自由気ままにリリカル記
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四話~一方的な邂逅~ 2月27日修正
……マスターはもう外に出たのかな? ……出た、よね。うん。
サーチャーを使って、家の周囲から誰もいなくなったことを念入りに確認してから溜め息を吐く。まあ、デバイスみたいな私にとって溜め息を吐く口は無いのだけれど。
神から急に現私のマスターの門音邦介のデバイスとして海鳴のこの家で待機していて欲しいって言われた時は本当にこの世の終わりかと思って絶望していたけど………私は運が良かったみたい。
私も気づいた時には傍にいた理沙ちゃん達と一緒にずっと神が転生者を次々と捌いていくのを見ていたけど本当にあれは酷かった。
明君や理沙ちゃんなんか姿が光にしか見えないのをいいことにこっそり背後から殴りかかろうとしていたし、イルマ君やヤタ君は行動にこそ移らなかったけど青筋が浮いていて、しまいにはその血管が切れたりしていた。
しかもそれでいて、表情は二人とも笑顔のままなんだから尚更不気味だ。
そして、数えるのは途中で止めちゃったけど、五百人中少なくとも四百五十人はいきなり興奮しだして、意味の分からない自分勝手なことしか言い出さなくなるから、感情を抑えるのが大変だった。
例えば、
「あなたは、私達の不手際で殺してしまいました」
「テンプレキターーー!!」
「…ですので、そのお礼として」
「なに!? なに!? やっぱあれだろ! ここはお決まりとして俺をこの醜い体から銀髪オッドアイ……いや、現実でオッドアイはキモイからここはjk青目だろう!! そして、転生するのはリリカルなのはの世界で歳は俺のなのは達と同じ歳で!」
「は、はぁ……」
「後は、そうだなあ……特典は何にしよう。まずニコポナデポは当たり前だろ? 後は俺専用のデバイスの……」
「……これ以上は特典を増やすことは出来ません」
「………あ゛? 間違えて殺しておいて特典が三つまでってどういうことだよ!! 被害者に向かってその態度はなんだ!!」
「…………分かりました。それでは後一つだけ増やしましょう」
「っち。最初からそうしておけばいいんだよ。っぺ!」
床に唾を吐いて消えていく、デフォルメされた女の子がプリントされたTシャツを着た肥満体系の男。あれが、海鳴の地に足を着ける時にはまるで正反対な姿に作り替えられているのだろうか。
想像したら背筋が冷たくなった。
しかも、転生者の中には自信の欲望をさらけ出したかのような容姿のユニゾンデバイスを特典で頼む時がある。それで運悪くそユニゾンデバイスとして行くことになってしまったあの子たちの表情は…………私に力さえあれば救ってあげられるのに。
それに……転生者達は根本的な所から勘違いをしている。
あなた達は間違えて殺されたんじゃないんだよ?
神がこんなにたくさんもミスをするわけないよ。
それに加えてあの神は生まれてから今まで、仕事に対して手を抜いたこともミスをしたこともないことから完璧超神として有名な神なんだよ。
他の神が極偶に勝手に人を殺してしまうことがあるけど、それの対処を平気で同時に二十並列してしているのだから正に規格外の代名詞的な存在なのに……。
だから神は今から未来までずっと、悲惨な生活を抜けられずに後悔しながら死んでしまうあなた達の姿をしっかりと確認してからわざと殺してるんだよ?
そもそも、神がこんなに馬鹿げたミスをするわけないじゃん。
あなた達のために、二回目の人生をやり直すことが出来るようにと、特別対策として設けられたのがこの転生特典なのに……。
だけど、中には本当にどこかの神がミスして殺してしまうことがある。
この人達は人生に絶望もしていないし、基本的な道徳も身に着けている。
だから、本当にこれからの事を見据えていたからきっと大丈夫。
ちなみに、私達デバイス、ユニゾンデバイスは合わせて大体五千人くらい用意されていて、そこから転生者の希望、それかデバイスきっての希望で転生者が持つ物は決められる。
だからデバイスとして行く気も無かった私は、神の傍でこっそりと理沙ちゃん達と一緒に転生者達が仕分けられる様子を眺めていた。
この頃はまさか、推薦制度なんてものがあるとは思っていなかったから、急にマスターのデバイスに理沙ちゃん達から指名された時は心臓が止まるかと思った。
だから、『理沙ちゃん達の親友なんだからきっと優しいよね?』と理沙ちゃん達に聞いて『さあ? どうだろうね? もしかしたらあなたを使ってもらわない方が強いかもしれないよ? そうなったらずっと机の上で寂しく転がっていることしか出来ないかも……』という言葉が返ってきた時に思わず素で叫んでしまったのは仕方ないことだと思う。
『……その問題のマスターは今頃何処にいるのかな?』
マスターのことだから海鳴市を一通り見てから帰ってくると思う。
だって、マスターって見た感じ凝り性だと思うから、中途半端に終えるということはないはずだ。
まず、転生した次には状況把握をもう調べるところなんてないというほどする人が凝り性じゃないわけないよね。五歳なのによく動くね。
……五歳と言えばマスターは、なのはと同い年に変えられていたんだったね。
きっとこの頃のなのはは、公園に一人で居たと思うけど……心配だ。
なにせ、この世界に送られた転生者はマスターも含めて十人。
気持ち悪い転生者だと、な……私が確認しただけでも七人はいたの……だ。
その中には「原作介入してやるぜ! 待ってろよ俺のハーレム達!! ひゃっほーー!!!」なんて意味が分からないけど、とても危険な人もいたからきっとなのはが狙われているはずなの……だ。
せめてマスターが撃退してくれることを願うだけしか出来ないなんて……持って行ってくれるように頼み込めば良かったの。
……あっ。
『また言っちゃった。中々疲れるの。言いたいことが言えないのは……』
side out
side ~Nanoha~
わたしは高町なのは。ふつうのごさいの女の子なの。
おとうさんがけがをしていなくなって、お母さんもお姉ちゃんもお兄ちゃんもみんな、お店で忙しくてとっても大変そう。
なのはは小さいから何もお手伝いが出来ないから、皆に迷惑をかけないようにひとりでいい子にしてるの。
そう思って公園で遊んでいたのに……
「なあ! 悩みがあるんじゃないのか? 俺に話してみろよ!」
顔を上げるとそこには銀髪で青い目をした外人みたいなおとこの子がいたの。
笑いながら頭をなでてくるけど何がおもしろいのか分からないよ。
「……いいよ。なにも悩んでないの」
「そんなこと言うなって! 俺は神白鋼(かみしろ こう)。鋼って呼んでいいぜ! よろしくな! 君の名前はなんだい!」
なんだかよく分からないけど、今は人と話したくない気分なのに……。
でも、なまえを言われたからお兄ちゃんの言うとおりに私も言わないとダメなの。
「……高町なのは」
もうどこかに行って欲しいな……。
「なら、なのはって呼ぶぜ! なのは! 俺と遊ぼへぶあ!?」
「!?」
「大丈夫かい? 随分と嫌がっていたように見えたけど……」
銀髪のおとこの子がわたしをむりやり立ち上がらせようとしたとき、急におとこの子が横に飛ばされて、少しピクピクと動いたあと、ガクリと倒れたの。いい気味なの。
そしてまた声を掛けられて、顔を上げると金髪で右と左で違う綺麗な目をしたおとこの子がニッコリと笑いかけてきたの。助けてくれたのはうれしいけど、ひとりにしてほしいって言おうとしたの。
「うん! ありがとうなの!」
え?
「わたしの名前は高町なのは!」
違うよ。わたしはひとりにしてほしいって言いたいのに。
「なのはって言うのか。 俺は佛坂神(ほとけざか しん)。よろしくな!」
「よろしくなの! 神君!」
なまえを呼びたくないのに…。なんで、体がかってに動くの!? わたしはどうなっちゃうの!?
「神君! 一緒に遊ぼう?」
いやだ……。
「いいぜ! でも、何か悩んでないか? なのは」
「うん。えっとね……」
いやだ、やめて。かってに動かないでよ。
「やめてよ!! ……あれ?」
風がほっぺたをなでたとき、わたしはひっしで叫んだの。
だけど、ふつうに思ったように言葉がでたの。
「あー。いー」
……自由に話せる? さっきまでのはいったいなんだったの?
「お譲ちゃん。今日は危ないからすぐに家に帰りなさい。それとその御守りを外に出るときは絶対に外さないようにな」
ふしぎに思っていると急に声が聞こえたけど、倒れている銀髪のおとこの子とさっきから同じ体勢のまま動かない金髪のおとこの子いがいには誰もいなかったの。
わたしの気のせいだったの……?
こわくなってわたしは帰ったけど、お家に帰って首に黒いおまもりがさがっていることに気づいたの。
side out
side~Housuke~
……一体なんだったんだろうか。あれは。
思わず、顔が引き攣りそうになる程の光景だったと言っておく。
ぶっちゃけ、この海鳴市を粗方見終わって、大体の甘味屋をのチェックを済ませた。
そして道に迷ったから、人気が少なそうな公園でちゃちゃっと空間転移をしようと思っていた。こんな夜中だから頻繁に出会う事はないだろう。
そこで、俺は少女に少年が遊びに誘おうと思ったのか少女のもとに走って向かっているのを目にした。
最初は、ああ、優しい少年なのだろうか。と考えてみるが、よく視てみると様子がおかしい。
銀髪青目のイケメンが一人の少女目掛けて息遣いを荒くして走っていた。
年齢に見合わないその顔と行動の気持ち悪さに、ほぼ脊髄反射で気配を消してしまうほどだったのだが……絶対こいつは転生者なんだろう。
明らかにこれは普通の五歳児がしていい顔と行動じゃない。
普通の子供は目を血走らせ、両手を前に向け、はぁはぁ言いながら走らないぜ?
しばらく観察していると、金髪と赤青のオッドアイのイケメンが出現した。
今回は銀髪を殴り飛ばしての登場だったわけだが、なんと爽やかなイケメンスマイル付きであった。
まあ、ここで異常事態が発生した。
女の子の方の表情も確認していて、明らかに一人にしてほしいのは分かっていたため、普通に嫌な顔をするだろうと踏んでいたのだが、
「うん! ありがとうなの!」
元気に明るい笑顔付きで返事をした。
ここまでならまあ、颯爽と登場したから嬉しかった、というように無理矢理にでも笑った理由を納得することが出来たのだが。
「……あの子の目、急に死んだんだけど。もしかして、ね」
あの子の状態が気になり、イルマ特製の対象の状態異常が一目で分かる(ダサイ)メガネを着けた。
すると、あることが判明し、俺は急遽あの金髪を無力化することに決定した。
音もなく、男の背後に近寄り首に手刀を落とし、意識を刈り取ってすれ違いざまに、女の子の首に俺の魔力を籠めた御守りを掛けた。
「お譲ちゃん。今日は危ないからすぐに家に帰りなさい。それとその御守りを外に出るときは絶対に外さないようにな」
そう言って、素早くおれは空間移動をして、家へと帰った。
全く、何であの女の子は呪われて金髪の洗脳下にあったのか……
随分と物騒な能力を持っているじゃないか。
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