ヘタリア大帝国
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TURN52 田中の苦境その十
「だからじゃ。ひとみちゃんは提督としてもやっていけるし」
「そしてですね」
「隠し球もある。安心して行って来るのじゃ」
「では」
古賀は山本の言葉に頷く。そうしてだった。
山本に柴神、伊藤達僅かな面々がインド洋に向かい太平洋軍の戦力はハワイ方面にその殆どが向かっていた、運命の決戦が今はじまろうとしていた。
そしてその戦いについてカテーリンはロシアにこう話していた。
「これはいいことです」
「日本君とアメリカ君が潰し合ってくれるね」
「アメリカは敵です」
カテーリンは言い切る。話は教室そのままの場所で机を挟んで行なわれているがそのまま面談の様だった。
その中でカテーリンはロシアに対して言ったのである。
「あの国も中帝国もです」
「資産主義だからね」
「しかも中帝国は君主制です。王様は駄目です」
カテーリンは君主制も大嫌いだった。それは何故かというと。
「皆平等なのに一人だけ威張っている状況はよくないです」
「そうだよね。世界の皆が同じだからね」
「国家も人間も平等なのです」
カテーリンはとにかく平等に五月蝿い。全てはそこからはじまるのが彼女なのだ。
そしてその平等主義からこうも言う。
「だから日本もです」
「敵だよね」
「連合国同士でも敵なのです。むしろ」
「むしろ?」
「ドクツやイタリンの方がましです」
カテーリンの考えではそうなる。実際に真剣そのものの顔でロシアに話す。
「枢軸ですがそれでもです」
「同じ枢軸でも日本帝国は違うんだ」
「イタリンとドクツはファンシズムで資産主義とは少し違う経済システムです」
「うん、共有主義に近いかな」
ロシアも彼等の経済についてはこう分析して話す。
「そうした感じかな」
「資本家はいますが基本的に共有主義的です」
「国家が経済を完全にコントロールしているからね」
「後は貨幣を全廃するだけです」
「そうだね。それに階級もないから」
これもドクツ、イタリン、ソビエトに共通することだ。
「何もかもがね」
「はい、ないのです」
カテーリンはこのことも指摘する。
「全くです」
「それぞれの総統なり統領なりの下に全部同じだね」
「指導者は必要なのです」
カテーリンは強い口調で言う。
「皆を教えて導く誰かが」
「カテーリンさんみたいにね」
「私は皆の為に頑張ります」
少なくともカテーリンに悪意はない。完全に善意と彼女の正義感から考えそして言っているのである。その証拠に表情に曇りはない。
「そうした意味であの二国とは私もです」
「陣営は違っても」
「親近感は感じます。おそらくドクツとは戦争になるでしょうが」
「ドクツとは間違いないね」
ロシアもカテーリンもレーティアが自著で当方殖民について書いていることを知っている、それでこう言うのである。
「近いうちにね」
「戦争になります、ですが」
「それでもだよね」
「ドクツ、イタリンは他の連合国や日本よりはましです」
「厳密には資産主義じゃないから」
「同じ枢軸陣営でも日本は違います」
カテーリンは目を顰めさせて日本についてはこう言及した。
「資産主義でしかもです」
「帝がいるからね」
「あんな国は許せないです」
カテーリンはぷりぷりとした顔になっている。それで右手を拳にしてそのうえで振り回してさえいる。
「必ずです」
「倒すんだね」
「ドクツとの戦いが終わればまず日本を懲らしめて」
「それからだね」
「太平洋の皆を共有主義にします」
カテーリンはもうドクツとの戦いを念頭に置いていた。そのうえで日本との戦いを見ていた。
だからこそ太平洋についてはこう言うのである。
「ガメリカも中帝国もお仕置きします」
「僕もアメリカ君と中国君は好きじゃないしね」
ロシアもロシアたる由縁を出しにこやかだが威圧感のあるオーラを漂わせていう。
「ちょっとぷちっとやっちゃっていいよね」
「それが祖国君のいいところなのです」
カテーリンもそのロシアの言葉に微笑んで応える。
「では一緒に頑張るのです」
「うん、そうしようね」
ロシアは普段の無邪気な笑みに戻る。しかしその笑みを見て二人を離れた場所で立って見るバルト三国の面々は暗い顔でひそひそと話した。
「やっぱり戦争になりそうだね」
「ですよね。カテーリンさんもロシアさんもやる気満々です」
「ドイツさんだけでなく太平洋全域に攻め込むんだね」
三人にとってはいい話ではなかった。ソビエトは世界を共有主義にすべき彼等の戦いを行なおうとしていた。
TURN52 完
2012・9・12
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