八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七百八十二話 トム達と海賊その五
「盗んで奪うけれど」
「そうしたことはしないわね」
「海賊はアウトローでもね」
それでもというのだ。
「非道なことはしない」
「そうあるべきね」
「そうだよ、本物はね」
「フック船長は悪いことをしても」
スターリングは彼がなろうと言ったこの海賊の話をした。
「憎めないんだよね」
「そうなんだよね」
トムも確かにと頷いた。
「あの人って」
「最後死ぬしね」
「鰐に丸飲みにされて」
「まあネバーランドの妖精だからね」
フックもそうなのだ、ピーターパンと同じく彼も彼の部下の海賊達もネバーランドで暮らす妖精達なのだ。
「一説には死なないってね」
「言われてるんだ」
「死んでもね」
そうなろうともというのだ。
「またね」
「そうなんだね」
「あくまで一説だけれどね」
「妖精だから死んでも蘇るんだ」
「そうだって言われてるよ」
「そういえば」
ここで蝉玉がこんなことを言った。
「フック船長って生まれ悪くないのよね」
「ああ、そうだったね」
スターリングはまさにと応えた。
「あの人は」
「そうよね」
「生まれは悪くなかったけれど」
「海賊になって」
「船長さんにねってね」
「ネバーランドにいるのよね」
「そうだよ、どんな生まれか」
それはというのだ。
「詳しく書かれてないけれどね」
「そこまでは」
「けれどね」
それでもというのだ。
「生まれが悪くなくて品性があることはね」
「事実よね」
「悪役だけれど」
作品上のそれである、そしてピーターパンと戦っているのだ。
「それで何処か愛嬌があって」
「憎めないわね」
「それで人気があるんだよ」
「そうなのよね」
「まああの作品って」
スターリングはピーターパンという作品自体の話もした、十九世紀からこの時代まで国を越えて愛されている名作である。
「色々黒い部分もあるよ」
「そうなの」
「よく読んでいると」
そうすると、というのだ。
「ピーターパンが子供を間引いてるとか」
「書いてあるの」
「何気なくでもね」
「間引くって」
蝉玉はこの言葉に引いて言った。
「ないでしょ」
「そうだよね」
「昔は結構あったのよね」
「そうみたいだね」
「子供出来ても育てられなくて」
「だから当時はね」
作品が書かれた十九世紀の頃はというのだ。
ページ上へ戻る