インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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マジで夜に舞う姫たちと騎士
「ふ~ん。ならこの理由は説明できるわね」
とある場所である少女が装甲が使い物にならなくなったアラクネを見てそう言った。
「なんだよノクト、何か不満でもあるっていうのか?」
「いいえ。特にないわ。けど―――まさかあなたが生きて帰って来るとは思わなかったのよ」
「………文句があるならはっきり言ったらどうだ?」
「違うわ。あの男を相手にして死なずに済んでよかったわねと言いたいのよ。それに、あの男が二人目として存在しているのなら今度の作戦は変わってくるわ」
ノクトと呼ばれた少女はそう言ってある場所に向かった。
「スコール、少しいいかしら?」
「どうしたの、ノクト」
「うん。今度の作戦に私を加えて欲しいよの」
「………何が目的?」
「うん。男を一人、ね」
この時のノクトは、恋する乙女の顔をしていた。
■■■
時刻は夜7時。場所は第三アリーナ。
全学年の女子たちは一部を除いて殺気を放っていた。
『昔々あるところに、シンデレラという少女がいました』
そしてスピーカーから楯無のナレーションが聞こえる。この時点―――いや、俺が以前の戦闘服を着ている時点でおかしいかった。
『否、それはもはや名前ではない! 幾多の舞踏会を抜け、群がる敵兵をなぎ倒し、灰燼を纏うことさえいとわぬ地上最強の兵士たち。彼女らを呼ぶに相応しい称号……それが『灰被り姫』!』
セットが本来見るいつものアリーナではなく、ここはどこの戦地だ?と聞きたくなるような障害物を設けられ、挙句観客席には客はなく、すべてはリアルタイムで各部屋または食堂や視聴覚室など様々な場所で視聴するらしい。
『今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜がはじまる。黒衣の騎士がその身に纏うロケットに隠された隣国の軍事機密を狙い、舞踏会という名の死地に少女たちが舞い踊る!』
俺は今、楯無に嵌められて俺を恨んだり蔑んだりとしてくるストレス発散の道具として、演目『シンデレラ』の『黒衣の騎士』を演じていた。
今では女子たちには俺を『変態』や『鬼畜』や『姉妹丼』とかなど生きていくには不必要な称号が与えられていて、いつか襲われるんじゃないだろうかなどと考えている者がいるらしく、あの日の翌日から『打鉄弐式』を完成させるために俺も出向いていたのだが、整備室に入ると睨まれるわ陰口を言われるわ、挙句誰かが流した偽情報『IS学園にはISに乗れるだけで調子に乗っている女子しかいない』と言っていたことを信じて殺気立ち、別のクラスと合同で授業を受ける際には睨まれたりし、さらには生徒会には苦情が殺到してその処理をするべく、
『あれの第二回をするわよ!』
その時の一夏の怯え様には笑えた。
そして決まったのは『第二回灰被り姫』。もちろん俺は強制参加だが条件を出した。
『それに出ると生徒会を辞め、以後どの部活動にも参加しない』
何故か女子ズは嫌がっていたが、そうしないと参加しないと言い張ったので渋々許可された。まぁ、別にそれで納得した俺はもうちょっと高い望みでも言えばよかったかと思ったが。
その場から跳躍して避けると、さっきまでいた場所には飛刀が刺さる。
投げたのは凰鈴音。こいつがそもそもの元凶だ。
「もらったぁぁぁ!」
別の飛刀で切りかかってくるが避け、距離を取る。
「さっさとロケットを寄越しなさい!」
「断る」
「だったら力づくで奪ってやるわ!」
さっきまで実力行使だっただろうが。
そもそもこれには『織斑一夏と同室なれる権利』があり、女子たちはこれを奪うと同時に俺に制裁を加えられる―――つまり一石二鳥というお得感がある。だから狙っているのだが、今回この行事には1年1組の女子たちは参加を辞退した。精々出るのは専用機持ちぐらいで、そのほかは出ない。そもそも今回のある事件の騒動は誤解だと本音が1組には広めたし、俺が舐めているという件に関しても『例え本当でも仕方がない』と割り切っているからだ。
―――福音事件の後に誘拐されているから
その時の無双ぶりを思い出した人間もいて、もし自分が参加しても逆にあの人たちのようになるということを思い出したらしい。
それに、そもそも俺は女に手加減する気はない。
―――ドスッ
俺は跳躍して避け、跳躍して接近し、凰の顔面を容赦なく蹴った。
それを見た1年1組以外からブーイングが聞こえるが、仕方がない。何故なら―――
「何すんのよ、変態!」
すべてはこいつが原因だ。
簪を眠らせたあの日、誰かが勝手にドアを開けた。それが凰であり、その時見た光景は、
・着衣が乱れて一部見えてはいけないところが見えている楯無
・眠っている簪
・簪を抱えてベッドに運ぼうとした俺
それを完全にやっちゃったと勘違いして叫び、全員が来て目撃されたのだ。
「……うっせぇよ貧乳」
途端に凰から本格的な殺気が放たれるが、その程度と一蹴できるほどだった。
「言ったわね。言ってはいけないことを―――」
「―――まぁ、そのほかにも勝手にドアを開けるとか女として間違っていることを平然とやってのけるから一夏に振りむ―――」
―――キンッ
凰の飛刀と俺のナイフが当たり、音が立った。
「それ以上言ったら、殺るわよ」
「事実じゃねぇか。見せれるモノがないから四苦八苦しているんだろ」
「アンタこそ、生徒会長と日本の代表候補生を襲おうとしていたじゃない!」
「あれは事故だっつってんだろうが!! 人の話を聞かないから誤解されるんだろうが!! テメェ含めて一夏に付きまとっている専用機持ち全員に言えることだが、ほかの女といるだけで暴力に走るとか本当に人間性を疑いたくなるね! 特にお前!」
俺の中だとあの中でリードしているのはボーデヴィッヒだと思う。持ち前の世間知らず―――もとい天然さで。
「うるさいわよ! こっちの苦労も知らないで!」
「暴力に走る苦労って……」
いい加減に面倒になったので俺は凰を蹴り飛ばして影に隠れてこっちにライフルを構えているオルコットをこっちに出した。
「ら、乱暴すぎますわよ!」
「知るか!」
本物のライフルを奪ってその場から撤退する。
『さあ! ただいまからフリーエントリー組の参加です! みなさん、黒衣の騎士を屈服させ、ロケットをもらってください!』
それはつまり、全員が―――
「いたわよ! 女の敵!」
「会長を襲うなんて、許さない!」
「更識さんはあなたのことを信じてたのに!!」
「我々が粛清してやる!」
「すまないが、ロケットをもらうぞ!」
先陣を切ったのはボーデヴィッヒ。噂になびかなかった一人だ。というかむしろ開放されると喜んでいた一人でもある。
ボーデヴィッヒはナイフを持って俺に斬りかかる。が、俺は相手をかなりのレベルと認識して相手をするためにすぐに弾いた。
そしてさっき奪ったライフルからマガジンを抜き、ペイント弾を入れたマガジンを差し込んで撃ちまくった。当然、視界を奪うためだ。
「くっ! 小癪な―――」
―――ドスッ
ボーデヴィッヒの首を打ち、気絶させた。
「サイテーね!」
どこかからかそんな声があがると、俺は即座に言った。
「サイテーなのはてめぇらだろ。それともちゃんとナレーションを聞いていたか? テメェらは兵士だろ。俺が本気を出したらお前らはとっくに死んでるっつーの!」
そう叫び、音響増幅爆弾を使用した。
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