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金木犀の許嫁

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第四十八話 プールへの誘いその十

「忍者は刺青入れないしね」
「それはないわね」
「武士の身分にあったら」
 そうであるならというのだ。
「もうね」
「刺青は入れないわね」
「武士だとね」
 佐京は断言した。
「刺青は入れないから」
「絶対によね」
「そんな武士知らないよね」
「聞かないわ」 
 夜空もそうだと答えた。
「私だってね」
「そう、武士はそういうの入れないから」
「そこがヤクザ屋さんと違うところね」
「だから軍人さんも入れなかったよ」
「戦前の」
「うん、軍隊に入って見付かったら」
 入れ墨を入れていることがというのだ。
「物凄く怒られて殴られたそうだから」
「そこまで駄目だったのね」
「戦前の軍人さんは武士だったから」
 そうした考えであった、その為義和団事件でも描かれている日本軍の将兵達の顔立ちは武士の様である。
「それでね」
「入れ墨はいれなかったのね」
「それで今もだよ」
「自衛官の人達もよね」
「絶対に入れないから」
「そこは徹底してるわね」
「公務員だしね」
 自衛官の人達はというのだ。
「入れないよ」
「日本で入れ墨っていうと」
「まともな人は入れないね」
「そこが違うわね」
「海外だとアスリートの人が入れたりするけれどね」
「アーティストの人達もね」
「けれどね」
 それでもというのだ。
「普通は入れないしね」
「外国でもね」
「うちの学校でもいないね」
「その国の風習で入れる人はいても」
「そうじゃないと入れないね」
「そうよね」
「それで本当に日本だと」
 この国ではというのだ。
「まともな人は入れないから」
「まして手首なんてよね」
「手首に入れたら」
 佐京はそれこそと話した。
「どれだけ目立つか」
「そうよね」
「わかったものじゃないよ」
「夏なんか半袖だから」
「それで母さんもわかったしね」
 半袖だったからだというのだ。
「手首の部分が丸見えで」
「そんな目立つところに入れる人なんて」
「絶対にまともじゃないわね」
「普通のお仕事無理よね」
「面接で落ちるよ」
 その時点でというのだ。
「まともな会社ならね」
「そうなるわね」
「そこまでのものだから」
 だからだというのだ。 
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