネルギーを減らす―――だが、
「ファルケン、フルドライブ」
瞬時加速とも見間違うほどの爆発的加速にその女は驚いた。
「悪いが、少しばかり本気を出させてもらう」
俺のその言葉と同時にその女に連続で斬り付ける。
「本当に、兄さんは頭も体も規格外すぎるよ………」
「知ってる。そしてそれだけじゃないけどな」
今のでかなりのシールドエネルギーを削れただろう―――が、
「でも、まだ戦えるよ!」
俺がするのと同じでどこからともなく鎖を展開し、ディアンルグの腕に絡みつかせた。
「さて、終わり―――!!」
途端に、俺の視界がピンクに染まった。別にパンツが見えたとかその先が見えたとかじゃない。
■■■
「え?」
アイングラドの操縦者から疑問のような声があがった。
その原因はどこからかの高威力の攻撃。それがディアンルグを纏う祐人に襲い、操縦者保護機能が働いてディアンルグが解除された。
「兄さ―――」
アイングラドの操縦者が自分が兄と思う人間を別の人間が受け止めた。
―――パチンッ
するとアイングラドとその操縦者に水蒸気爆発が起こる。
「悪いけど、今これ以上はあなたには付き合えないわ」
「な、何で……」
「周りの温度がさっきの熱線で熱くなったこともあってすぐに出来たわ。それと、今の内に逃げなさい。今回は見逃してあげるから」
「う、うん………」
アイングラドの操縦者はそのまま逃げていった。
『でもいいのかしら? 生徒会長であるあなたが敵を逃がすなんて』
直接楯無のIS『ミステリアス・レイディ』に個人間秘匿通信がシヴァから送られてきた。
「本当は逃がしてはいけない―――けど、今の状態じゃ戦っても今の状態じゃあ逆にコアが取られるだけよ」
『まぁ、それもそうね。それじゃあ、織斑千冬に伝えて。所属不明の全身装甲のISを捕獲したって』
楯無はある予想をして上を見ると、そこにはまるで砲撃を行うために用意されたかのようなISがこっちに向かっていた。
―――ズドォオオオンッ
最初よりも小さい規模だがそれでも大きな地震が起こった。
『それと楯無、急いで祐人を医療室に連れて行きなさい。今の彼、危険な状態よ』
「え……?」
言われたことがわからず、楯無は抱きかかえている祐人に視線を落とす。
祐人のISスーツから血が滲み出ていた。
■■■
IS学園の地下特別区画。教師ですら一部の人間しか知らないその場所で、真耶は回収された無人機の解析を行っていた。
「少し休憩したらどうだ?」
「あ……。織斑先生」
その部屋に入った千冬は真耶に缶ジュースを投げて渡した。
差し入れのオレンジジュースに口を付けながら、真耶はディスプレイに解析結果を表示した。
「見てください。やはり、以前現れた無人機の発展機で間違いありません」
以前の。それは祐人が破壊した無人機―――今回はその発展機だった。
「コアは?」
「例によって、未登録のものです。校舎近くに出現した三機と最後回収された砲撃用だと思われるコアは抜き取られていました」
「……そうか」
千冬がこう答えたのは訳がある。
さっきあの無人機を停止させたのはシヴァだと楯無から聞いていたことでもある。彼女が持っているということもある。そして校舎近くは祐人が担当していたこともあり、どこか見つかりにくいところに隠していると信じているというのもある。信じすぎるのもよくないが、経歴不明や存在自体謎の存在だが、千冬はどこか信じていた。それでも少しは疑っているが。
「それで、何個回収できた?」
「二つです。さっき報告した物を除けばほかは戦闘の際に破壊されています」
『―――その二つにさらに四つ足して』
後ろから声が聞こえ、千冬と真耶は振り向く。そこにはいつもの様子でIS学園の制服を纏ったシヴァがISコアでお手玉をしていた。
「し、シヴァさん?! どうしてこんな所に!? ここは関係者以外は立ち入り禁止ですよ!」
『いいじゃない。あなたたちもジジイどもに命令されて私のことを探っていた。おあいこよ。それとも―――このISコアをあの亡国企業に売りつけてもいいのよ』
「そ、それは―――」
「………条件は何だ?」
「お、織斑先生!?」
『じゃあ、真耶が祐人のペットになるってどう?』
「あ、あの………できれば私の意見も尊重してくれるとありがたいんですけど……」
シヴァが「冗談よ」と言ってから本題を切り出す。
『とりあえず、あなたたちがディアンルグについてどこまで知っているか聞かせてもらおうかしら』
その内容に千冬も真耶もいい顔をしなかった。
「ディアンルグに使用されているコアは未登録。そして操縦者である風宮以外には触れると電磁波が流れて干渉できない。そして武装の一部にはまだ実装されていないはずのビーム兵器だけでなく第三世代兵器『BT兵器』と『マルチロックオン・システム』が入れられているぐらいだろう。安心しろ。ビーム兵器のことはまだ各国にはばらしていない」
『そう。真耶も同じような感じ?』
「ええ。私は織斑先生の助手のようなものですから……」
それでも真耶はビクビクしていた。見た目は少女だが戦士故の直感としてだろう、自分はこの娘には勝てないと悟っていた。
『そう怖がらなくてもいいわよ。裏切ればそれ相応の苦痛を与えるだけだから』
平然と言うが、二人はそれが怖かった。
『じゃあ、言った通りにされて欲しくなければ大人しくすることね』
「……ここには誰もいないし誰も聞いていない。彼女の口止めも私がする。だからシヴァ、お前の目的を聞かせてくれないだろうか?」
シヴァが消えようとすると千冬が静止する。そして少しシヴァは考えて、
『いいわよ。私は祐人に仇なす敵をすべて葬ること、そして彼が安全な生活を送れることよ。例え敵が国家でも私は容赦しないわ』
「正気ですか!? そんなことをすれば死にますよ!!」
『見くびらないでよ。IS如きで死ぬような存在じゃないわよ、私は』
「最後に聞く。お前は今は味方か?」
『ええ。祐人がその道を選ぶ限りは、ね』
そう言ってシヴァはその場から消えた。
「織斑先生、彼女は一体―――」
「わからない。―――が、ただの人間ではないことは確かだ」
さっきまでシヴァがいた場所を見つめる二人。だけどそこからはいつまで経ってもウンともスんとも言わなかった。
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