真剣に私に恋しなさい! ~ 転生者は天下無双な血統種 ~
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第三話 幼稚園ですか。
前書き
今回は書き直し前の状態でも出てたシーンなので見覚えがある方もいるかもしれませんがそれでもよかったらどうぞ。
ちわっす。
久しぶりだな。高小燕ことシャオだ。
あの読書好きな少女、椎名京との出会いから約一カ月が過ぎた。ちなみにあれから週末の休みや幼稚園から帰ってからよく京と図書館で待ち合わせし、読書談議に興じていたりする。
俺は前世ではあまり難しい本は読まなかったが、歴史系の本やライトノベルなんかはよく読んでいて、この世界に来てからは、それ以外にもよく本を読むようにしている。前も言っていたと思うが、俺はこの第二の人生を悔いが無いように過ごしたいのでそのための知識を得るためだ。
なので俺の本の知識は割と深く、また京も俺と同年代にしてはかなり難しい本も読んでいたりするので結構話が合うので、この読書談議を俺は結構楽しみにしている(時々京が読めないという感じを俺が教えることになったりするが)。
(……ただ少し気になることがあるんだよなぁ)
俺は図書館より少し遠い所に住んでいるがこの世界に転生してから信じられないほどの身体能力が身についていたので別に一人で来ていても不思議ではないが、京は普通の女の子のはず。なのに京の両親と出会ったことはこれまで一度もなかった。
(それにあの京の体型…。あれ少し痩せすぎじゃないか?)
まあ肉体の成長には個人差があるだろうし、まだ子供だからあれくらい普通なのかもしれないが……。
………まあこの話はここまでにしとくか。俺の考えすぎかもしれないし。
あ、そうそう。最近京の他にも友達ができたぞ。
名前は“源《みなもと》忠勝《ただかつ》”。
母さんのお店の常連に“宇佐美《うさみ》巨人《きょじん》”という人がいて、その人はこの川神市でなんでも屋を営んでいるのだが、最近そろそろ後継者が欲しいと孤児院からこの忠勝を引き取ったのだが、この子はなんというか…悪い子ではないが素直ではないというかいじっぱりな性格らしく、なかなか友達ができないのだとか。
そのことで悩んでいたところに、自分が常連にしていた店の副店長である母さんに息子、つまり俺がいるという話を聞き、ぜひ友達になってやってほしいと俺に紹介してきたのだ。
まあそれで会ってみたわけだが、これがまた気難しい性格で苦労したのだが、こちらは大人(精神的なだが)。焦らずじっくり話しかけ続けたらなんとか心を開いてくれて、今では「タツ」と呼ぶことまで許してくれている。
(そのうち京にも紹介するか。タツは気難しいが精神年齢は高い方だからな。同じように精神年齢が高い京とは相性は悪くないだろ)
さて。そんな俺とタツは現在とある場所へとやってきている。
「あら、シャオエン君に忠勝君。こんにちわ」
「こんにちわー」
「ども…」
ここは年齢四歳から六歳の年齢の生意気盛りのクソガキを、子供好きのお人よしどもが親の変わりに安月給で面倒をみる場所。
そう、幼稚園である。
「いや『そう、幼稚園である』じゃねえよ」
「…なんで俺が考えてることがわかったんだタツ」
「いや口にでてたし…」
「え”?」
そんなバカな…。
俺は真偽を確かめるために近くにいた、(なぜか呆れた顔をしていた)先生に話しかける。
「先生。今俺考えてること口にでてました?」
「ええ、最初からばっちりね…」
「そうですかぁ」
先生が言うのなら本当なんだろう。
今度から気をつけよう…。
「それじゃあ失礼します」
「待ちなさい」
確かめたいことを確かめ終わった俺は、もうここには用がないと自分のクラスに行こうとしたのだがなぜか先生に引き止められ、『もっと子供らしい物の考えをしなさい』という説教を受けた。
……解せぬ。
☆
☆
先生のお説教から解放され、自分のクラスの教室に入ると、新任である山田先生が園児たちに自分の言うことを聞かせようと四苦八苦していた。
「みんなー!今日は友達の似顔絵を書いてほしいので早く二人一組になってくださーい!」
先生は園児たちに向かって必死に呼びかけているが、園児たちはそんなこと知ったこっちゃねえとばかりに各々好き勝手なことばかりしていた。
「あわわ。どうしよう……」
言うことを聞かない園児たちに、先生は涙目になりながら困ったような顔を浮かべる。
(……はぁ、しょうがねえなぁ)
俺はため息を一つつき立ち上がると手をパンパンと打ち、未だ騒いでいるクラスメイトたちに向かって口を開いた。
「はい、ちゅうもーく!」
すると先ほどまで先生の言葉に見向きもしなかった園児たちの視線が一斉にこちらを向いた。
うん。ちゃんと聞こえてるみたいだな。
俺は園児たちの様子に満足げに笑みを浮かべながら話を続けた。
「お喋りすんのもいいけど先生困ってんだろぉー。早く二人一組になろうぜ!」
俺がそう言うとクラスの皆は俺の言うとおり、各々自分の好きな相手とペアを組むために動き出す。
え?なんで園児たちが先生の言うことは聞かないで俺の言うことは聞くのか?
ああ、なぜか知らないがちょうど俺がいる時に限って園児同士の揉め事とか事故とか起こったりして俺が巻き込まれたりしていたので、それを解決するために奔走していたらなんかいつの間にか懐かれてた。
なので先生の言うことを聞かない園児も、俺の言うことはよほど無茶なことじゃなければ聞くようになってしまった。まあそれは別にいのだがなぜかそのことを知った先生からは積極的に面倒事を任されるようにもなってしまった。
……解せぬ。
と、そんなことを考えていると遠慮がちに「あ、あの…」という声が聞こえてきたのでそちらに視線を向けると、そこには桃色の髪をした女の子が、こちらの様子を窺うように立っていた。
「?どうした甘粕?なんかようか?」
この少女の名前は甘粕真与。
俺と同じ、バラ組に所属する園児の一人だ。
俺の言葉に、甘粕はどこか落ち着かない様子で口を開いた
「ひゃ、ひゃい!いっしょに組んでもらってもいいでしゅか?はわわ、噛んじゃった」
…どこのはわわ軍師だお前はと心の中で突っ込んでしまった俺は悪くないと思う。
とりあえず未だおどおどと挙動不審な甘粕を落ち着かせようと口を開く。
「とりあえず落ち着け。俺なら大丈夫だから。よろしくな甘粕」
「は、はい。よろしくお願いします」
今日は二人一組になって相手の似顔絵を描く時間。
あまり自信はないが、下手なものを書くと相手に失礼なので、黙々と一所懸命に書いていると、
「シャオ君は凄いですね」
甘粕がそう話しかけてきた。
なんの話だ?
「なんの話だ?って顔してますね?」
「む。口にだしてたか?」
「ふふふ。顔にでてましたよ?」
そういって甘粕はほほ笑む。
む。ポーカーフェイス(笑)には自信があったんだが。
「シャオ君はすごいです。さっきも山田先生のことも助けてたし」
「あれはそうしないと、話しが進まなかったからだ」
「それだけじゃありません。シャオ君はいつも困っている人に手を差し伸べてました。シャオ君は皆に慕われてます」
だから皆、シャオ君の言うことは素直に聞くんですよ?と甘粕。
「…………」
むむむ。確かに懐かれている自覚はあったが、こんな風に直接言われるとむず痒い物があるな。
俺が内心羞恥心で悶えていると、
「それに比べて私は……」
先ほどとは一転して、甘粕は暗い表情で俯きながら悲しげな声でそんなことを言い出した。
なんだなんだ。どしたあ?
「どうしたんだ、いったい?何か嫌なことでもあったのか?」
だったら相談に乗るが…。
だが俺の予想は違っていたようで、甘粕はどこか寂しげに首を横にふる。
「いえ、ただ自分が情けなくて…。私は皆よりおねえさんなのに、頼りないし、誰かを助けようと思っても何もできない。さっきも先生を助けようと思っても、どうにもできませんでした」
そういえば、視界の隅でこいつがおろおろしているのを見た気がする。あれは先生を助けようとしてたのか。
「私はシャオ君みたいになれないのかなぁ…」
…なに言ってんだこいつ。
「そんなの当たり前じゃん」
「ッ!?」
だって、
「俺は俺、お前はお前だろ?」
「ふえ?」
そう言うと甘粕は、なんか涙目になって俺のことを不思議そうな目で見てきた。
なんで涙目?
「俺には俺、お前にはお前。それぞれの良さがある。だからそう悪い方向にばかり考えることないだろうに」
俺は知っている。幼稚園で転んでけがをした子がでたら、真っ先に近寄って絆創膏をあげていた子のことを。
落ち込んでいたらその子の話しを聞いて自分なりに慰めていた子のことを。
誰かが誰かに乱暴をしていたら体をはって止めていた子のことを。
そんなやさしい性格が、この子の良さだと思う。
……俺の場合は自分からやっているわけじゃなくて、ただ巻き込まれているだけだしな。
「甘粕は俺のことを凄いと言ったが、俺は甘粕のように自分から皆の役にたちたいと積極的に頑張るやつの方が凄いと思うぞ?」
「そ、そうかな…?」
褒められたこととが嬉しかったのか、甘粕は少し頬を赤くして俺の顔を見る。
「それに、今できないならがんばって、将来できるようになればいいしな」
「ッ!?そ、そうですよね!将来なら私もいろいろ成長していると思うし!!」
「あ、ああ…」
…なんだろう。甘粕がどんなに頑張ってもある分野では全く成長してない未来図が見えた気がしたんだが。気のせいだったんだろうか?
「さ、そんなことよりさっさと描いちゃおうぜ?いい加減時間が無くなってきた」
「そ、そうですね!」
ちなみに、俺が描いた絵を見て、「シャオ君も苦手なことがあるんですね…」と、甘粕が自分に少し自信を持つようになる。
…………解せぬ。
後書き
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