ソードアート・オンライン stylish・story
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第八話 便利屋。その名も・・・
「やっとだ・・・やっとだぜ」
シュウは第50層にある町『アルゲード』の隅にある一件の小さな家の前に立っていた。
「やっと。俺のやりたかった事・・・便利屋を始められるぜ!!ここまで長かったよな」
そう。シュウが前からやりたがっていた事とは、他人から依頼を受けて、それを達成し報酬を貰う・・・便利屋だった。シュウのレベルは今では90に達し、最前線は55層。十分に、何でもこなせる程のレベルを得ていた。そして肝心な便利屋の名前は・・・
「便利屋【デビルメイクライ】・・・活動開始だ!!」
「やっとお前も自分のホームを持てたみてぇだな?シュウ」
シュウが一人でガッツポーズをしていると少し体がごっついハゲの黒人の男性・・・エギルが近寄ってきた。
「エギル!そう言うお前こそ、商売してて結構充実してんだろう?」
「まあな。それよりお前は攻略組みには本当に参加しねぇのか?」
「しねぇよ。ある意味、面倒だぜ。俺はここで依頼をこなして、ノンビリしている方が性に合うってモンだ。んでも、気が向いたら参加しなくもねぇけどな」
「お前って本当にフリーダムだよな?その性格・・・ある意味羨ましいぜ。それで俺に用があったんじゃねぇのか?シュウ」
「おっとそうだった。ちょっと来てくれねぇか?」
シュウはエギルを連れて、家の中に入った。
部屋の中・・・応接室をそれになりに広く。そしてソファーなどの装飾品も揃えている様だった。
「お前ってチャラチャラした割にちゃんとした設備を整えてるんだな?」
「外はボロなんだけどよ。内装はちゃんとした方が良いって思っただけのこった。んで、頼みってのはこれだ」
シュウはエギルに一枚の紙のようなものを渡す。
それにはシュウの便利屋【デビルメイクライ】の紹介・内容・注意事項が詳細に書かれていた。要するに宣伝紙だった。それを見たエギルは、なるほどと思い、自分の考えを口にし始める。
「お前の意図はこうだろう?俺の商売店にこの宣伝紙を置いて、お前の事を広めて欲しいって事だろう?」
「流石商売人、話が早くて助かるぜ!勿論タダとは言わねぇ。注意事項に反していないなら、お前のどんな依頼でも一つだけこなしてやるぜ?どうだ?悪ぃ話じゃねぇと思うけどな?」
商売は利益を得るならそれなりの行動を示さなくてはならない。シュウはそれを考えた後にエギルにこの商談を持ち込んでいた。エギルは微笑を浮べると・・・
「オーケー。分かった。ならお前に一つ依頼と行こうじゃねぇか?」
「そうこないとな!んで・・・内容は?」
「第55層の東に【霊峰】ってフィールドがあるのは知ってるよな?そこの頂上付近に生息する山の主、『カイザー・ユニコーン』ってモンスターの角が万能薬『エリクサー』の素材で一つで、それから10個のエリクサーを作る事が出来るだけどよ?そのモンスターがスゲェ強くてな?討伐しようとした奴らは返り討ちになったらしいんだ」
「要するに、そのモンスターを討伐してその角を手に入れろって言いたいのか?」
「ご明察だ。これを達成してくれたらその腕を見込んで、お前の事を広めてやるよ?期日は問わねえよ」
それを聞いたシュウはニヤリと笑い・・・自分の机の後ろの壁に飾ってあったリベリオンを取り外し、背中に担ぐ。
「商談成立だ」
「楽しみにしてるぜ?シュウ。じゃあ俺は自分の店に戻るからよ?」
そう言うとエギルは自分の店に戻って行った。そしてシュウは早速【霊峰】に向かった。これがシュウの・・・デビルメイクライの初仕事だった。
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「ぶぇっくしょい!!さ、寒ぃぃぃぃ!!!」
シュウは言われるがままに霊峰に辿り着いたが、霊峰は雪山だった。と言うより麓は変わらなかったが登り始めると気候が一変し、極寒がシュウに襲い掛かった。
「Shit(マズッたぜ)!霊峰が雪山って事を考慮に入れてなかったぜ!!コート着てんのに何て寒さだ!!戻るにしても無駄に転移結晶も使いたくねぇし、自分の足で戻るとなるとまた時間を喰っちまう。仕方ねえ・・・進むか。それに・・・」
シュウは背負っていたリベリオンを引き抜き、右肩に担ぐ。
すると地鳴り始め、地面から身体の至る所に氷塊をつけているトカゲのような全長3Mはあるモンスター【ブリザード・リザード】が5~6匹、飛び出てきた。
「良い運動が出来そうだしな!!C'mon(来いよ)!!Let's rock(遊ぼうぜ)!!!」
シュウがリザード達を挑発すると、リザード達が一斉にシュウに飛び掛る。シュウは紙一重でかわして行き、リベリオンで斬り裂いて行きリザードをポリゴンへと誘った。シュウのレベルでは最前線のモンスターでも腕試しにはならなかったみたいだ。
「Hu・・・Too easy(はっ・・・余裕だな)。こんなモンじゃウォーミングアップにもならないぜ?う~~。このままじゃ、凍え死んじまうぜ。早ぇとこ、お目当てのカイザー・ユニコーンとやらを見つけるとすっか」
シュウは身体を擦りながら、頂上を目指す。その道中に他のモンスターにも遭遇したが瞬殺だったみたいだ。
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「ここが頂上か?」
霊峰を登り始めて、1時間弱。シュウは頂上と思われる広い場所に到着した。しかしそこにはカイザー・ユニコーンらしき姿は見えなかった。
「ここに居んのか?それともここじゃねぇ?んでもここ以外に広い場所なんかなかったし・・・っ!!」シュウが何かに気付き、その場を飛び退くと落雷が落ちてきた。その威力は地面を抉る程の威力だった。そして次の瞬間、泣き声を上げながらシュウの前に4Mはある白く美しい一角獣が降り立った。そしてその淡い蒼角はユニコーンをさらに引き立てていた。
「Wow!Beautiful!!(わぉ!美しいぜ!!)。正直倒すのを躊躇っちまうぜ。気絶させて角だけ持って帰りてぇんだけど・・・アイテムを入手するには完全に倒すしかねぇからな」
そう言うとシュウはリベリオンを引き抜き、右肩に担ぐ。
「んじゃ・・・始めるか!!」
シュウはまず【ステンィガー】で距離を縮め、ユニコーンの首に向かって強力な突きを放とうとしたが・・・
「っ!?」
シュウの身体が一瞬だが、止まったように動かなくなった。そしてその隙にユニコーンは地面を蹴って、それを避ける。
「何が起きた?俺のソードスキルが当たる瞬間、身体が止まっちまった。奴の特殊能力か?なら・・・少し試してみるか」
シュウはリベリオンからルシフェルに替え、鉄剣を作り出すと片手に一本ずつ剣を持ち、一本は外し、そしてもう一本はユニコーンの目の前に投げる。
そしてそれでさっきの正体が明らかになった。外した剣はそのまま地面に突き刺さるが、目の前に迫っていた剣はユニコーンの前で一瞬だが、動きを止めてしまう。そしてユニコーンが避けた瞬間に動き出し、地面に刺さる。
「なるほど。あいつの能力は、視界に存在している物の時間を任意に一瞬だけ、止める事が出来るのか。なら・・・まずはアイツの視界を奪う事からだな?」
するとシュウはルシフェルを消すと両手には黒色の篭手と両足には獣を思わせる鉄製のブーツを身に付ける。
これがシュウの最終武器【べオウルフ】。攻撃範囲は狭い代わりに今まで手に入れてきた武器の中で最強の攻撃力を誇っている。
「こいつを出して戦うのはお前が初めてだぜ?」
シュウが格闘ポーズを取るとユニコーンが雷を纏いながら、突進してきた。シュウはそれを避け様とするが、動きを止められ、直撃とまでは至らなかったが、少し掠ってしまった。それだけでHPの一割近くを持っていかれた。
「Wow!!流石幾人ものプレイヤーを退けただけの事はあるぜ!!んでもここまでだぜ?」
シュウは体勢を立て直し、その場に立ち上がると右手に力を溜め始めた。そして一定以上の力を溜めると・・・
「Crush and bash(砕け散れ)!!!」地面に向かって右の鉄拳を打ち込むと地面が割れ、その衝撃がユニコーンを襲う。そして周りは煙で視界が奪われていた。当然ユニコーンも目標を失っていた。シュウの目的は視界を奪い、隙を作る事。この一瞬の隙だけで十分だった。
「・・・Catch this(喰らえ)!!」
シュウの声が響くとユニコーンの腹に鉄拳が打ち込まれ、そのまま・・・
「Rising dragon(昇竜拳)!!!」
強烈なアッパーカットを直撃させる。そのまま空中を舞ったユニコーンは地面に倒れ伏し、砕けるようにポリゴンと化した。シュウにも視界は悪かったが、アイコンがユニコーンの位置を示していたようだった。これがリアルとゲームとの大きな違いだった。そしてアイテム入手欄には目的の【幻獣の蒼角】があった。そしてそれを取り出し、手に取る。
「Thank you(ありがとう)。お前のお陰で救える命が増えたぜ?お前の角・・・大切に使わせて貰うぜ」
シュウは蒼角にそう告げるとデータに戻し、霊峰を下り始めた。
~~~~~~~~~~~~
「おぉ!!シュウ。持ってきてくれたのか!?」
「ああ。これが依頼の品だぜ?」
シュウは同じ50層にあるエギルの店に赴き、依頼完了の報告を行った。
「間違いねぇ!本物だ!じゃあ約束通り、お前の宣伝。やっておいてやるよ」
「恩に着るぜ、エギル。んじゃ俺は自分ん家に戻るぜ」
シュウはエギルに別れを告げ、ホームに戻るとリベリオンを壁に掛けなおし、テーブルに足を乗せながら、自分愛用のイスにもたれ掛かっていた。
「これで良い宣伝にはなったと思うが、まあ、すぐに客は来ないだろうよ」
シュウがそう思った矢先、出入口のドア開くと白と赤の装備をした集団が応接室になだれこんできたのだった。
後書き
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