ソードアート・オンライン stylish・story
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第二十一話 事情
軍と一悶着あった翌日の昼頃
「はあああ!!!」
ガキン!!バキン!!
「良い感じだ。その調子で腕だけじゃなく、体全体を使って俺に斬りかかって来い!!」
「はい!!」
シュウとツバサは今日も剣の修行に打ち込んでいた。
初めの頃はツバサも剣に慣れていなかったのか、ぶっきら棒に剣を振っていたがシュウの指導とツバサ自身の習得力もあるのか剣の腕は見る見る上がっていた。
(昨日から始めたってのにツバサの上達の早さはスゲェな。このまま行けば軍の連中より強くなるんじゃねぇか?こいつは)
「そこだ!!」
シュウの考え事の最中に隙を見逃さなかったのかツバサが素早く斬りかかった。しかし・・・
「Pushover(甘いな)!!」
シュウはツバサのざ斬撃をリベリオンで滑らせるように受けると鍔元から一気に斬り上げるとツバサのシルバー・ウィングは弾き飛び、地面に突き刺さった。
そしてシュウはリベリオンの先端をツバサに向ける。
「ま、参りました・・・」
「中々良くなって来たじゃねぇか、ツバサ。後はテメェの剣を振り続ける事だな」
シルバー・ウィングには使用者のステータスを上げるアビリティも付いていたため、それを使いこなせるようになればかなり強くなるのは明白だが、ツバサの場合はもっと経験を積む必要があった。
「良し。午前中の訓練はここまでだ。昼飯食って少し休んだら続きと行こうぜ?身体を休める事も大切な事だからよ」
「はい!!」
二人はそれぞれの剣を背中に直し、教会に戻ろうとすると・・・
「すまないが少し宜しいか?」
第三者に声がシュウとツバサの耳に届き、振り返るとシュウは直ぐにツバサを自分の背後に周らせた。声の主は髪をポニーテールで纏めている女性だが問題は服装だった。
「初めまして、私は【ユリエール】と言います」
「これはこれは・・・軍の団員が教会に何か用か?差し詰め、昨日のケンカの抗議でも士に来たってのか?」
その女性が装っていたのは昨日シュウが退かせた軍の正装だった。シュウは女性に眼を細め、少し殺気を放っていた。
しかしユリエールの返答はその逆だった。
「いやいや、とんでもない。寧ろ良くやってくれたとお礼を言いたい位ですよ」
(・・・どうやら軍全員が昨日みたいな連中じゃなさそうだな)
シュウはユリエールの表情と言葉で悪意はないと取ったのか殺気をしまい、気を楽にすると彼女と会話を始める。
「んで。今日はどう言った用件なんだ?」
「実はここにいらっしゃるキリトさん、アスナさん、そしてシュウさんにお願いがあって赴いたのです」
ユリエールが自分の願望の話を持ちかけると表情は一変して、何か思い詰めた表情に変わってしまった。シュウはこの表情で何かを読み取ったのかそれを了承する。
「良いぜ。話位は聞いてやる。ツバサ、教会に戻ってキリトとアスナを呼んで来てくれないか?俺の彼女を連れてすぐに行くからよ?」
「分かったよ!!シュウさん」
ツバサはユイと一緒に居るキリトとアスナを教会まで呼びに行き、シュウはユリエールを連れて教会の応接室まで案内した。
そして応接室にキリト、アスナ、シュウ、サーシャそして目覚めたユイが集まるとユリエールは話を始めた。
~~~~~~~~~~~~
ユリエールの話からすると、本来の軍は今のような独裁を行うつもりは全く無かったらしく、武器や食料を均等に分け合いこの町の秩序を守る事を軍を作ったリーダー【シンカー】の理念だったが・・・
「だが・・・軍は巨大になり過ぎた」
キリトの考えにユリエールは頷き、話を続ける。
そして大きくなって行った軍内で内部抗争が目立ってきた中で【キバオウ】と言う男が名乗りを上げていったみたいだった。
(第一層攻略の時の俺とキリトに突っ掛かってきたあのトンガリ頭のあいつか・・・)
シュウはその人物を頭の中に思い浮かべていた。
しかしそのキバオウは権力を手にしていく程に狩場の独占や徴税と命した恐喝紛いの事すら始めたみたいだった。さらに自分の立場が崩れていく事を恐れたキバオウは最前線に高レベルのプレイヤーを送り込んだみたいだった。
「・・・コーバッツさん」
アスナは思い当たる節があるのか一人で呟いていた。しかしその事を聞いたシュウはそれよりもユリエールに尋ねる。
「おいおい!そんな事やってんのに軍から糾弾しなかったのかよ!?」
「勿論。彼を軍から追放する一歩前まで追い詰める事は出来たのですが、キバオウはシンカーを罠にかけると言う強行策に出たんです・・・シンカーをダンジョンの最深部に置き去りにしたんです」
「「っ!?」」
「転移結晶は!?」
シュウとアスナは驚愕の事実に言葉を失っていた。キリトに至ってはユリエールに尋ねたが彼女は首を横に振る。
シンカーはキバオウの丸腰で話し合おうと言う言葉を信じて、ダンジョンに赴いたみたいだった。シュウはシンカーのお人好しとキバオウの心に溜め息を付くと要点をユリエール尋ねる。
「今回ここに来たってのは、シンカーって奴の救出を手伝って欲しいと言う事なのか?」
「はい。ですが私のレベルではとても最深部に辿り着く事なんか出来ません。ましてやキバオウが睨みを効かせているこんな時に軍の助力を使うわけにも行きません。そんな時に貴方方の話を耳にしたんです」
ユリエールは立ち上がると頭を下げ、三人に要求する。
「お願いします!どうか私と一緒にシンカーの救出を手伝って貰えないでしょうか?無理なお願いと言う事は分かっています!!でも彼の事を思うと・・・おかしくなってしまいそうで・・・」
ユリエールの眼からは彼を想う涙が少しずつ流れていた。
それを見ていたシュウは少し考えると結論を述べる。
「良いぜ!その依頼・・・受けてやろうじゃねぇか!」
シュウの言葉にアスナが反論する。
「ちょっと待って!今の話の裏づけをしないと」
「おいおい。今までの言動で裏付ける必要があんのか?アスナ。ユリエールはシンカーの話になると涙を流していたよな?これはシンカーを想っている何よりの証拠だ。そしてこんな状況で嘘を付ける程、彼女の心は腐っちゃいねぇ・・・ガキっぽい発想だが俺はそう思うぜ?」
「おじさんの言う通りだよ?ママ。その人、嘘付いてないよ」
シュウの言葉に対して、ユイが助言を入れる。
「ユイちゃん。そんな事分かるの?」
「うん♪うまく言えないけど・・・分かるよ」
それを聞いたキリトがさらに続ける。
「疑って後悔するより、信じて後悔しようぜ?アスナ。それに俺達三人が居れば何とかなると思うしな」
今まで三人の言葉を聞いたアスナはヤレヤレと少し呆れ顔になったが、その言葉を信じる事にした。ユイには教会に残るようにキリトとアスナが言い聞かせたが、二人の側が良いのか結局付いていく事になった。
後書き
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