五十代で女子大生と付き合えるか
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第二章
「老眼でね」
「近くが辛いね」
「すっかりね、顔も皺が増えて」
「おっさんから初老になって来てるよ」
「それでもてるか。大体」
松本はさらに言った。
「女子大生にもてる人がこうして誕生日に居酒屋にいるか」
「いる筈がないね」
「洒落たレストランでデートだよ」
ビールを飲みたこの唐揚げを食べつつ話す、池田はハムカツを口にしていてやはりビールのジョッキを手にしている。
「その女子大生と」
「ダンディだね」
「そう、ダンディでないと」
さもないと、というのだ。
「そうは出来ないよ」
「つまり僕には縁なしだね」
「僕にもね。大体若い女の子と付き合える体力あるかな」
「ないね、そっちの方はどんどんね」
「しなくなっているね」
「奥さんともね」
「僕もだよ、もうそんなことは」
五十代のおっさんが女子大生と付き合うことはというのだ。
「架空だよ」
「そうある話じゃないね」
「そうだよ」
二人でこうした話をして池田の誕生日を祝った、池田はその後で松本と別れ家に帰った、するとテーブルの上にだった。
ケーキが一切れ置かれていた、そのケーキを見て妻に尋ねた。
「誕生日祝いかな」
「今日食べてくる言ったからケーキだけよ」
「そうなんだ、じゃあいただいていいかな」
「その為に買ってきたのよ」
これが妻の返事だった。
「だからね」
「じゃあいただくね」
「お茶いる?」
「紅茶あるかな」
「じゃあ淹れるわ」
妻の忍、若い頃は大きな目と小さい顔に黒くセットした髪の毛で小柄だった彼女もすっかり太っていた。その彼女がだ。
紅茶を淹れてくれた、池田はその紅茶とケーキを楽しんだ。そしていい誕生日だと心から思ったのだった。
五十代女子大生と付き合えるか 完
2025・1・15
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