スローボールも武器

「パームやサークルチェンジもね」
「あるな」
「それでストレートが遅い人も」
「勝ってるだろ」
「ええと、昔オリックスにいて」　
　千佳はここで自分の頭の中のデータを検索した。
「阪神にもいた」
「星野投手だな」
「あの人がそうだったわね」
「あの人ストレートは一二〇キロ代でな」
「滅茶苦茶遅いわね」
「プロとしてはな、それでな」　
　兄は妹にさらに話した。
「スローカーブが武器でな」
「余計に遅いわね」
「その遅さがあってな」　
　投げるボールのというのだ。
「活躍したんだよ」
「速さとは正反対で」
「阪神では思う様に勝てなかったよ」
　寿はこうも話した。
「けれどな」
「それでもだったのね」
「それは暗黒時代だったからな」
　阪神のというのだ。
「あの時はもう誰でもな」
「勝てなかったわね」
「だから仕方ないんだ」　
　阪神時代思う様に勝てずともというのだ。
「星野投手もな、けれどな」
「ボールが遅くてもいいのね」
「それはそれでな、もっと言えば」
　寿は話を続けた。
「速いボールと遅いボールを混ぜて投げるんだ」
「ああ、緩急つけるのね」
「そうして投げたらな」
　そうすればというのだ。
「もっといいな」
「緩急ね」
「投球術の一つだな」
　それになるというのだ。
「これは」
「それで速球投げてスローボールやチェンジアップも投げる」
「そうしたらな」
「強いわね」
「そうだよ、速球だけじゃないんだ」
　確かな声で言った。
「ピッチングは」
「遅いボールも武器で」
「緩急もつけるんだよ」
「それでも通用するのね」
「そうだよ、確かに佐々木投手のボールは速くて」
　そうであってというのだ。
「メジャーでも通用するだろうね」
「日本だけじゃなくて」
「けれどね」　
　それでもというのだ。
「それだけじゃないことは」
「私も覚えておくことね」
「星野投手もそうだったし」
　寿はさらに言った。
「阪神だと山本和行投手も」
「左のストッパーだったわね」
「あの人も緩急を使って」
　そうしてというのだ。
「抑えていたなよ」
「そう言われるとカープも考えないと駄目ね」
「そっちは今投手陣が頼りじゃないか」
　今度はチーム事情の話になった。