Xepher
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序章
【誰かがやらなければ何も変わらないのなら】
【可能性がほんの僅かでもあるのなら】
【たとえ命を落とすことになっても・・・】
腐敗都市ダーティス。
黒と紫の入り混じったような空。
そこには一切の光はなく、あるのは死と絶望だけ。
約50年前に起きた大戦、それが終わってからの世界は、
飢えと病に怯える毎日。
それだけならまだマシだった。
汚染された大気によって生み出される魔物の襲撃。
廃墟?
違う、地獄だ。
そして今もまた、一人の人間に死が近づこうとしていた。
『く、くるなぁああ!?』
一人の男性に襲いかかるは、瘴気によって生み出された魔物。
全身が黒く、獣とも人型とも言いにくい、まさに異形の生物。
男は走り続ける。
辺には瓦礫や死体があり、まともな足場はほとんどない。
どうしてもスピードが乗らず、魔物の巨大な爪がすぐ後ろまで
迫っていた。
男が諦めかけた、その時。
シュパっと・・・
綺麗な音と共に、ソレは上半身と下半身が切り裂かれ、消滅した。
男の目に映ったもの、それは剣を右肩に乗せた一人の青年の姿。
若い剣士はため息をついて、口を開く。
『あんた、大丈夫か?この時間は魔物が多い。はやく帰った方がいいぜ』
赤い髪に瞳。
重い鎧を着ている訳でもなく、カジュアルな服装。
年齢は、20にも満たない若い剣士だった。
『あぁ、ありがとう。助かったよ。ところでさっきの攻撃はなんだ?
風のようなもので遠くから切り裂いたようにも見えたが』
『あー、それ聞いちゃう?』
青年は左手で髪を掻きながら、面倒くさそうに言った。
『オッサンの見たままだよ。間違ってない』
赤髪の剣士は剣を鞘に納め、軽く辺りを見渡したあとに、その場を
離れようと歩き始める。
『ちょっとまってくれ。最後にいいか?』
青年は首だけを男に向け、
『まだ何かあるのか?本当に早くここから離れないと不味いぜ?』
『君の名前は・・・?』
その問に、青年はなぜかニコっと笑顔になった。
『アッシュ。アッシュ=ランバードだ。落ち着いてる様にみえてまだ17のガキっすよ。
じゃあなオッサン、命は大事にしろよ』
そう言い残すと、アッシュと名乗る青年は再び歩き始めた。
その背中を見つめながら、襲われた男は呟く。
何かに気付いたかのように。
『聞いたことがある。かつて起きた大戦で生き残った二人の英雄。その一人は風を
意のままに操り、極めているという。まさか、彼はその英雄の・・・』
※※※※※※
世界の中心、腐敗都市ダーティスの
更に中心に、天空まで続く巨塔「グランドクロス」
が存在する。
その最上階には「ヘブンズゲート」と呼ばれる
入口があり、その遥か上空には、「聖地」と呼ばれる楽園が
あった。
そう、あった・・・のだ。
今は存在していない。
その聖地から送られてくる光の恩恵を受け、
人々は生活をしていた。
その光は水を生み、植物を育て、人間だけ
ならず動物の病をも治癒させる、まさに
命を司るモノだった。
だが、その聖地の力を悪用せんとする
欲深い人間達が名乗りをあげ、聖地を守護する四神
との間で、世界の存続をかけた大戦が起きてしまう。
それが聖魔大戦。
だが、最初に仕掛けたの は人間ではなかった。
大天使アルカディア
天使は四神を支える守護兵。
そんな立場でありながら、天使の、それも
天使を束ねる大天使が人間たちをそそのかし、
四神を裏切り、反逆したのだ。
聖地を守護する四人の英雄・・・風神オルガ、
地神クルサス、水神リュシオン、そして四神
を統べる王、ゼファリオンは総力を尽くして
戦ったが、その結果は残酷なものだった。
反逆した人間たちは全滅、四神もオルガと
ゼファリオンの二神のみとなった。
更に聖地も崩壊し、光を失ってしまう。
以後、ゼファリオンは二度と同じ過ちを
繰り返さない為に、世界治安組織「紋章騎士団」
を設立する。
更に聖地も封印し、世界は日々破滅の道を 辿っていく。
腐敗都市ダーティスに住む一人の青年、アッシュ=ランバード
は、かつての平和だった世界を取り戻すために、一人立ち上がる。
彼は大戦での生き残りである風神オルガの息子だ。
絶望を吹き飛ばす風の力を手に、アッシュは世界の真実を知る為に
戦う。
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