社長の学歴
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第一章
社長の学歴
ホンダの創業者本田宗一郎を尊敬している、大学生で経済学を学んでいる清水徳治はいつもそう言っていた。きりっとした細面で黒髪を短くしている長身の痩せた青年だ。
それで彼の本もよく読んでいるが。
彼の友人でインドネシアから留学してきているアハマド=スマラタ褐色の肌に痩せた彫のある顔で癖のある黒髪と一七〇位の痩せた彼は言った。
「何処の大学だろうな、あの人」
「いや、本田さん高卒だぞ」
清水はスマラタにすぐに答えた、講義がはじまる前の講堂で話した。
「あの人はな」
「えっ、高卒かよ」
「そうだよ」
こう話した。
「いい大学出たと思ってたか」
「ああ、東大とかな」
スマラタは流暢な日本語で答えた。
「一代であれだけの会社にしたからな」
「いや、それ言ったらな」
どうかとだ、清水は返した。
「松下幸之助さんだってな」
「ああ、あの人もな」
「あの人なんかもうな」
それこそというのだ。
「丁稚からはじまって」
「大学なんてな」
「今から見たらまともな教育をな」
それをというのだ。
「受けてないからな」
「そうだな」
「だからな」
それでというのだ。
「二人共学歴はな」
「ないか」
「そうだよ」
「学歴なくてもな、ほらうちもな」
「インドネシアもか」
「やっぱり大学出てるとな」
それならというのだ。
「何かと有利だしな」
「日本でもだよ」
「もっと言えば台湾なんてな」
この国はというと。
「もっとな」
「大学どころかな」
清水もこの国について言った。
「大学院までだからな」
「あそこは特に凄いな」
「そんな風だな、けれどな」
「その人達はか」
「ああ、本当にな」
「高卒とかか」
「そうだよ、そりゃいい大学出てる人もいるよ」
清水はこうした人達の話もした。
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