| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

外道戦記ワーストSEED

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

七話 世界樹の下で(後編)

 
前書き
筆者もSEEDのファーストシーズンの呼び方から、ミラージュコロイド≒透明化の技術と思い込んでいたけど、詳しく調べたらミラージュコロイド≒宇宙世紀のミノフスキー粒子のような多用途に使えるSEED世界での粒子という話が主流らしいので、そちらを採用します。 

 
自爆戦術。

古来から、自軍の勝ちの目が潰えた時、東西問わず行われてきたその戦法が、多くの人類史の積み重ねの果てに人類が宇宙に進出したこのコズミック・イラでも起ころうとしていた。

『サイクロプス』と銘打たれた、元は月面上の凍結を解消するための道具が、兵器化され、大型の艦艇に詰められゆっくりと進んでいく。

だが、『誰もそれに気づかない』

核兵器

ニュートロンジャマー

モビルアーマー

モビルスーツ

戦いは続けば続くほど、お互いを上回ろうと兵器を発展させ、その結果を相手にぶつける。

そしてまた、憎悪の螺旋は続く。

『ミラージュコロイド・ステルス』

原理としては可視光線や電磁波を偏向するミラージュコロイドの技術を利用した物体のステルスである。

未完成なそれを、地球連合はダウンサイジングを諦め、また未完成なステルスを補うためスラスターで慣性移動することで戦場で運用していた。

世界樹の目の前、キー付きのスイッチを眼の前にした将官が二人、ほくそ笑む。

「なんとか間に合いましたな」

「コーディネーターの戦力化にナチュラル向けのモビルスーツの開発、口惜しいですがアズラエルの若造はまた、株を上げて発言力を増した」

「だが、ガンダムシリーズは所詮個人運用の兵器」

「戦略的な観点では、まだまだ決定力のない兵器よ」

規定の位置に『サイクロプス』が来たことを、アラームが知らせる。

戦場で戦う両軍の殆どがしらないそれは、二人の将官が捻ったキーとスイッチで起動した。


その少し前、ジョン達ケルベロス部隊は、不可思議な命令に首を捻っていた。

「実験部隊は一旦母艦ごと世界樹コロニー防護のため帰還。は分からなくもないが、残存モビルアーマーまで全集結とはどういう訳だ。しかも、かなり距離は離したとはいえ、世界樹コロニーの前方に集結とは。」

図式にすると世界樹コロニー→司令官クラス艦艇→
ケルベロス部隊&ソキウス部隊→エース部隊(MA)
→かなり離れた位置に横一列に並ぶ一般MAである。

正直、意味不明だ。

未だ運用が完全に定まっている訳ではないが、モビルスーツもモビルアーマーも、機動力を生かした戦闘運用が基本だ。

モビルアーマー1機で勝てない敵には数機で当たれ、というのは間違いではないのだが。現状、ジン1機に通常のパイロットのメビウスが5機以上破壊されている。

ならばこの場合はエースパイロットのメビウスや我々モビルスーツ部隊が相手を撹乱し、補助火力を一般MAが勤めた方が被害は少なくなる。

なのに、何故か綺麗に分けて配置。

更には……

(この配置の謎一つ目、敵はコロニー世界樹の『奪取』が戦闘目標ではないのに、固まった配置)

世界樹コロニーは、地球と月を繋ぐ地球連合側にとって要所コロニーであり、特にプラント側にとっては重要ではない。

破壊も視野に入れて良い目標というか、地球連合を地上に閉じ込めたいなら破壊第一目標でもおかしくないコロニーだ。

一般人がいたら?両軍から撤退命令が出ているし、こちらも国連のお偉方殺された腹いせにコロニー一つを核爆弾で消している。

それであちらも同じ事をしないだろうは頭沸いている。

ニュートロンジャマーが使用不可にするのは核弾頭のミサイルのみ。

例えば大型のミサイル装備のジンが大量にそれを世界樹に向ければ、容易く世界樹は大型デブリになるだろう。

だけど、正直、機動兵器戦では圧倒的にプラントのザフト軍が有利。

だからこの場合大事なのは、何処まで『時間を稼げるか』

一列に並べる必要はない。

多少抜けられても良いから数列に分けてMAを配置。

相手の撃墜に拘らず、防御に重きをおき、圧をかけて相手の弾薬を無駄遣いさせ、次の補充が来るまで戦場をもたせる。

腐っても地球連合である。弱くとも一般兵のメビウスはジンとの頭数を比較すると3〜4倍機体数が多い。

邪魔するだけなら、なんとでも出来た筈だ。

なのに、学校の整列よろしく綺麗に横に整列させる。

これは何?何の意味があるの?

ほら、餌だと認識したジンが、我先にタカっているじゃん。

待機中にしか使えない望遠カメラで見ると、遠目からも、特にエース級が使うガンバレル型メビウスなどがいないことを看破したザフト軍が、要塞破壊等の用途のミサイルを装備した鈍重な機体を守りながら、なんとか抜けようと大量の戦力を一箇所に集中している。

まあ、そのMAの壁を抜けたら残りは十数機の未完成モビルスーツに、数十機のエースパイロットのメビウス。

ある程度のジンの部隊が抜ければ、補充のメビウスが来ない限り抜けられて世界樹にミサイル叩き込まれてジ・エンドである。

なのに、未だこちらに流れている命令は、『持ち場を死守しろ』のみ。

(この配置の謎2つ目、補充兵が来るタイミングが遅すぎる)

マスドライバーから戦力を打ち上げるのに時間がかかっても、月面のアルテミス基地など近隣の基地から戦力を出すのは不可能では無いはずだ。

なのに何故、この危機にそれをやらない?

少し前に月から来たのは、鈍重そうな艦艇一つのみ。

前の世界のヤマトの波動砲でも撃てるならともかく、あんな艦艇一つで。

その思った直後。

突如、一般MAとジンの真下に現れる漆黒の艦艇。

その姿が見えた直後。

最前線にいたメビウスとジンを丸ごと巻き込み、装置が起動。

戦場は、タダの処刑場と化した。

効果範囲にいた人間が暑い、と感じたのは一瞬だった。

効果範囲にいたメビウスとジン、双方の身体が外部からの『見えない波』で加熱されていく。

ごポッと、口から溢れる血

あまりの暑さに思考能力が無くなる頭。

全身が沸騰する頃には殆どの人間の意識が無かったのは、果たして幸せだっただろうか?

焼き切れた死体と共に、加熱された機体も爆散。

多くの味方の一般MAごと、ザフトの大部分のジンを巻き込んだ乾坤一擲の自爆戦術は、ここに完成した。

名も知らぬ多くの同胞を、巻き込みながら。

七話 世界樹の下で(後編) 了
 
 

 
後書き
サイクロプス→専門的な言葉を廃して説明すると一定の空間を加熱する巨大な電子レンジ。人間を放り込めば水分が沸騰し死亡、
他の物質も加熱されるため、可燃性を持つものや誘爆の恐れのある物品がその範囲にあるのは大変危険。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧