インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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家族がかわいそうでしょう
「「襲われた!?」」
「ああ、昨日の夜にな」
俺は今日は珍しく一夏たちと一緒に食事をしている。
昨日のことを学校に行ってから話し、織斑マドカと名乗る女のことと俺が亡国企業に勧誘されたことは黙ってもらうようにボーデヴィッヒに頼んでおいた。
どうやら篠ノ之と凰の様子からすると、こいつは昨日に話さなかったな。
「サイレント・ゼフィルスの操縦者……一体何が目的なんだろう。一夏は思い当たることある?」
「さあ、な」
まさか言えないだろうな。自分が殺されそうになったとは。
「それはそうと一夏さん、次は卵焼きをいただけますかしら?」
「ん、わかった。ほら」
どうやら昨日、俺たちと別の方でオルコットは戦闘したらしくその時に右腕を負傷したらしい。しかもこれは策略らしく、凰と篠ノ之が睨んでいた。そして、威圧を放つデュノアに、無理やり食べさせるボーデヴィッヒ。少しは落ち着いて食えと言いたい。
そこへ山田先生と織斑先生が現れて、さらに混沌と化したので俺は即座にその席から逃げ出した。
「かざみん、こっちこっち~」
本音に呼ばれて俺はそっちに移動した。
「……昨日は、大丈夫だった……?」
「ああ。平気だって」
どっちのことを言っているのかわかんないけど。
俺は簪の頭に埃を見つけたので取ると、簪は顔を赤らめた。
「かざみん」
食べ終わったらしい本音は俺の膝に座る。
その後にみんなでパフェを食べた―――までは良かった。
「………お前が妹を好いているだろうから彼氏はもうできないだろうってことはわかる。だけどな、銃を向けられる筋合いはないぞ」
埃を取ったのは髪を触れるための口実だと思っているのか、姉に銃を向けられていた。
「あら、敵の芽は早めに潰すのは当たり前。そうでしょ?」
「………一夏の奴、黙っておけって言ったのに」
後でしばく。
「あら、彼は私の策略に乗せられただけよ?」
「そんなことをさせたのはアイツが曖昧に返事したからだろうが」
俺も言ってやろうかと思ったが、止めた。あれには関わらせない方がいいだろう。だがまぁ、殴らせてもらうか。
「それに、私も昨日見ていたのもあったのよね」
「あ、そうなんだ」
なら納得―――だが、アイアンクローぐらいは許してくれるだろう。
「……で、そのために話して貰ったのよ。あなた、本当は行くつもりでしょう?」
「………ああ。まぁ、迷ったけどな」
「あなたが亡国企業に惹かれた理由は、何? まぁ、あの白いISとその操縦者でしょうけど」
「ああ。お察しの通りだ」
そう答えると、楯無は詰め寄って来た。
「じゃあ、私と『肉体契約』を結んでもらおうかしら」
………は?
意味がわからない単語に俺は絶句した。
「まぁ、肉体契約は簡単に言うと―――私の体を好きにしていいから、その代わりあなたにも私の指示に従ってもらうわ」
『却下ね』
俺が呆然としていると、シヴァがそれを拒否した。というかしていなかったら俺は固まっていたぞ。
「あら、あなたには関係ない―――」
『簪は泣くでしょうね。まさか珍しいというだけでどこの馬の骨かもわからない男との子供がいつの間にか大好きな姉のお腹の中にいるなんて………』
―――サァー
と、楯無の顔が青くなっていく。
『もちろん、そこから一気に家族崩壊。無論、そんな遊びに染まった娘を当主にするのは全員が反対し、結果、簪が新たな当主に―――』
「ごめん、祐人。今の話はナシで」
『あら、いいの? 祐人はこう見えても上手だから10年は快感に溺れるわよ』
とまぁ、さっきから女同士で謎の会話を繰り広げているが、俺にはなんのことはわからなかった。快感ならマッサージが上手い一夏にさせるべきだ。
「もちろん。簪ちゃんには裏の世界を歩ませないわよ」
『まぁ、この前に巻き込まれそうになったけど。それに、中には簪の裸を狙って―――』
「そいつはどこにいる?」
俺は回収したと思われる相手―――楯無に聞いた。
「既に処分したわ」
「………チッ」
俺は自分で引導を渡せなかったことがムカついた。
■■■
―――楯無side
最近、祐人が簪ちゃんに肩入れしている気がする。―――じゃなくて、
(あの白いISのことを聞くのを忘れた!)
それはしてはならない失態。今すぐ戻ろうと思ったが、時間を考えるとそれは無理だ。本当は叩き起したいところだが、周りにも人がいるからそれは避けたい。
そこでふと、自分がある人間に見られていることがわかった。
「そこにいるんでしょう? 出てきたらどうなの?」
『あら? さすがは暗部の当主ね』
「あなたにしては随分と見え見えな気配ね。主の下に戻らないでいいのかしら?」
『……男だと判別したら寝床を襲ったと半殺しにし、女だとわかって顔を見て不細工だったら半殺しにするマスターをどう心配しろと?』
「ちなみに、あなただったらどうなるの?」
『襲ってくれたらいいのだけど。まぁ、危険な香りをしたら寝ぼけながら調教する人だからあまり警戒していないの』
それを聞いた私は少し身震いした。
『ちなみにあなたは問答無用で調教ルートよ。何の目的で自分と寝ようとしたか吐かされるだけでなく、自分好みに調教されるわ』
「恐ろしいわね。それは」
『まぁ、あなたの場合は玩具ルートね。ちなみに本人は完全に爆睡中だから一切覚えてないという地獄よ』
……そこでふと、あることに気付く。
自分は裏の世界に入った頃からそういうことは覚悟していた。だが、無関係の簪ちゃんや本音ちゃんはどうなるだろうか?
「ねぇ、簪ちゃんや本音ちゃんが寝込みを襲ったらどうなるかしら?」
『おそらく頬にキスするでしょうね。たぶんそれくらい大事に思っているでしょうから。………本人はまるで気づいていないでしょうけど、あなたの元部下たちはブリュンヒルデ級とは言わなくても代表候補生以上―――精々あの眼帯以上はあるでしょう? 本人は気づいていなかったけど、あの時はかなりキレていたわよ』
こういうとき、怒りたいのやらホッとしたいのやら感情が渦巻いてわからなくなる。だけどちょうど良かった。
「……さて、シヴァ・風宮さん。そろそろあなたの素性を教えてくれると嬉しいんだけど?」
そろそろ解明しておきたい。この子についても、そして白いISについても。
『だったら彼の心を開くことね、更識楯無。まぁ、利用するだけ利用するならあなたの妹を連れて亡国企業に行くことを進言するけど。そうなると―――IS学園は事実上の運営停止を言い渡される未来しか見えないわ』
「あら、随分の物言いね」
『例えあなたが学園最強でも私からすれば大した実力じゃないし、それに織斑先生が世界最強と言われても所詮は“元”。古い話よ』
「………本当に、随分な言いようね……」
だけど、彼女の目は嘘なんてついていなかった。紛れも無く事実だと、目が語っていた。
だから、そんなことが来ないようにずっと思っていたんだ。
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