外道戦記ワーストSEED
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六話 世界樹の下で(前編)
前書き
地球連合軍の月への橋頭堡、つまり中継地となっていたコロニー「世界樹」を巡って行われた一連の戦闘のことを「世界樹攻防戦」と呼ぶ。
世界樹は,地球連合にとって非常に重要な施設であったため,第1~第3艦隊までを全て投入、また、試験的&実験的な側面が高いモビルスーツまで全機投入(※宇宙戦に使用不可な機体を除く)するという大規模な戦闘となった。また,ザフト側にとっては血のバレンタインを契機に開発されたニュートロンジャマーを試験投入し,その成果が確認された戦いでもあった。
両軍とも総力戦に近い大規模戦闘であり,その結果は……
ザフトの兵の大多数にとっては、楽な戦いであった。
ニュートロンジャマーの対応が出来ない宇宙軍の殆どは一方的に戦果にされ、前に出た艦隊から潰されていく。
だからこそ、『彼ら』にあった者達は己が不幸を呪った。
狩人だと思っていた自分たちの、喉笛を噛みちぎる魔獣に遭遇する不幸を。
濃紺のメインカラーに、警戒色の赤をラインで引いた薄闇色のツインアイの機体。
一人が忍び寄り手足を破壊し。
一人が弾幕で機体全体を叩きのめし。
最後に一陣の風のような高速飛来物が、小型の艦艇を撃ち抜いていく。
宇宙の黒に溶ける、3機の魔獣。
コード『ケルベロス』を与えられたそれらは、場所を変えながら間延びした戦場の端にいる少数のジンに無言で襲いかかり……
その空間にいるジンの、息の根が止まるまで攻撃を続けた。
ああ、また一つジンが装甲の限界を超えて撃ちぬかれ……。
爆散する機体が、また、宇宙にオレンジの花を咲かせた。
一方、そんな戦場を作り出した当人達はそれどころではなかった。
「くそっ!なんでどいつもこいつもシールド持ちなんだよ!」
口をつく愚痴に、律儀にイヴは返す。
「やはりガンタンクの存在が、攻撃前のめりの武装を変えましたね。正直、武装の理論値と実際の戦闘のでの威力の乖離もここまでとは思いませんでしたが」
そう、ケルベロス側にとって、この戦場はイレギュラーの連続だった。
対モビルスーツ戦闘用の盾で全機防御力が上がっている&恐らくガトリング砲の製造元が静止状態のジンに対する撃墜必要数で弾薬を計算していたため、ヘッジフォッグは計算の倍近い弾数を既に消費。
カーペンターズの攻撃は、というとガンダムハンマーはインパクトまでの時間の長さでシールド防御されやすく、釘打ち機は5機目を撃ち抜いたあと、引き抜けなくなり、パージを許可し爆散。
効率化を盾に、事前にメカニックに作って貰っているジンの武装MA-M3 重斬刀を濃紺に塗り替えたものを使ってはいるが……
「恐らく、大分我々の存在が戦場に認知されて、遠目で姿を認識するたびに即全力逃げをうつ相手も増えてます。余り効率的、とは言えない狩りになってますね」
「想定の内だ。ソンネン先輩のヘビーウエイトなんか、数発でバッテリー異常起こして、艦艇に繋いで撃ってる状態だからな」
イヴの言葉に同意で返すも、じゃあ辞めます、とは言えない。
なんせ………
「地球連合対ザフトの現状、聞いてるだろ」
「圧倒的多数な筈の地球連合が、世界樹近辺まで押し切られていて、戦闘力格差2:8くらいでメビウスがポンポン撃墜されていることは聞いてます。このままではどう繕っても『大敗』ですね」
その言葉にため息が溢れる。
『有利』に進めてるのが宇宙軍の中で将官の護衛で最後方を固めるソキウス部隊、空軍のエース部隊、うちらケルベロスのみ!
つまりは殆どの戦場で負け、遅滞戦術と後方の最優秀部隊で辛うじて抑えているという最悪の形。
今また逸れたジンを両腕のガトリングで蜂の巣にしながら、イヴに再度言葉を返した。
「連合の切り札とやらも威力が未知数だ。再度補充と同時に狩り場を移動して、減らせるだけ減らすぞ」
「了解」
そういって彼らは、バーニアを吹かせて母艦に戻っていった。
六話 世界樹の下で(前編) 了
後書き
思い通りにいかなくとも、時計の針は進む……
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