DDT
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第一章
DDT
DDTと聞いてだ、八条学園高等部農業科の二年であるマサカ=ボングケニアから来ている彼女は言った。黒い縮れた髪に黒い目に黒い肌の小柄な少女である。
「あれよね、殺虫剤よね」
「そう思うでしょ」
答えた彼女にクラスメイトの長谷川真帆が応えた。面長で優しい顔立ちで黒髪をロングにしたマサカと同じ位の背のすらりとしたスタイルの少女である。二人とも今は授業で畑に出ていて作業服姿である。
「やっぱり」
「違うの」
「確かに殺虫剤でもあるけれど」
DDTはというのだ。
「他にもあるのよ」
「そうなの」
「それ知りたい?」
「興味があるものはね」
マサカはすぐに答えた。
「何でも知りたいわ」
「あんたそうした性格よね」
「好奇心旺盛なのよ」
自分で言った。
「本当にね」
「だからよね」
「もう一つのDDTが何か」
それをというのだ。
「知りたいわ」
「それじゃあ放課後ね」
真帆はマサカにそれならと応えた。
「部活前に付き合って」
「それじゃあね」
「私は卓球部でね」
「私はハンドボール部でね」
「お互い体育館で部活するからね」
「ランニングはグラウンドだけれどね」
そこで行うがというのだ。
「そうよね」
「その体育館の傍に行くから」
だからだというのだ。
「すぐにわかってね」
「すぐに部活行けるのね」
「だから丁度いいわ」
「それじゃあね」
マサカはそれならと応えてだった。
そうして放課後真帆についていった、連れて行かれたのはプロレス部の部室でそこに入るとリングがあった。
そのリングを見てだ、マサカは真帆に言った。
「プロレス?」
「そうよ」
真帆は笑顔で答えた。
「実はね」
「プロレスって」
「あんた知らないわね」
「実はね」
真帆に率直に答えた。
「これまでね」
「興味なかったわね」
「格闘技自体にね」
プロレスに限らずというのだ。
「そうよ」
「そうだったわね」
「だからね」
「プロレスも知らないわね」
「全然ね、ケニアではね」
祖国ではというのだ。
「プロレスやってないわ」
「そうなの」
「聞いたことないわ」
「あんた中学から留学しているけれど」
「一年の入学式からね」
「それでもなの」
「ええ」
実際にというのだ。
「プロレスはね」
「ケニアではないの」
「本当に聞いたことないわ」
真帆に答えた。
「全くね」
「だから知らないのね」
「どんな技があるのかも」
「そう、技なのよ」
真帆は笑って話した。
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