| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

外道戦記ワーストSEED

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

十三話 流星になった漢達(前編)

 
前書き
それは地球を護った、瞬く星のお話 

 
さて、次のお話に行く前に、一つお話をしないといけないことがある。

そう、この世界でのザフトと地球連合は、今、全体的な戦局ではどうなっているか、ということである。

主人公の活躍する場面を多く目にする(当たり前の話だが)読者視点では多くの勝利を重ねていても、実は彼らが活躍している場面以外では、多くの場合、負け越している。

それはそうだ。正史では圧倒的多数の連合に対し、勝ち越していたザフトである。

たかが数機の、『主人公達だけの』ガンダムでは、全体的な戦局は覆せない。

無論、ガンダムという概念を先に連合にもたらし、ニュートロンジャマーの妨害で紆余曲折あれど、早期に対モビルスーツの準備ができた功績は大きい。

だが、それら全てを合わせても、ようやっと『0.5』という所である。

……だが、前の言葉を翻すようだが、正史での戦力差が8:2とするなら、今の戦力差は7:3まで盛り返している。

では、残りの『0.5』は誰が創り出したのか。

この一話は、その立役者。

一瞬輝き、消えていった流星達のお話。

コーディネーターは言う。

地球連合は数だけ多い烏合の集だと。

勿論、『優秀』とデザインされ、更に戦闘に向いていると判断されたザフトの身体能力や思考速度の平均値、所謂戦闘力は、地球連合の現場の人員と比較すると大きく上回るのは確かだ。

だが、それだけ抜き取って、連合の強みは、『数が多いこと』だけだと言うのは誤りである。

『三人よれば文殊の知恵』というが、多くの知識、知恵を集めて状況を打開できる事は非常に多い。

GAT-X053 カタフラクト

『この世界で初めて、ナチュラルだけで運用できた』機体

歴史で後に『絶滅戦争』と呼ばれたナチュラルとコーディネーターの戦争が後始末も含め全て終わったあと、連合のアーカイブにそっと記された、瞬きの間存在した『異形』のガンダム。

連合のGAT計画の達成と量産型の製造まで、『ナチュラル』だけの戦線を支えたガンダムである。

その名と身体が、どれほど血に塗れようとも……




当時華々しくメディアを騒がせていた『大西洋の死神』率いる強化人間とコーディネーターの部隊。

と書けば簡単だが、実際に運用するとなると酷く難しい。

連合に多数いるコーディネーター排斥派閥からの牽制を躱すのは勿論、ナチュラルしか上に行けない連合の構造上、ナチュラルが部下の遺伝子的に下駄を履かされているコーディネーターを運用するという、ナチュラルとコーディネーターの根源的な問題を無視した運用。

まず、ここで8割ふるいから落とされる。

更に、そこから良好な関係を築き、さらにニュートロンジャマーの著しい電波障害の性質上、かなり近い場所で指揮を取らねばならない問題をクリアする必要がある。

ここで九分九厘落ちる。実際、公式に戦果を上げて更に運用出来たのはジョンの部隊のみだった。

裏切りのリスク、またブルーコスモスに睨まれるリスクを考えると、殆どの部隊は『ナチュラル』オンリーの部隊しか運用できないのだ。

え、一昔前の督戦隊のように、家族人質にして後ろで銃構えて脅せば良い?

それは2つの理由でできない。

1つ目、オーブやジャンク連合など、コーディネーター、ナチュラル関わらず人権問題に物申せる勢力が現存しているから地球上のみに限定しても、情報統制しきれない。

2つ目、具体的に自分達をコーディネーターが裏切った時の粛清ってどうやるの?

ナチュラルがモビルスーツを運用できない以上、コーディネーターの搭乗モビルスーツに対してナチュラルが撃破目的で銃口を向けられるのは鈍重な艦艇の銃口か、メビウスやスカイグラスパーのみ。

だが、上記全て世界樹戦争含む各地の戦争でジンの速さに付いてこれず撃墜された。つまりは、『監督役として不適切』

現実でも一部実現している、外側から電波通信により機体に干渉するという案も、ニュートロンジャマーの副産物の電波障害により実現不可。

本人に拷問、脅迫?やっても良いがその後載せたコーディネーターが裏切らない保証はゼロ。

武装など使わなくても、20メートルの金属製の巨人の腕でも振るえば、乗った車ごとミンチに出来る巨人に今から乗る相手に脅迫や拷問!

なお、一定以上傷つけたり、下手に薬品など使えば当然味方側のコーディネーターは容易く撃墜され、プラントのコーディネーターに諸共殺されるだけ。

さあ、誰かやってみよう!

勿論、誰も居なかった。




連合も、ブルーコスモスの思想優先でただ指を咥えて連合の敗北をながめてた訳では無い。

アズラエル財閥の仲立ちにより、コーディネーターのパイロットごと『クォーターガンダ厶mark2』と呼ばれる機体を貸し出す体にして地球各所に配置。

ザフトのジンに対するカウンターとして配備した。

これは、指示命令系統がアズラエル財閥にあるというデメリットがあるものの、格安でモビルスーツが配備されるメリットはそれを遥かに上回り、概ね好意的に受け止められた。

そもそもどの国も程度はあれど、疲弊しているのだ。

国家運営側にしていれば、『正直国家防衛できればブルーコスモスの差別主義とかどうでも』が本音であった。

しかし、忘れてはならない。

『懐がきつい』のは、アズラエル財閥もである。

各国にモビルスーツを貸す見返りとして、全地球連合側国家が出資した世界樹コロニーの生み出す電力エネルギー使えたり、連合軍が量産予定の機体製造工業ライン(メタ的に言うと、ストライクタガーを作る予定のライン)を好きに使えたりでギリギリ黒字に持っていったが、逆に言えばそれが限界。

各国の地上の主要都市の護衛だけで貸せる戦力は尽きてしまった。

これは具体的には、それ以外は自分たちで守ってくださいね、という事であった。

さて、他の国もこまっているがとりあえず置いておこう。

ダントツにヤバいのは、月周辺にアルテミス基地を保有する、ユーラシア連邦であった。

いや、ユーラシア連邦には、他軍には持ち得ない『アルテミスの傘』という防御膜があるじゃないか?

そう、ザフトが襲撃をかけてきた最初の頃、基地のモノはそう能天気に考えていた。

しかし、外部からの補給艦を叩かれ、ユーラシア本国の時制を読める将官より高額な救援代金を支払い、世界樹コロニーの機動部隊を借り受けて一時的にザフトの攻勢部隊を撃滅するに至り、流石に彼らも気づく。

あれ、このままじゃジリ貧じゃない?と。

アルテミスの傘は、確かに強力な防御膜だ。

だが、攻める側にしたら『それだけ』である。

ザフトの機体に何か不調を起こす訳でもないそのバリアは、ザフト側からすれば幾らでも対策が打てるものでしかなく、結果、本国経由で地球連合主流の大西洋連邦に泣きつく。

大西洋連邦、悩む。

ここで切り捨てるのは容易だが、その場合最悪、あのうざったいアルテミスの傘を拠点にしてザフトが世界樹にちょっかいかける可能性があった。

悩みに悩み抜いた末、大西洋連邦、珍しくアズラエル財閥や世界樹コロニーの死神部隊に頼らない方針を打ち出す。

内容としては、こうだ。

大西洋連邦内部のコンペディションで、ナチュラルだけで防備するというイレギュラーな状況を想定した試験機体が一体ある。

その所有権を『条件付きで』君たちに譲ろう。

条件としては3つ

1つ、この機体には試験的な最新鋭の技術が使われているため、同行させる技術者に機体を管理させ、勝手に調べる事を禁じる。

2つ目、なんらかの理由で当機体が敵側に拿捕された場合、同時に移譲した運用艦艇に配備されている武装『ローエングリーン』により速やかに機体を撃沈せしむること。

3つ目、追加機体が必要な場合、製造費用を戦時国債にて支払う事を許す。その代わりに、運用データは残らず大西洋連邦が共有することを許可すること。

はっきり言って、曲がりなりにも友好国に対する態度ではない。

だが、大西洋連邦にしてみれば、ザフトとの戦争中に、タダで恩をばら撒くほど暇でもないのだ、この条件は当然だった。

こうして、幾度のなく調整を繰り返し、カタフラクトは月の女神の守護神となるべく配備された。

十三話 流星になった漢達(前編)了 
 

 
後書き
クォーターガンダ厶mark2

武装

試作大口径マシンガン『ネメシス』×1
大口径でぶち抜けば良いんだよ、という理屈の元、作られたかなり反動が強いが、その分貫通力の増した銃。復讐の女神の名を冠したその銃は、地球に降りた多くのザフト軍モビルスーツを穴だらけにした。

試作シールド『アンキーレ』×1
ローマ神話の、天から落ちてきた盾の名を冠するシールド。月で取れた金属を使用しているためか、かなり頑丈。

アーマーシュナイダー変形型『フォートビート』×2
両腰の隠し収納に一本づつ収納。アーマーシュナイダーと同じ厚さで約3倍の長さの刀身があり、主に接近戦で使用する。日本刀などの鍛錬技術の粋であるためかかなり鋭利でジンの装甲も切り裂ける実体剣だが、それ故に量産に向かない。

現地名、ハウリングガンダム(実体剣で斬ったり、マシンガンをばら撒く度に金属音が響くため)

世界樹の電力の中で、生活以外の余剰電力を用いて、現状一番必要なモビルスーツの防衛戦力を生産ラインで作った機体。
これがクォーターと呼ばれた所以は、ジンのOS・大西洋連邦の資金力・ユーラシアのアルテミス基地からの素材・オーブ国営企業モルゲンレーテの技術を合わせて作られたからである。
パイロットは主にアズラエル財閥の傘下のコーディネーター部隊や、オーブのコーディネーターによる機動部隊などが使用した。

実弾や実体剣がメイン武装なのでバッテリーにも優しく、上記のメイン武装の内容から剣の研ぎや、弾丸の補充が必須の機体のため、盗難なども少ないガンダムである。

なお、裏話だが、実験部隊のバッテリーを改良する度にお下がりを地上に下ろしたため、後期製造品ほど、稼働時間が長い。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧