インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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もう一人の布仏
外灯が点灯するだけで大して明るくない夜道に、二人の少年少女が走っていた。そしてそれを遮るかのように男が現れた。
「―――おっと、ここから先は立ち入り禁止だぜ」
―――バァンッ!!
少年が持っていた銃から銃声が鳴り響き、その男の肩を掠めた。
「このガキ―――」
―――パァッ!!
途端に男の前が光る。
「ふ、フラッシュグレネードかよ!?」
その隙に少年は再び少女の手を引いてその場を去り、近くの家屋に入った。
「本家、応答してください。こちら祐人」
『聞こえている。そっちの現在地は?』
「わかりません。今そちらにこちらの座標を転送するのでそちらで捜索してください」
そう言うと祐人と名乗った少年は小型端末を弄った。
『現在地データを受信した。今すぐそちらに向かう』
「現在、俺たちは狙われています。原因は不明ですがこちらに着くまでどれくらいの時間がかかりますか?」
『早くても五分はかかる』
五分。それはさっきからの距離から考えてあまりにも長すぎた。
「……仕方ないか」
少年は端末を弄ってから少女に渡して、
「○様、あなたは逃げてください」
少年は少女にそう告げた。
「今迎えのデータもそっちに添付されていますのでその方角に向えばなんとか―――」
だけど少女は首を横に振って拒絶する。
「…でも、祐人を置いて……なんて……」
その少女はただ少年と一緒にいたかった。それを少年はすぐに理解して持っている銃を少女の頭近くに発砲した。
「………え?」
「今だから………はっきり言わせてもらう」
その声は震えていた。少年だって本当は別れたくない。だが少年は家でももてはやされるほど頭がよく、精神年齢も人一倍高く、真面目な中学生と同じと言っても過言ではなかった。それゆえに、今はどんな状況で何をするべきかを理解していた。
「もう、うんざりなんだよ。お前みたいな弱虫を守るなんて」
「あ、ああ……」
いきなりそれを告げられ、少女も自分などんな状況かようやく納得した。
だが同時に―――次に言われる言葉にはショックを受けた。
「ほら、とっとと失せろ。邪魔だ」
自分は今の少年の足を引っ張るのを感じ、少女は怯えながら目の前の驚異から逃げた。
そして銃声を聞きつけた男たちがその家屋に侵入する。
「ようやく見つけたぞ」
「さっきはよくもやってくれたな!」
合計三人の男たちがその少年を囲む。
「なんで………」
「あ? 何か言ったか―――」
―――バァンッ!!
「何で俺たちの邪魔をするんだァ!!」
少年は背中に携えていた少年用の刀を抜き、男を斬り付ける。
「て、テメェ!!」
そこから大人と子供の戦いが始まったが、それは数と経験故にすぐに終息した。もちろん、大人たちの圧勝―――ではなかった。
男たちは所々に傷を負っていた。致死とはいかないが、それでも後になってひびく傷が残った。
■■■
―――虚side
「祐人! しっかりして!」
無人機が2機現れると同時に祐人の様子がおかしくなり、ISが解除された。
『落ち着きなさい』
「でも―――」
『落ち着きなさい、虚。今ここはかなり危険なのよ』
確かにそうだ。今は何故か動かないがここには私たちを近くには無人機がいる。それよりもどうしてシヴァがここにいるかもわからないけど、祐人の近くにいつもいるから祐人の護衛みたいなものだろうと思っておく。
『ともかく今はここから離脱しましょう。虚はそっちを―――』
「―――その必要はない」
祐人の口からそんな言葉が発せられると同時に今までうつぶせだった祐人が立ち上がった。
そこでふと気がつく。祐人が―――どこか違う。
「ゆ、祐人……?」
「何やっているんだ、姉さん。早くシェルターに避難しろよ」
祐人はジト目でこっちを見てくるが、そんなことより別のことが気になっていた。
「………まさか……あなた……」
「ああ、言いたいことはわかる。だけどそれは後だ。今は早く避難してくれ」
「え、ええ」
私はそこから離れると祐人はディアンルグを展開してその場から上に飛んだ。そしてそれに追従するかのように無人機も飛翔する。
『はぁ。やっと記憶を取り戻したのね』
「う、うん。そうみたい………って、え? あなたは知ってたの?」
『記憶を失う前にもし知っている人がいても話さないでおいてほしいって言われていたからね』
何事もなかったかのようにシヴァはそう答えた。
『それよりもあなたは早くシェルターに避難しなさい』
「でも、あなたは?」
『私は特別だから大丈夫よ』
それだけ言って彼女はその場か消えた。
私はシェルターに避難すると本音を探す。ここには全学年の生徒を収容できるほどの大きさがあるからここにいると思ったんだけど、さっきから姿が見えない。どうやらここではないようだ。
(でも、ほかにもあったかしら?)
ふと思っていると、本音を見つけた。
「あ、お姉ちゃん!」
呼ぼうとすると、私の姿を見つけた本音がこっちに向かってきた。
本音の友達に断ってからその場を離れて祐人のことを伝えると本音は驚愕した。
「それ……本当?」
「ええ。本当よ」
すると本音は急に涙を流す。
本音はあの時もそうだった。祐人も消えた後もずっと泣いていた。まるで半身を奪われたかのように。そして現れた二人目の操縦者が兄だと本音もどこかで気づいていたのだろう。
「本音、泣かないで。今はみんなと戦っているから待っておこう」
「うん」
だけど祐人は原因はどうあれ、ほとんどの確立で気絶している。だから今回は無事に戻ってきて欲しいと思った。
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