ソードアート・オンライン stylish・story
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第六話 ビーストテイマーの少女
ギルドとの余興が終わり、数ヵ月後。キリトは入っていたギルドから脱退した。あのピンチが切り抜けた後、キリトはシュウと一緒にギルドのホームにメンバーを集めて、自分のレベルや素性を語った。そしてビーターと関わらない方が良いとメンバーに言い聞かせたみたいだった。
しかしメンバー達は驚きの表情を浮べていたが、キリトを拒む者はいなかった。今まで助けてくれた事や一緒に居てくれた事に感謝の言葉と念を持っていたみたいだった。そしてまた何時か一緒に冒険してくれるか、などキリトに信頼を寄せていた。キリトはその事に嬉し涙を流していた。
それは心のモヤが取れて行った事を思わせるものだった。
そしてシュウはギルドメンバーに『この世界では無茶をやった奴から消えていく。ゆっくりじっくりレベルを上げて行って欲しい』と言い聞かせた。それにはメンバー全員、あの時の経験を省みて、了解したみたいだった。
「何がともあれ、良かったな?キリト。お前に信頼を寄せてくれてるみたいじゃねえか」
「ああ。そのためにももっと強くなって、早くこんな事を終わらせないと!!」
「メンバーにも言ったが、無茶だけはすんじゃねぇぞ?俺はお前が消えるのは勘弁だからよ?何てたって、SAOの初めてのダチなんだからよ?頼むぜ?」
「分かってるさ」
今日はキリトとシュウは夜の第35層・迷いの森でレベル上げ兼金稼ぎをしていた。夜にいするのはモンスターのレベルが上がり、それなりに歯ごたえのあるモンスターになるからである。
ここであのピンチを救ったシュウの新武器、無尽剣『ルシフェル』の内容を説明する。ルシフェルは文字通り、鉄製の赤光りする剣を無限に作り出すことの出来る武器・・・肩当てだ。作られた剣は白兵戦や投擲にも使うことの出来る代物だった。そして任意に起爆させる事も出来る起爆剣でその威力は凄まじい程だった。
「でもあの・・・ルシフェルだっけ?あんな強力な武器、何処で手に入れたんだ?シュウ」
「それは企業秘密って事で。悪ぃな、キリト。さぁ~てっと、これで俺も本業を開始できそうだぜ!」
「本業?それって・・・」
キリトがシュウに尋ねようとすると・・・
「キャァァァァ!!!」
「「っ!?」」
二人の近くで悲鳴らしきものが聞こえてきた。
「シュウ!!」
「分かってる!こっちだ!!」
二人は尻に鞭打つように、走り出した。そして見たものは三体の類人猿のようなモンスターが一人の少女を取り囲み、持っていた棍棒で殴りかかろうとしていた。キリトは持っていた黒い長剣で、シュウはリベリオンで薙ぎ払い、モンスターを四散させた。そしてそれを倒したキリトとシュウを少女は涙を流しながらじっと見ていた。そして少女の近くに落ちていた白い羽を拾い上げ、再び嗚咽を出し始める。
「ピナ・・・私を一人にしないで・・・ピナァァ!!」
それを見ていたキリトとシュウはそれぞれの得物を背中にしまうとその少女に近寄る。羽を見たシュウは疑問を少女に問いかける。
「・・・お嬢さんは『ビーストテイマー』なのか?そして・・・その羽は」
「はい・・・私の大事な・・・」
「すまなかった。君の大切な友達・・・助けられなかった」
キリトがシュウの代わりに謝罪するが、それを少女は首を横に振る。
「いえ。私が悪いんです。一人で森を抜けられるって、思い上がって・・・助けてくれて、ありがとうございます」
その少女にシュウは笑顔を見せながら近寄り、膝を付く。
「その羽にはアイテム名がないか見てもらえるかい?」
シュウに促され、少女はその羽の名前を確認すると『ピナの心』と言う名前があった。それを見たシュウはまだ希望があることを伝える。
「大丈夫だ、お嬢さん。心が残っているなら、まだ蘇生の可能性がある!だよな?キリト」
「ああ!!」
「ほ、本当ですか?」
「確か、第47層の南にある『思い出の丘』と言う場所の頂上に使い魔蘇生用のフラワーアイテムがあると聞いた事がある」
シュウの言葉に少女は笑顔を零すが47層と言う言葉に再び顔を曇らせる。そしてキリトが続ける。
「俺達が行ってきても良いんだけど、主人が行かないと咲かないらしいんだ」
「情報だけでも嬉しいです!頑張ってレベル上げすれば何時かきっと・・・」
「これはあまり言いたくなかったんだが・・・使い魔を蘇生できる時間は死んでから3日間だけだ。それ以降は不可能になってしまうんだ、お嬢さん」
「そんな・・・ピナ・・・」
少女は希望を失いかけてした。それもその筈だ少女のレベルは40前半、とても3日では47層に行く事は無理に等しかった。しかしキリトとシュウは諦めていなかった。
「大丈夫だ。まだ3日もある」
「だな。可能性はゼロじゃないぜ」
「えっ?」
そう言うとキリトとシュウはお互いのアイテム欄を開き、その少女が装備できる最高の装備を転送した。
「この装備ならレベルを少し底上げできる」
「そして俺とキリトが一緒に行けば、何とかなるだろうな」
そこまでしてくれるキリトとシュウが少女には疑問な点だった。
「あの・・・どうしてそこまでしてくれんですか?」
「「うっ・・・」」
その言葉に二人は言葉を詰まらせる。そして顔を見合わせ、頭を掻きながらキリトが少女に尋ねる。
「笑わないって約束してくれるなら、教える」
「笑いません!」
「・・・君が妹に似ているから」
そしてシュウは頬を掻きながら・・・
「俺も似たようなモンだな。危なっかしい奴は放って置けないって言うか・・・何ていうか・・・」
二人の意外過ぎた答えに少女は・・・
「ぷっ・・・えへへ、あはは!!」
と笑い声を張り上げた。それには二人も顔を背けてしまう。
「笑わないって約束したじゃねぇか?お嬢さん」
「ゴメンなさい。つい・・・」
しかしその顔には先程の暗い表情は無く、すっきりした表情になっていた。
「それに・・・理由はそれだけじゃないんだけどな」
キリトは少し真剣な表情で話す。どうやらキリトはキリトで何かしらの用があるみたいだった。
「え?・・・あっ!!私、シリカって言います」
「俺はシュウだ。腕には少し自信があっから頼ってくれて良いぜ?シリカ」
「そして俺はキリト。これからしばらくの間、よろしくな?」
三人は握手を交わし、35層の町『ミーシェ』に向かった。そしてシリカは行く行く通行人・・・特に男性プレイヤーから声を掛けれ、パーティ勧誘をされていたがキリトとシュウの間に入り、それぞれの片腕にしがみ付き、断っていた。そしてキリトとシュウは嫉妬的な目で見られていたみたいだ。
そして町並みを歩いていると紅髪の女性がシリカに話しかけてきたが、シリカは顔を曇らせる。
「ロ、ロザリアさん・・・」
「あら?あのトカゲどうしたの?もしかして・・・」
「おい・・・」
女性が言い切る前にシュウが少しドスを効かせて止める。幾ら自分のせいで使い魔が死んだとは言っても、言い方というものがあった。それを考慮していないロザリアにシュウはキレそうになったが抑えた。
「大丈夫です。シュウさん。絶対に諦めませんから!!」
「へえ・・・って言う事は思い出の丘に行くのかしら?でもアンタのレベルで攻略できるのかしら?」
「そ、それは・・・」
顔を曇らせているシリカにキリトとシュウが前に出る。
「出来るさ」
「だな。そんなに難易度が高いって訳じゃねぇし。何とかなるってヤツだ」
「アンタ達もその子にたらし込まれたのかい?見かけじゃ、そんなに強くなさそうだけどねぇ?」
三人はロザリアの言葉を無視して、宿屋に向かった。
そして夕食を取っているとロザリアの言動に疑問を抱えていたシリカにキリトがMMOでは悪人を演じるプレイヤーが居る事と話し、そしてプレイヤーキル、通称『PK』。つまり殺人をするプレイヤーも居る事を言い聞かせた。しかしSAOでは話が別だった。死んでしまえば本当に死ぬデスゲームと化したのだから。キリトとシュウはその事に腹が立ち始め、持っていたコップを圧迫し始めた。
「このゲームは・・・遊びじゃないんだ!!」
「今はそんなことしてるヒマなんてねぇのによ・・・」
シュウにいたっては力の強さにヒビが入り始めていた。大剣のリベリオンを片手で扱える程なのでそれは当たり前だろう。それを見ていたシリカが二人を慰め始める。
「だ、大丈夫です!!キリトさんとシュウさんは優しい人です!!だからそんなに思い詰めないで下さい!!」
シリカの必死の慰めにキリトとシュウは笑顔で返す。シュウに至っては頭を優しく撫でる。
「逆に俺達が慰められちゃったな」
「サンキュー、シリカ」
シリカは自分の発言と二人の笑顔を見ていくと段々、赤面していった。そしてその晩は47層の説明を終えた後、ゆっくりと休んだ。
後書き
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