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ディストピア

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第一章

                ディストピア
 創作の中で最悪な国を書いてみよう、サラリーマンをしながらウェブ小説を書いている逢坂健は思った。面長で小さな目に太い眉を持ち黒髪をショートにしている。背は一七一位で痩せた身体を持っている。
 それでだ、色々と調べて考えて書いたのが。
「一見楽園なんだよ」
「その国はか」
「ああ、欲しいものは何でもあってな」
 そうしてとだ、同僚で彼がウェブ小説を書いていることを知っている畑中博夫に話した。畑中は一七二位の背で長方形の顔で黒髪をスポーツ刈りにしていて明るい顔立ちである。ジム通いが趣味で引き締まった身体つきである。
「手に入れられてサービスも充実していて」
「一見いい国か」
「何でも言えてな」
「言論の自由もあるんだな」
「選挙もあってな」
「けれどその実はだな」
「ああ、もう何もかもがな」 
 二人の勤務先のスターバックスで一緒にコーヒーを飲みながら話す。
「管理されていて言論もな」
「実はか」
「国のあちこちにあるサブリミナルで言わされている」
「無意識のうちにか」
「そうした国家なんだよ」
「つまり造りものか」
「全部な」
 それこそというのだ。
「一見善意の国家元首が国家と国民の為に奉仕している国家で」
「その実は独裁者なんだな」
「ああ、そうした国家をな」
「考えたか」
「それが敵だよ」
「何かそれだとな」
 畑中は逢坂の話をここまで聞いて言った。
「かえってありきたりだな」
「そうか?」
「だから逆を書かないか」
 こう提案するのだった。
「善意の仮面を被った独裁者じゃなくてな」
「ガチの独裁者か」
「そいつが支配する国だよ」
「じゃあ善意じゃなくてな」
 それならとだ、逢坂は畑中に考える顔になって話した。
「自分のことしか考えなくて性犯罪でも恫喝でも何でもやるな」
「屑だな」
「偏見の塊で私利私欲しかなくて息をするみたいに嘘を言って下品で口を開けば罵倒と人格攻撃の」
「最低野郎だな」
「ああ、人相も悪くてな」
「そんな奴が独裁者か」
「周りはイエスマンばかりで私怨を忘れない、無法者で法律を自分の都合よく解釈して権力を濫用する」
 そうしたというのだ。
「しかも実は政治的には無能で教養もない、けれど国民はそんな奴のパフォーマンスに痺れて支持する」
「そんな国にするか」
「ああ、どうだ?」
「そこまで突き抜けたらいいな」
 畑中は笑って応えた。 
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