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金木犀の許嫁

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第四十六話 鯨を食べてその九

「武士であられ」
「忍者でもあられましたね」
「十勇士の主であられる」
「忍術も凄かったんですよね」
 真昼は幸村のこのことを話した。
「幸村公は」
「まさに武芸十八般の方で」
 そうであってというのだ。
「それで、です」
「忍術もですね」
「かなりの方で」
「十勇士の方々にも負けなかったですね」
「匹敵するまでです」
 天下一の忍の者達と言われた十勇士達よりもというのだ、一騎当千の忍術を誇った彼等にというのである。
「お見事でした」
「そうでしたね」
「ですから忍としてです」
「忍ばれましたね」
「そうでした」
 大坂の陣の後でというのだ。
「そうしてです」
「江戸時代の間ですね」
「代々忍ばれて」
 そうしてというのだ。
「今もです」
「大坂の陣で戦死した」
「それが史実となっています」
「徹底して忍ばれていますね」
「はい、それにです」
 幸雄は焼酎を飲みつつさらに話した。
「秀頼公のご子息も」
「あっ、そうでしたね」 
 真昼は今の話にはっとなって応えた。
「秀頼公にはご子息がおられて」
「大坂の陣の後捕らえられてです」
「処刑されたと言われていますが」
「しかしです」
 その実はというのだ。
「ご存命で」
「岸和田の方に匿われて」
「木下家にです」
 豊臣秀吉の正室ねねの実家である。
「匿われて分家としてです」
「大名になられて」
「幕府もわかっていましたが」
「公には処刑したことになっているので」
「知らない振りをしていました」
 そうだったというのだ。
「これが」
「そうでしたね」
「はい、そして」 
 そのうえでというのだ。
「江戸時代の間です」
「子孫の方は続いていて」
「明治の頃まで存続していました」
「江戸時代生き延びられましたね」
「そうでした」
「よかったですよね」
 真昼はここまで聞いて笑顔で述べた。
「本当に」
「秀頼公のご子息も生きておられて」
「はい」 
 実際にというのだ。
「そう思います」
「私もです」
 幸雄は微笑んで応えた。
「幕府もよくです」
「気付いていたのに言わなかったですね」
「わかっていたと思います」
 またこう言うのだった。 
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